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新任教師と辺境伯令嬢

古代文明と医療の先生と言うだけで、そりゃあもう注目の的だ。


「新しい先生、カッコいいというよりキレイな人よね。剣なんか握りそうにないくらい細いし、指がキレイ。」


コバルトグリーンの髪をもち、モスグレイの瞳を持つ男。

来年、ヒロインの担任となる予定の攻略対象。

マーシャル・タールグナー(25)

タールグナー伯爵家の六男で、学問の分野では天才と呼ばれている逸材。


「ソフィア、貴方会ったの?」

「えぇ。マリア・セザンヌ公爵令嬢に挨拶に来たわ。なんでも、セザンヌ公爵にお世話になったことがあるとか。」

「へぇ…………。」


セザンヌ公爵令が学問に優れているという話は聞いたことがない。

何より攻略している時も、マリアお嬢様の名前もセザンヌ公爵の名前も出たことはなかった。

まぁでも、彼の血縁者が城に文官として仕えていてもおかしくはないから…………。


「でも、その挨拶をしてる時にシノア・ワイナールが来て、先生のこと連れて行っちゃったのよ。ビックリしてるマリアお嬢様のことは、いつの間にか現れたレオナルド・ドナウが連れて行っちゃったし。」

「え?珍しい。どこで声かけられたの?」

「廊下よ。Aクラス前の廊下でいきなり声かけられたの。」


ソフィアが顔をしかめる。


「気配を消してわざわざ近づいて来たの。絶対に何かあるわ。」

「…………わかった、私も気をつけてみる。」

「その方が良いかも。王子様にも言ってた方が良いんじゃない?」


確かに、殿下に声をかけた方がマリアお嬢様の身の安全は保証される。

だけど、まだ出会ったばかり。

物語も始まっていない。


「…………そうね。でも、それは一旦保留。」

「どうして?」

「まだ学園に来たばかり。何かをしてくるにしても、学園の中を把握せずに動くとは思えない。」

「それはそうだろうけど…………。」

「クラスで接触してくるなら、私よりソフィアの方が会う頻度が高いと思う。マリアお嬢様のこと気をつけてあげて欲しい。少なくとも二日は余裕があると思う。」

「…………それって、明日まで?明後日まで?」

「明日よ。朝に仕掛けては来ないと思う。でも、気をつけてあげて欲しい。」

「王子にはいつ言うの?」

「明日の朝。学園に来てすぐ殿下には伝える。明日の朝までに集められるだけ情報を集める。ソフィア、できる?」

「全く人使いが荒いわね。アルベルトが居ないからちょっとくらい手加減してくれても良いと思うんだけど?」

「あら、珍しく弱気じゃない。できないの?」

「できないなんか言ってないでしょ。最近ちょうど、私のパシリ役が手に入ったから、大丈夫よ。」

「パシリ役…………?」


ユミエルかガゼルのどちらかだろうけど…………。

ソフィアがパシリ役って言うくらいだから、ガゼルかな。


「信用して良いパシリなの?」

「大丈夫よ。私には逆らわないから。どうやら負けたのが相当こたえたらしいわ。それに、あの後領主様とも話をしたみたいだし。」


戦意なんて喪失してるわとケラケラ笑う。

まぁ、あんなにキレイに負けたら従うしかないよね、普通に。

もう少し互角の戦いを繰り広げていたら偶然だとか色々と言えただろうに。


「まぁ、心を入れ替えてるなら良いわ。他の皆の様子はどう?」

「元気にいつも通り過ごしてるわ。あ、でも領主様が領地に帰っちゃって、王都での仕事がいくつか処理できてないってセバスさんが言ってたわ。」

「わかった。こっちでの仕事はお父様にも一任されてるから、またそっちに顔を出すことにする。」

「うん、よろしく。」


王都での仕事は私がこなすってお父様が言ってたからセバスも私の為に仕事を残しているのだろう。

今までは王都にコースター家の誰も居なかったからセバスが細かいところまで管理してくれていたけど、今年は私が居るし、来年はロイドが来る。

しばらくは、私達で回すことができるだろう。

お父様も定期的に王都には顔を出して居たから、何かあればそのタイミングでお父様に報告すれば良いし。


「そろそろ時間ね。んじゃあ、ユリアお嬢様。頑張ろうね。」

「えぇ、そうね。」


ソフィアと二人、少し離れたところにいる殿下とお嬢様のところへと戻る。

こうして二人の時間を作るのも慣れてきたけど、二人がゆっくりも逢瀬を重ねることができる場所が少なすぎる。

今は使われてない旧校舎の方には危ないから行かせたくないし、行きたくない。

というか、ゲームに旧校舎の存在自体を示すセリフはあったけど、誰のルートでも旧校舎に行くことはなかった。

それに、悪役令嬢のマリア・セザンヌがそんな危ないところに行く理由がない。


「コースター伯爵令嬢。」


呼ばれた名前に振り返れば、さっきまでの話題の人物。


「マーシャル・タールグナー先生。」

「ご友人とのご歓談中、すみません。少しお時間よろしいですか?」

「…………皆さん、先に戻っていてください。私は先生とお話してから戻ります。」

「…………えぇ、わかったわ。」

「…………。」

「では、先に戻ることにするよ。行こうか。」


不安そうな顔をくするソフィアを促し、二人と行動をともにさせる。

攻略対象がモブの私に一体何の用だ。

私は、必要最低限しか関わりを持ちたくないんだけどな。


「それで、先生。お話というのは?」


私は今お仕事中だからさっさとお嬢様と殿下の傍に戻りたい。

お嬢様はソフィアとクラスが一緒だからそこまで心配はしてないけど、殿下は違う。

レオナルド様もシノア様もクラスが違うから、殿下を守れない。


「単刀直入に言います。セザンヌ公爵令嬢が命を狙われてるのは知ってますか?」

「は?」


いけない、貴族の令嬢ではない声が出てしまった。


「いきなり何を言うのですか?」

「驚くのも無理はありません。これは一部の者にしか知らされてない極秘事項なので。」

「その極秘事項をどうして私に?」

「貴方はクロード殿下と仲が良いと聞きました。ですから、クロード殿下にマリアさんを諦めるように説得して欲しいのです。マリアさんが命を狙われているのはクロード殿下が原因ですから。」

「クロード殿下が…………?」

「えぇ。ご存知の通り、マリアさんはクロード殿下の婚約者です。それが原因で命を狙われているのです。犯人はクロード殿下だと言う人も居ます。だから、どうか。殿下と仲の良い貴方から伝えて欲しいのです。マリアさんを諦めるようにと。殺す必要なんかないと。」

「…………。」

「クロード殿下の意識がマリアさんからそれれば、我々もマリアさんを保護しやすくなります。」

「マリア様を、保護…………。」

「えぇ、そうです。ですから、どうか。お二人の為に力を貸してください。」


人と良さそうな笑みを浮かべるマーシャル様。

間違いない、コイツが犯人だ。


「わかりました!やってみます!」

「ありがとうございます。では、頼みましたよ。」

「はい、任せてください、先生!私が絶対に、なんとかしてみせます!」


えぇ、絶対になんとかしてみせるわ。


「それでは。この話はどうか内密に。」

「わかりました。」


攻略対象がまさか黒幕と繋がってるとはねぇ。

流石に直接的だ黒幕ってわけじゃないだろう。

もしかして、あの攻略難易度の高さは生徒と先生という垣根以外にコレが原因だったり…………?

うわぁ、有り得そう。


「面倒なことになりそうね……。」


クロード殿下のマリア様への想いが断ち切れるとしたら、それはもうヒロインにしかできないことだ。

というか、私は殿下とお嬢様を婚姻の儀まで守るという王命がある。

それに、金貨五千という謝礼金が待ってる。

正確にはあと金貨二千だけど。


「さてと。」


明日の朝までに情報を精査する必要が出てきたわね。

殿下に伝えるより、陛下に伝えた方が良さげかしら。

殿下に知られたら、あからさまな警護を始めそうだし。


「…………はぁ…。」


ガゼルはソフィアのパシリをさせられるみたいだから頼めない。

セバスとベロニカには無理をさせるわけにもいかない。

それこそ老人虐待とか言われかねない。

かといってユミエルにはセバスとベロニカの補助をお願いしているから、頼めない。


「…………あー、人手が欲しい。」


せめて我が弟たちかアルベルトが居てくれたなら、遠慮なく調査をお願いできるのに。


間違いなく、アイツが犯人だ。

犯人と言わなくても繋がりはあるハズだ。

攻略対象だから、ヒロインが関わって来ないと裁けない可能性はある。

今回のこの件を解決したところで、何も変わらないかもしれない。

だからと言って、何もしないわけにはいかない。


「めんどくせぇ。」


名もなきモブなのに、めんどくさすぎるだろ。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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