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突然の来訪者 Sideウイリアム

次男、ウイリアム目線です

姉ちゃんが眠ってしばらくたった頃、父ちゃんが起きてきて。


「やぁ、おはよう。可愛い天使たち。」

「おはよ。」

「おはよー、お父さん。」

「「おはよー、お父様!」」

「おはよ、ちち!」

「……!!可愛いっ!!」


至っていつも通りの父ちゃんを見つつ、時計を見る。


「なんか食べる?」

「む。あぁ、自分で作るよ。ありがと、ウイリアム。そろそろ交代の時間だろ?行かなくて良いのか?」

「うん。今回は兄ちゃんが一日演奏。家のことしといてって言われた。」


ちなみに来客は片っ端から追い返せと兄ちゃんに言われてる。


それが一番大切な仕事だとも。


「そうか、そうか。ロイドも体力がついたなぁ。」


ニーナを抱き上げ、両足に双子を引っ付け、背中にエドワードを引っ付ける姿は父親だ。


「楽しく遊ぶのは構わないが、まだユリアが寝てるからな。遊ぶなら、外で遊びなさい。」

「でもお父様、訓練所片付けてない。」

「応接室のお片付けもまだだよ、お父様。」

「おぉ、そうだったな。応接室の片付けをしてから訓練所を片付けようか。手伝ってくれるか?」

「「もちろん!」」

「僕したくなーい。」

「エドワード、勉強の時間を増やしてほしいのか?」

「わーい、僕お片付け好き〜!!」


貧乏貴族なんて言われてるけど、今まで苦労したことはない。

姉ちゃんと兄ちゃんのおかげかもしれないけど。

結構本気で、いつか姉ちゃんも母ちゃんみたいに、いきなり居なくなるんじゃないかと心配している。


姉ちゃんが倒れたあの日の出来事を未だに夢に見るのは内緒だ。


「ウイリアム。」

「!」

「疲れただろう?あとは私がしておくから、少し休みなさい。いつもありがとう。」


そう言って頭を撫でてくる手は大きくて、優しくて。


ちょっぴり照れくさい。


「うん。ちょっとお外で気分転換してくる。」

「うん、それは良いね。行っておいで。」


促されるまま、外へ出る。

お昼前だからか太陽は高く昇っていて。

今日はお洗濯日和だなぁなんて、姉ちゃんみたいなことを考える。


「あ、お庭の水やり終わってない。」


思い出して良かった。

枯れちゃったら、食べ物困る。

それに、花壇は母ちゃんの大切ものだから守ろうってみんなで約束した。


「…………。」


貴族としての勉強は嫌いじゃない。

多分、みんなそうだと思う。

逃げ出したことがないかと言われれば、嘘になるけど。

でも、あのエドワードでさえ剣術の時間だけはサボったことがない。

多分、ココの領地では絶対に必要なものだってことをわかってるんだと思う。


「ごめんください。」

「!!」


突然の見知らぬ声に視線を向ける。


「コースター辺境伯のご子息殿とお見受けします。コースター辺境伯様はご在宅でしょうか。」


老紳士と言われる風貌。

腰には王家の紋章が入った懐中時計。

兄ちゃんに言われた言葉を脳内で何度も再生する。


「あいにく父は先日の疲れで休んでおります。急ぎでないのなら、改めていただけると幸いです。」


なんか、こんな感じの言葉だったはずだ。


「そうでしたか。では、こちらをお渡しください。」

「承りました。」

「よろしくお願いいたします。」


丁寧にお辞儀をし、立ち去る背広服の男。


この辺りに上位貴族が泊まるような宿屋なんてあったか?


まぁ、とにかくコレを父ちゃんに渡さなきゃ。

王家の紋が入った封蝋は、正式な手紙を示す……だったか。


家の中へと入れば、応接室の方からにぎやかな声が聞こえてくる。


これだけうるさくても姉ちゃんが起きてこないのは、寝ずの番だったからだろう。


「お父様、コレはココであってる?」

「あぁ、あってるぞ。すごいぞ、リオネル。」

「父上、コレはどうする?捨てる?」

「ん?あぁ、そうだな。今度行商にでも売りに出そう。ありがと、エドワード。」

「お父様、コレはこっちにおいても良い?こっちの方が素敵だと思う!」

「おぉ、そうか?すごいな、アイン。」


父ちゃんの周りにコレは、コレはと集まる弟たちは無邪気で。


「ちち、あげりゅ!」

「ありがと、ニーナ。」


ニーナは手伝ってるつもりなのか、片付けたものに手を伸ばし、それを父ちゃんに渡している。


「父ちゃん、王家の使いの人から手紙預かった。」

「王家だと?」

「うん。」


少し険しい顔で手紙を受け取り、視線が向けられる。


「王家の使いだと判断した材料は?」

「身なりとその封蝋の紋章。あと、腰に王家の紋章が入った懐中時計を付けてたから。」


そう答えれば、笑顔で笑って。


「偉いぞ、ウイリアム。ちゃんと勉強の復習ができてるじゃないか。」


優しく撫でられる頭。

良かった、家紋をちゃんと覚えてて。

そういったかと思えば立ち上がって、僕たちに見えないように手紙を読む。


「「お父様〜?」」

「リオネル、アイン。手紙読む邪魔しちゃダメだ。」

「「エドワードお兄様は気にならないの?」」

「気になるけど、それはしちゃダメなことだ。」

「「えー。」」


エドワードがリオネルとアインを引き剥がし、ニーナを抱えた。


「…………全く…こっちの状況を全く知らないわけじゃないだろうに。」


父ちゃんが頭を抑えてため息を一つ。


「ユリアとロイドが揃った時に話をしよう。今は掃除の続きだ。」


そう言う当主に誰も否を唱えることはなかった。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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