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采配

離婚してからも仲睦まじいソリュート侯爵夫妻の情報を優先的に集める。


集めた結果、面白いことがわかった。


なのに。


「キャンセルしてください。」

「陛下の勅命です。」

「マルクル様。ご存知の通り、私ものすごく帝国と仲が悪いのです。その上、秘匿されてます。なのに、クロード・カルメ殿下とマリア・セザンヌ公爵令嬢が居る晩餐に来いと?正気ですか?」


卒業間近ということもあり、成績優秀者は学園に登校するのも自由となっているらしく。

婚姻の儀を挙げられたお二人は、自由登校で公務も詰められていない。


新婚旅行にでも行くかとなれば良いものを、せっかくの時間は帝国との親交を深めるために活用したいと望んだらしく。

それなら良い機会だから、滞在中の皇太子と婚約者も呼んで交流しようと陛下が言い出し。


「ユリア様であることは予想されております。なので、観念して晩餐の席へおつきください。」

「イヤです。」

「美味しいものありますよ?」

「……、イヤです。」

「…………。」

「…………。」

「そう言えば最近料理長が新しいメニューを考案したとか。」

「ぜひ参加させていただきます。」


仕方がない。美味しい食べ物に罪はない。


「それは良かった。では、お待ちしております。」


マルクル様がニコリと微笑み、立ち去る。


パタンと扉を閉める。


「…………お嬢様。」

「食欲に負けた……っ!!」


だって……!

たって、仕方がないじゃない……!!


ココに居たら毎日美味しいものが食べられるんだもん!!

ほとんどがコースター辺境伯領で採れた物だとしても…!

調味料の類は王都のほうが多いし……!!


「うぅ……、私のバカ…………。」

「王様たちとお食事なんて、すごいです!お嬢様、どんなドレスが良いですかっ?クローゼットいっぱいに届け物のドレスが入ってますよっ?」

「あー……。」


ココ数日、ほぼ毎日のように婚約者である皇太子からドレスが贈られてきている。

正直、こんなに着ない。


いらないって突き返そうと画策すれば、すでにあげたものだから、好きにすれば良いと言われた。


仕方がないのでリメイクしてポシェットとかヘアアクセとか作ってルナにプレゼントした。


それでもあまりあるドレスの量なんだけどね。


「……、来たわね。ルナ。」

「はい、お嬢様。」


ノックが鳴る前に、ルナに扉を開けさせる。

そうすれば見慣れた箱を積み上げて持ち上げる一人の男性。


「こんにちは。ルナちゃん。婚約者様はいるかな?」

「不在です。何か用ですか?」

「今度の晩餐会に着てほしいドレスを主人から預かっててね。」

「ありがとうございます。では、お預かりします。」

「お願いね。」

「はい。」


ルナが箱を預かり、扉を閉める。


そして手慣れた様子で箱を開いた。


「わぁ!綺麗なドレスです!可愛い!絵本で読んだ、妖精さんみたいです!」


黄色と緑色のグラデーションドレス。

ふわりと優しい印象を与えるフレア。


「一体私にどんな印象持ったらこんな可愛らしいドレス贈ってくるわけ。」

「皇太子様にとってはお嬢様がものすごく可愛いんですね。」

「ルナ。リボン作ってあげよっか。」

「リボン!?あ、でもダメです!コレは晩餐会で着ないと!皇太子様に失礼です!」


最もな意見に苦笑する。


わかっているけれど、こんな可愛いドレスは着れない。


「はぁあ。ルナ、身支度をお願いできる?」

「あぅ……。ごめんなさい、お嬢様。マリア様の身支度を手伝うようにって言われてて……。」

「あぁ、そっか。ルナが私についてるのは、マリア様が居ない時だもんね。じゃあ自分で着替えるよ。幸い、着替えやすいデザインだし。」

「?お嬢様、もしかして聞いてないんですか?」

「?何を。」


その時、部屋の外に慣れた気配を感じて。


まさかと思いつつ扉が開くのを見つめる。


「領地からはるばる追いかけて参りましたよ、お嬢様!」

「臨時護衛騎士のアルベルトでーす。」

「専属侍女のソフィアでーす。」


二人揃って満面の笑みを浮かべる。


「「よろしくお願いしまーす。」」


悪巧みをした時と同じ顔で笑う。


頭を抑える私と嬉しそうなルナ。


全く。すぐに領地に帰る必要ができたから会えなくなったと言伝をしたかと思えばコレだ。

本当に性格が悪い。


「…………お父様の仕業ね?」

「えぇ。言ったでしょ?脅してでも一緒に行くって。」

「いやぁ、グレムートのヤツがまだ副団長で良かったな!門の出入り自由にできて助かったぜ。あ、そうそう。俺、姫さんが領地から連れてきた専属護衛ってことになってるから。」

「私も、領地から連れて来た専属侍女ってことになってるから。」

「ルナの負担を考えれば、仕方がないことだとは思うけど……。まさか本当に来るなんて。」


王都の邸でも着ていた侍女のお仕着せ。


アルベルトは……、騎士には見えないけど。


「騎士の正装も作る必要がありそうね……。」

「いらねーぞ、姫さん。窮屈そうだ。」

「わかってるわよ。まぁ、そこは任せなさい。とりあえず、わざわざ王都までありがと。半年もココに居ないけど、よろしくね。」

「お任せあれ!では早速!」

「…………。」

「どれから売る!?」

「おいおい……。」

「流石ソフィア、よくわかってる。ルナ、売りに行く予定のリスト見せてあげて。それ渡したら、仕事に行って良いわよ。」

「はい、お嬢様!ソフィア姉、こっちだよ!」


ルナがソフィアの手を引いて行く。


「ルナが元気そうで安心したな。」

「えぇ、本当に。」

「ほい、姫さん。」


差し出される封筒。


「誰から?」

「ロイド坊っちゃんから。」


受け取り封を開けば。


事細かに経緯が説明されていて。


「なるほど。そういうこと。」


コースター辺境伯に集まる視線を、私という婚約者に一点集中させてほしい。

その間に、諸々を解決する。


「それで二人が来たのね。だったら、今回のお仕事は楽勝だわ。」

「お。」

「利用できるものは全部利用するわよ。」


私にやってほしいことが明確な今、取るべき道は一つ。


囮としての務めを果たすだけ。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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