表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/231

剣術大会終了

剣術大会も終わり、観覧席もまばらになった頃。

迎えの馬車に乗り込み、動き出すのを待つ。


「元気だして、ユリア。」

「百二十カラットが…………。」

「えぇ、そうね。」


お嬢様が私の背中に手を置きながら、しみじみと私の手にあるソレを見る。


()()()()()()()()()()()だったなんて誰も思わなかったわ。絵を嗜む人なら喜ぶわよ。」


百二十カラットじゃなくて、百二十カラーパレットだなんて……!


「詐欺だわ……!」


人通りが少なくなったのを確認し、進み出す馬車。


「なかなか貴重な品だな。」

「えぇ。細工が見事です。」


カラーパレットをしまっておくための箱には立派な意匠が施されており、飾り細工もなかなかのものだ。


だけど……!!


「これじゃあ、ニーナの遊び道具にしかならないわ……!!」

「与えるには早くないか?」

「問題ありませんよ。我が領地ではこういう娯楽品はなかなか手に入りませんから、良い土産になります。」


稼ぐ方法はまた考えよう。

お嬢様の侍女給金だけでやりくりして、王都の邸と領地の方をなんとか改革しないと。

王都の方は任せると言われたし、王家主催の催し物には極力出るようにと言われている。

そう考えると流行りのドレスも購入する必要があるのか?

せっかく、クローゼットに立派なドレスが何着も入ってるのに。


「憂いても仕方がありません、景品が変わるわけじゃないですし。ところで、お城に向かってるようですがニーナやアルベルトはまだお城に?」

「あぁ、居てもらっている。コースター辺境伯の邸に帰すにも、ユリア嬢が居た方が良いと思ってな。」


気にしなくても良かったのに。

本当、真面目だなぁ。


「ありがとうございます。」

「気にするな。あんな出来事の後だからな。首元の痣を見て、侍女たちも気にしている。あまり出歩かさない方が良いかと思ってな。」

「ニーナ、泣き叫んだりしてたんですか?」

「いいや。ただ、シュチワート子爵から放れたがらない。彼が居ない間はマリアがついていたが、彼が戻って来てからは彼にべったりだ。」

「そうですか……。」


辺境伯の領地は争いが絶えない。

でも、帝国が仕掛けてこない限りは平和な場所だ。

隣の領地との争いもめったに起きない。

まぁ、トロッコの整備をしてからは少し怪しいみたいだけど。

お父様が今頃対処してるだろう。


「捕まえた野盗の頭は口を割りましたか?」

「まだだ。殺すなとは言ってあるから、心配はいらない。」

「拷問して口を割るタイプには見えなかったですけどねぇ。」


まぁ、王家に任せよう。

私の管轄外だ。


「彼が居たあの邸は誰の持ち物だったんですか?」

「元々はタールグナー伯爵の遠縁が管理していた邸だ。何年か前に没落し、今では王家が管理している。」

「…………。」

「う……、そのような顔をするな。今回の件に関しては本当に責任を感じている。」

「管理の仕方に穴があるようですね。それとも、王家の人間が関わってるのですか?」

「その可能性は低いだろう。両陛下はずっと忙しくしているし、私はマリアを愛してる。他の王族関係者には、マリアを狙う動機がない。」

「クロード殿下を愛してるとか。」

「ない。年の近い女性は存在しない。」

「ふ〜ん?じゃあ、違いますね。」


本当に存在しないのか、それとも存在を消されたのか。

王位争いを隠れ蓑に隠された事実は多いだろう。

王都は、私達辺境地に住まうものからすれば未知だ。


というか、前世ヲタクだった私に言わせれば、愛に性別は関係ない。


ま、お嬢様にこれ以上の被害が出ない限り関係ない話だ。


「他の捕まえた野盗たちも調べては居るが有益な情報は得られそうにないな。」

「そうですか。」


隣に座り、手を握りしめているお嬢様に視線を送り、殿下を見た。

キョトンとした顔をしたが、私が何を言いたいのか理解してくれたらしい。

笑顔で頷いて立ち上がるから、狭い馬車の中で座席を入れ替える。

突然動いた私達にお嬢様は驚いていたけど、傍に殿下が座ると固まって。


「マリア。」

「は、はい……!!」

「私は君を愛してるよ。」


うわぁ、まともに食らった。

お嬢様が真っ赤になって大きく目を見開いている。


「今回君を危険な目に合わせて、公爵にも怒られてしまった。」

「お父様に……?」

「あぁ。当然だな。君を城に招いて居ながら城で起きた事件だ。僕たちが円卓の間に君たちの情報を精査している間に飛び出したユリア嬢とシュチワート子爵の方が駆けつけるのが早かった。公爵も悔しそうにしていたよ。」

「当然ですわ。だってユリアは、陛下とクロード様が私のためにつけてくれた特別な護衛ですもの。」

「約束するよ。いかなる理由があろうとも、私は君を守ると。」


そう言いながら、お嬢様の左手薬指に口づけを一つ。


「だからどうか、まだ私の婚約者で居て欲しい。」

「…………クロード様、何を勘違いしてるのかは知りませんが…………。」

「…………。」

「わ、私は…………っ。」

「…………。」


頑張れ、頑張れお嬢様……!!


「私はクロード様をお慕いしております!!お父様に婚約者を破棄しろと言われても破棄するつもりは毛頭ありませんので!!」

「マリア……!!」

「ソレだけですわ!!さぁ、もう良いでしょう!?お席にお戻りください!!」

「マリア、どうして寂しいことを言うんだい。私はこうして君を近くで見つめていたいよ。」

「〜〜〜〜っ。」


眼の前で繰り広げられる甘い恋人たちのやり取りに窓の外へと視線をやる。

城壁がすぐそこまで迫っていた。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ