表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/231

モブキャラなら大丈夫と信じて

我が家の使用人不足を解消すべく、私は早速レオナルド様と話をすべく殿下とお嬢様を接触させる。

ソフィアが居るから大丈夫だろう。


「レオナルド様、実は相談したいことがありまして。」

「なんでしょう?」

「レオナルド様のお知り合いで料理やお掃除が得意とか好きな人って居ませんか?」

「…………え?」

「実は、王都の邸を管理していた使用人が数名、諸事情で辞めてしまいまして。新しい使用人を探しているのです。私とお嬢様の関係を知っても問題なくて口の固い人物が良いのです。私達の関係は知られてはいけませんから。男性でも女性でも良いのです。仕事をしていただけるなら。」

「なるほど。たしかに、ユリア嬢とマリア様の関係は特殊ですからね。……ちなみになんですが、腕っぷしが弱くても問題ないですか?」

「もちろんです。王都の邸を管理する使用人にそこまで求めてません。自分で対処できますから。ただ、私も頻繁に邸には帰れませんから、レオナルド様の信用できる人物をお願いします。」

「そういうことなのであれば、一人、心当たりがあります。腕っぷしはあまり強くはありませんが実直な子なので、大丈夫でしょう。一応話をしてみます。」

「ありがとうございます!引き受けてもらえるようであれば三日後、邸を訪ねるように伝えてもらえますか?お父様が面接しますので。時間はいつでも大丈夫です。我が家は皆早起きなので。」

「わかりました。伝えておきましょう。」

「ありがとうございます!レオナルド様!とても助かります!」


よし、コレで一人確保したようなもの!

モブキャラだからフラグ乱立の心配もいらない!


「こちらこそ、助かりました。我が家は代々騎士の家計なので、どうしても腕っぷしが求められるのです。」

「大変ですね。強いことに越したことはないですが、こっちの邸では一切求めてないので大丈夫です。」


求めてない上に期待もしていない。

領地に連れて帰るなら別だけど、王都の人間を領地に連れて帰るつもりはない。

領地の皆の傷はまだ癒えてないのだから。


「…………ユリア嬢は…。」

「はい。」

「いえ。おそらく、辺境伯の邸で働く話をすれば頷くと思うのでおまかせください。」

「怖がられないと良いのですが…………。」

「大丈夫ですよ、絶対に。」


ニコリとレオナルド様が眩しい笑顔を向けてくる。


「腕っぷしは弱くても騎士の家系で育った子ですから。」


う、わぁ……。

眩しい……攻略キャラの超優しい笑顔。


「では、お願いします。」

「はい、お任せください。」


よし、コレで一人はなんとかなるでしょ。

あとは放課後、マルクル様に会いに行かなくては。






放課後になり、公務があるという殿下がお嬢様をお茶に誘ったとのことで今現在王族の家紋が入った馬車の中。

つい最近もこの光景見たなと思いつつ、二人の様子を伺う。


なんか……良い感じじゃない?

コレ、ヒロイン現れても邪魔できる余地ない気がする。


「あぁ、もう城についてしまったね。君にこうして触れられないと思うと少し残念だ。」

「そ、そそそそうですか。」

「緊張してる?」

「してませんっ。」

「本当に?」

「本当です……あ、あの、クロード様、ちか、近くはありませんこと……?」

「普通だよ。僕たちは婚約者なのだから。」

「…………殿下、早く馬車を降りてきてください。」

「あぁ、すまない。」


レオナルド様、慣れすぎだろ……!!


「それじゃあね、マリア。」

「はい、クロード様。お仕事、頑張ってください。」

「君とのお茶の時間までに全て終わらせると誓うよ。」


殿下の甘い言葉と雰囲気に完全に敗北しかけているお嬢様に咳払い一つ。

そうすれば、王妃教育で培った凛々しい表情のマリアお嬢様が出来上がって。

令嬢らしく殿下に一礼し、背を向けるお嬢様。


澄まし顔なのに耳まで真っ赤なのが可愛いわ。


「あれ、ユリアじゃないか。」

「え?あ、お父様!?」


なんでこんなところにお父様が……!!

今日、お城に顔を出すなんて一言も言ってなかったのに……!!


「おや、君は…………。」

「ごきげんよう、オズワルド辺境伯様。」

「今日も優雅で素晴らしい振る舞いですね、マリア嬢は。ココで会ったのも何かの縁。少しお話良いですかな?」

「はい、もちろんです。」

「では、この先にお茶の用意をしてあるので。ユリア、私がバラ園に居るとマルクルに伝えて来てくれる?」

「かしこまりました。」


お嬢様が不安そうに私を見てくる。

ごめんね、お嬢様。

私もお父様の思惑が何かは知らないけど、何かひどいことをするような人じゃないから安心して良いと思う。


「そんな顔をしなくても大丈夫ですよ。殿下や私がついてるよりもよっぽど安全ですから。あ、そうだ。」

「?」


マリアお嬢様の耳元に唇を寄せる。


「お父様の淹れるお茶はかなり濃いくて渋くて苦いので、残しても大丈夫ですよ。」

「え…………?」

「銀食器、忘れないでくださいね!」


お父様にマリアお嬢様をたくし、城内へと入る。

マルクル様はたしか、陛下の秘書官だって言ってたから……執務室か、謁見の間に居るのだろうか。


「…………さて。」


どっちに行けば陛下の執務室だろうか。


「あっちかな。」

「貴方はどこへ行くというのです?」


この声は…………。


「というか、こんなところで何をしてるのですか、ユリア嬢。」


で、出た〜!!

入学式以来避けなくてもなかなか遭遇しなかった攻略対象!!

侯爵家メガネ三男!!


「まぁ、お久しぶりです。シノア様。まさかこんなところで知り合いに出会えるとは思いませんでした。シノア様はお仕事ですか?」

「えぇ、まぁ。そういうユリア嬢はココへ何しに?」


めちゃくちゃ探られてるわ……、すっごい視線が怪しいって言ってるもの。


「実は、お父様にお使いを頼まれたのですが……。ココに来るまで誰にもすれ違わずに、困り果てて居たのです。」

「コースター卿に……?陛下に用事ですか?」

「はい。ですが、陛下の秘書官であるマルクル様を通すようにと学んでおります。なので、マルクル様を探しているのですが……、シノア様、お見かけになってませんか?」

「見てませんね。」


クイッと眼鏡を押し上げる。

うん、嫌味なインテリっぽい仕草で良い。

さすが、攻略キャラ。


「そうですか…………。」


まぁ、これ以上関わりたくないし仕方がない。


「ではもう少し探してみます。ありがとうございました、シノア様。お仕事、頑張ってください。」

「私も探すのを手伝いましょう。」

「え?」


ありがたいのだけれど、攻略キャラと一緒に居るのはイヤ。

ヒロインが登場する前とはいえ、関わりは持ちたくない。

何よりお嬢様との関係を知られるわけにもいかないから、この人を連れてバラ園に行くこともできないし……。


「何か困ることでも?」

「いえ、困るのは私ではなくシノア様では?」

「なぜ?」

「お仕事で来てるのでしょう?」


仕事優先にして私のようなモブに関わらずにさっさと立ち去れと言外に込めてみるが、絶対伝わっていない。


「おや?シノア様にユリア様。このような回廊の真ん中でいかがなされましたか?」

「!」

「マルクル様っ!!」


助かった!!

目当ての人物が来てくれた!!


「探す手間が省けましたね。では、私はこれで。」

「はい、ありがとうございました。」


貴族の令息らしく一礼すると立ち去って行く。

その後姿を見送り、マルクル様を見上げるとニコリと微笑まれる。

老紳士、イイ。


「ユリア様、本日はどういったご用向きでしょうか。」

「マルクル様にお願いがあって参りました。お時間よろしいですか?」

「もちろんですとも。では、こちらに。お茶でも飲みながらいかがですか?先程オズワルド卿も顔を出してましてね、少し話をしてたんですよ。」

「お父様が?」


なるほど、やはりマルクル様の手を借りるのを阻止しに来てたのね。

いや、でもその割には私にマルクル様のところへ行くように仕向けて来た……。


案外、協力的?


「さぁ、こちらに。」

「ありがとうございます、マルクル様。あ、お茶なら私が。」

「いえいえ。私も随分と淹れ慣れましたから、お気になさらず。」


秘書官って、大変なんだなぁ。


「どうぞ。」

「ありがとうございます。…………わ、美味しい!」

「それは良かった。この茶葉は、最近この城の庭園内で作られている茶葉で、まだ市場には出回ってないのですよ。」

「そうなんですね。」

「この王国の大半がコースター領で採れた作物で溢れています。同じ物でもコースター領で採れたものとは味が違う。」


マルクル様の言葉は素直に嬉しい。

でも、国一番……いや、大陸一と言われるくらいに実りの良い領地だからこそ敵が多い。

国内外問わず、我が領地を手に入れようと画策する人たちは後を絶たない。


「と、余計な話でした。ユリア嬢のお話をお聞かせ願いますかな?」

「実は、諸事情で使用人が辞めてしまい王都の邸が人手不足なのです。そこで、マルクル様に誰か紹介していただけないかと。」

「おや。」

「私は王命でマリアお嬢様の傍におりますが、ソレを知っている人物は限られております。なので、その王命を知っている、もしくは知られても問題がない人物が絶対条件なのです。私も自分の邸にはあまり帰ることができないでしょうから、信用のできる人にしか頼めず……。」

「なるほど。料理に洗濯、掃除などあらゆることをこなす人物でしたら、一人居ますぞ。」

「本当ですか!?」

「えぇ。元々はクロード殿下の秘書官にと思い育てていたのですが…………。良い機会です。修行だと言うことで、ユリア嬢に預けましょう。」

「え、そんな凄い人物なんですか…………」

「私の孫なので心配いりません。それに、殿下が即位するのももう少し先の話です。アレにはもう少し見聞を広める必要がありますので、思う存分こき使ってやってください。」


マルクル様のお孫様って、ハイスペックなの…………?

え、モブキャラだったよね?

攻略キャラなんかじゃないよね?


「ありがとうございます、マルクル様。期間は王命の間だけなので、殿下の秘書官には充分間に合うかとは思うのですが…………。殿下には説明したおいた方が良いかもしれませんね。」


あまり言いたくなかったんだが、仕方がない。

モブキャラとは言え、華やかな道を用意されていれモブを飼い殺すわけにはいかないもの。


「お気になさらず。あまり、この手の話を広めるのはよくありませんからね。それでは、孫には王都にあるコースター辺境伯の邸に行くようにと伝えておきましょう。」

「ありがとうございます。あ、三日後にお父様が面接をしますので好きな時間に来るようにとも伝えていただけますか?」

「わかりました。そういった手段をちゃんととるあたり、さすが辺境伯家のご令嬢ですね。」

「当主はお父様ですので。しっかりと当主の承認をもらわなければ。私は辺境伯の娘ではありますが、私自身には価値がありませんので。」


そういえば、少し目を見開いて嬉しそうに微笑む。


「ユリア様はしっかりしておられる。辺境地と呼ばれる場所で過ごしてきたからこその感覚なのか、はたまた貴方の性格か…………。なんにせよ、普通の令嬢ならそうはなりません。親の権力を傘に来て威張る方々が多く横暴な方も居る。それが仕事で当然の権利だと言われればそうなのですがね。」

「私はまだ未成年で学生ですから。私ができる範囲には限りがある。ただ、それだけですよ。親の威光を借りるにも、我々辺境伯は貧乏貴族だなんだと見下されていますからね。事実がどうであれ、意味はありませんよ。」


辺境伯家の貧乏貴族、野蛮令嬢。

様々な噂が拍車をかけ、未だに教室で私に話しかけてくれる子が居ない。

なんてさみしい学校生活。

コレがヒロインだったら一人は奇特な人が居て声をかけてくれるのに。

コレがヒロインとモブの差かと思うくらいには、結構本気で落ち込む。


「…………なるほど。ククク、ユリア様はコースター夫人に似たのですね。まぁ、あの人は殺られる前に殺っちまえと社交界を賑わかせてくれてましたが。」

「お母様が?」

「えぇ。彼女は王妃様もタジタジになられるくらいには豪胆なお方でしたから。と、話がそれましたね。」


え、待って。すごく気になるんだけどお母様の話。


「孫には伝えておくのでご安心ください。オズワルドくんも何度か見かけたことがあるので大丈夫だとは思いますが……。孫が何か粗相をすれば、ご連絡くだされば対処しますのでご安心ください。」

「ありがとうございます、マルクル様。」

「では、門のところまでお送りしましょう。」

「いえ。お父様がお嬢様とバラ園でお茶をしていると言っていたので、そっちに行かなくては。」

「オズワルドくんがバラ園に…………?」


なんだその不思議な組み合わせはと全身全霊で語ってくれるマルクル様。

確かに、お父様とバラ園という組み合わせよりも野菜畑の方がしっくり…………じゃなくて。


「わかりました。マリア様もそちらに居るのであれば、お送りいたします。コースター卿は私が回収しますので、ユリア様はマリア様のお傍についていてあげてください。」

「わかりました。」

「こちらです。」


先を促され、ついていく。

なんにせよ、コレで邸の人手不足はなんとかなる。

何よりメインキャラに関わらなくてもメインキャラに近しいモブキャラを誘ったんだもの。

メインキャラが私に話しかけてくることはなくなるハズ。

何かあったとしても、彼らが紹介してくれた弟様やお孫様に矛先は向くだろう。


ヒロインに目をつけられることもないだろうし、まさに良いこと尽くし!

あとは殿下とお嬢様の婚姻の儀まで守るだけ!

完璧な計画!

これで来年のヒロイン入学も怖くないわ!!

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ