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ココ数日、私を監視しているヤツがいる。


泳がしていたけど、そろそろ捕まえても良い頃合いだろう。


「えー?ダメなの?」

「ダメだ。」

「どうしても?」

「どうしても。つうか、なんで堂々と学園に侵入してんだよ、姉さん。」

「入れそうだなって思って。」

「だからって実行すんなよ。」


可愛い弟がため息を吐き出す。

私がいなくなってから、しわ寄せは全部ロイドに行ってる。

少し申し訳ない。


「変わろうか?」

「いや、良い。もうすぐウイリアムが入学してくるんだ。大人しく待ってるよ。」

「ウイリアムの制服姿、可愛いんだろうなぁ。早いなぁ、ウイリアムが成人しちゃう。」

「あと少しだな。」

「うん。あと少し。」


ウイリアムが成人すれば、私とロイドが当主代理を務めることはなくなる。


「全く。優秀な弟を持つと苦労するな。」

「本当にねぇ。お姉ちゃん立つ瀬ないよ。」


本当、ただのモブキャラで何も持ってない私には苦労の連続だった。

記憶を取り戻す前の努力家だった私自身を褒めてあげてほしい。


「ロイドが総代務めたのも驚いたし。」

「姉さんも受けてたら、やってたよ総代。」

「慰めてくれるの?やっさし〜っ!」

「やめろ、撫でるなっ。見られたらどーすんだよっ。」

「ふふ、気配が無いのは知ってるくせに。」

「…………。」


ロイドの頭をワシャワシャと撫で回す。

本当、優しい弟だ。


モブキャラの私に与えられたのは、この温かい家族だけ。

充分だけどね。


「姉さん、最近派手に動いてるみたいだけど大丈夫なのか?」

「大丈夫。むしろ、このくらい派手にしないと領地にまで届かないでしょ?」

「まぁ、ソレはそうだが……。あ、そうだ。例の家出息子。」

「!」

「予想通りだった。」

「そう。それは良かった。」


定期報告で状況は聞いてたけど……。

良かった。無事に隠蔽できて。


「リューキはなんか言ってた?」

「流石の目利きだって褒めてたぞ。」


家出息子であるニック・ドルモアを辺境伯家預かりに見せかけたから、探し物をする側からすれば突然離縁状が届いて、突然家出して、突然消息をたった息子だもんね。

ま、そう見せかける作戦だということをご両親に伝えてなかったのが悪いわね。

悪人の手を取るから、大切なものを失う。


「お父様が挨拶に行ったと聞いたけれど。」

「あぁ。お任せしますだと。」

「話したの?」

「さぁな。ただ、そう言われたってことは、そうなんだろ。」

「お父様って相当な博徒よね……。」

「全部計算の上だから、博打にはならねぇな。」

「そこが怖いところ。」

「言えてる。」


二人揃って息を吐き出す。


「で?姉さんがココにいること、誰かに行ったのか?」

「言ってないよ。」

「言えよ。」

「てへっ。」

「うわ。」

「うわって言うな、うわって!お姉ちゃんに向かってひどくない!?」


まぁ、その反応はわからなくもないけど。


ムニッと頬を引っ張っていると、見知らぬ気配が近くにきて。


「誰。」

「あ、バレちゃった?」


聞こえた声に思わず顔を歪める。


「ロイド、あんたのクラスメートいつから、人が()()()()の。」

「殿下の誕生日以降。」

「え、ソレって私の責任問われる?」

「大丈夫だ。自業自得だろうから。」


そうだよね。

あー、ビックリした。


本物のヒロイン様はラチェット様が閉じ込め……ゲフン、構い倒しているのを確認している。

あ、もちろん会長の部屋でね?


お陰でラチェット様、全然コースター辺境伯領に顔を出さなくなった。

まぁ、副会長である私が領地にいたからとも言うけれど。


「こんにちは。私、リナ・ソリッド。男爵家の一人娘なの。よろしくね?」


ニコリと微笑んで手を差し出してくる。


「ロイド、コイツ頭おかしいの?」

「本音が漏れてる。」

「どうしたの?私と仲良くするのはイヤ?」


頭がおかしい、コイツ。

散々嗅ぎ回っておきながら、いきなりこんなことする?

単純に考えても、ソリュート侯爵やタールグナー伯爵の作戦だとは思えない。

さては、暴走してるな?


「はじめましてではないわよ、ソリッド嬢。それから、私貴方の先輩に当たるから、気安く話しかけないでくれるかしら?貴方、一度挨拶を交わした相手の顔も覚えられないの?」

「え……。私、そんなこと……。ごめんなさい、お茶会に来てらしたのね?」

「お茶会というのは?」

「あら、やっぱり来てないのね!招待状を出してないもの!ほら、やっぱり!はじめましてよ!」

「たかだか男爵家のご令嬢が、私たちにお茶会の招待状を出せるわけないでしょう。学園の外では貴族の交流なのですから。それにしても……なるほど。お茶会に顔を出した人しか覚えていらっしゃらないと。では、私たちのことは、学園で何回も顔を合わせてるのに覚えていないのも無理はないわね。」

「はい!なので、はじめましてで問題ないですよねっ?」


ニコリと微笑む。

ヒロインに似ても似つかない。

同じ転生者でも、こうまで似てないものなのか。


「ちなみになのだけど、お茶会に出た人なら覚えているのよね?」

「はい!全員、覚えてます!」

「では、王妃様のお茶会やセザンヌ公爵家のお茶会には参加したことおありかしら?」

「え……?そんなお茶会知らないですよ?」

「あぁ、では私のことは知らないで仕方がないですね?自己紹介は控えておきます。お茶会に出席した人の名前しか覚えられない程度でしたら、自己紹介も無意味でしょうから。」

「…………。」

「前任の自称ヒロイン様は、もう少し上手く立ち回っていましたわよ?」

「!!」

「行くわよ。」

「ま、待ちなさい!!」


グイッと強い力で腕を引かれる。

助けようとするロイドを遠ざけ、構わず引っ張り返せば前のめりに倒れる。


「きゃ……っ!!」


おー、そういうとこ、ヒロインぽい。


「淑女としてあるまじき行為ですね、ソリッド嬢。」

「ご、ごめんなさい…!でもでも、今……!!私、何もひどいことなんてしてないのに……っ。」


メソメソと無き出す姿に偶然か意図的か、通りかかった生徒たちがザワザワとどよめく。


「はあ。自分で転げておいて泣かないで、鬱陶しい。」

「私、先輩にご挨拶しただけで…!こんなひどいわ……!!」


腰にさげていた剣を抜く。


「面倒だから殺すか。」

「!?」


止める気のないロイドと剣を振り下ろす私。

風を切り裂くように止めに入る剣。


あぁ、やっぱり来たか。


「あら、お久しぶりです。レオナルド様。ご機嫌いかが?」

「えぇ、悪くはないですよ。ユリア嬢、剣をおさめてください。」

「あら。」

「ココは私の顔をたてていただきたい。」

「仕方がないわね。」


大人しく剣をしまえば、同じように剣を鞘に戻すレオナルド様。


「では、この場はお任せします。」

「ユリア嬢。」

「……淑女の手はそう簡単に掴むものではありませんよ。」

「貴方は意味もなく剣を抜かない。今も、殺す気が無かった。それくらい、わかっています。何があったのか、話してほしい。ココ数日の貴方の行動も含めて。」

「ソレは、貴方の意見?」

「いえ、我々の意見です。」

「そう。」


ニコリと微笑み、ソッと手を放す。


「言えませんね。私は今、暗躍中なので。」

「ユリア嬢!」

「ヒントはそこかしこにありますとだけ、お伝えしておきます。」


ようやくクロード・カルメとマリア・セザンヌの目が私を捉えた。

ほら、ほしい答え(エサ)は眼の前にあるわよ?

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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