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密談 Side???

詳細をまだ出して居ないキャラなので???表記にしてます。

誰なのか予想がついた人は居るかもしれませんが……。

ザクザクと土を踏みしめる足音が近づいてくる。


ソレに傾けていたカップを置き、顔を上げる。


「おまたせしてしまったかな?」

「いや。」


ニコニコと読めない表情を浮かべるこの男は、オズワルド・コースター。

この辺境伯領を長年守り続けるコースター辺境伯の当代当主。


「それにしても、こんな森の中の国境で一緒にお茶をすることになるなんて思わなかったよ。あ、僕も一杯もらえるかい?」

「あぁ。」


合図を出せば、傍に居た従者がカップに紅茶を注ぐ。


「ありがとう。」


そして、ためらわずに口をつけた。


「他人の淹れた物を飲むなんて、不用心だな。」

「ん?あぁ、そうだね。でも、君たちは僕に毒は盛らないだろう?」

「どうしてそう言い切れる。」

「ココで当主の僕を亡き者にした時のメリットがないからさ。」

「…………この領地を手に入れやすくなる。」

「本当にそう思うかい?何年も、何十年も、この土地を護って来たこのコースター領が、当主一人の命で容易く奪えるくらいに単純な土地だと。」

「…………。」


ニコニコと変わらない笑みをたたえたままこちらを見てくる。


何度も剣を交えた相手。


何度も命の危機を覚えた相手。


こうして向かい合って呑気にお茶をしているのも、お互いに()()()()()()()()()()()からだ。


「この茶葉は美味しいね。キミのお気に入りかい?」

「…………まぁな。」

「そうか。あの子が好きそうな味だ。」

「…………。」


そのセリフにドキリとする。


「それじゃあ、そろそろ本題に入ろうか。可愛い家族たちに軽い見回りだと嘘をついてココに来たから。」


お互いに長居は無用だろうと促してくる眼の前の男からは殺気も恐怖も感じない。


「ココ数日、帝国から王国への進行がないのは貴殿もよく知っているだろう。」

「そうだね。なぜか、大人しくしてくれているみたいだね帝国は。」

「王国の様子見と言ったところだろう。貴殿の御息女が王都に居ると噂を聞いたからな。」

「おや。もう少し時間をかけられるかと思ったけど、思ったより噂が早かったね。内通者の仕業かな。」

「……あまり驚いたふうには見えないな。」

「内通者が居るだろうというのは考えていたからね。三年前も、帝国側の進行は腑に落ちないことがあったから。」


そう言ってまたカップを傾ける。


「国王たちに報告はしないのか。」

「報告?何をだい。」

「内通者だ。」

「あぁ……。」


そんなことかと言いたげに頷くとニコリと笑う。


「国が滅ぼうが王家が滅ぼうが、どっちでも良いよ。家族が無事ならそれで構わない。」


その発言に思わず目を瞬く。


「意外だな。国の要とも取れる辺境地を守るのが貴殿みたいな危険な人間だなんて。」

「そうかい?僕がこういう性格だからココを任せてくれてるとも言えるよ。僕には国益なんて関係ないからね。」

「なるほど、一理ある。」


家族のためなら剣をも振るう。


国のために振るう剣はない。


「御息女は王都で元気に過ごしているのか。」

「えぇ。領地の方も落ち着いていると報告しているからか、元気に楽しく過ごしているみたいだね。帝国からの進行がないのが一番嬉しいと喜んでくれたよ。」

「…………そうか。」


それを聞けて良かった。


「三年前のあの日、あの子が助けを求めたのがキミだってこと。」

「!」

「知っているのかい?」

「…………さぁな。ただ、“そんな格好をしていても、貴方からは貴族の気配がする”とは言われた。」

「なるほど。まぁ、僕も知った当初は驚いたけど。今更だけど、あの時あの子を……領地のみんなを助けてくれてありがとう。お陰で僕たちは生きている。」

「礼はいらない。ただの気まぐれだ。」


そう、あの時のアレはただの気まぐれ。

あの時あの場で切り捨てても良かったんだ。


アレは、気まぐれでないといけないんだ。


「おや、そうかい。毎回僕宛に律儀に挨拶の手紙と求婚の手紙を送って来ていたのも気まぐれということになるね。」

「ブ……ッ。」

「そうか、気まぐれだったのか。じゃあ、あの子に来ている縁談の話も、そろそろあの子の耳に入れても良いかな。」


思わずテーブルを叩きつければ、茶器が音をたてる。


「…………そ、れは……気まぐれ…………では、ない。」

「…………。」

「アイツの夢のために暗躍してるのが、バレるのは……困る。だから、貴殿をココに呼んだ。」

「人間素直が一番だよ。我慢は身体に毒だからね。それに、二人のことだ、僕が口出すことじゃない。でもまぁ……、僕がソレを黙って看過するかどうかは別問題だよ?」


視線に込められる殺意。


ソレに思わず口を閉じれば、彼は息を吐きだして。


「まぁ、娘の幸せが一番だから。あの子が願った時は背中を押すよ。」

「…………感謝する。」


席を立ち、背を向ける。


「おや、もう終わりかい?」

「あまりに長いと貴殿の家族が迎えに来るだろうからな。」

「あぁ、そうだ。今度あの子が王都郊外に遊びに行くらしいんだ。その時に可愛い息子を伝書鳩代わりに遣いに出すんだけど…………。」

「…………。」

「あの子に渡すものはあるかい?」


その問いかけに席に座り直す。


「紙とペンを。」


従者から渡されるソレに視線を落とす。


「検閲するからね。」

「好きにしろ。」


届かない手紙を書き続けて約三年。


検閲されたとしても、その手に渡るというのならソレが一番の喜びだ。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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