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祝福と混乱

第二章開幕!

雲一つ無い青空。


「っし!こっちの修復終わりっと。」

「お嬢様〜!区切りついたなら、一緒にお昼でもどーだーい?」

「食べる!!」


私は王都から辺境伯領に帰ってきていた。


「いやぁ、それにしても驚いたよ。領主様があんなに怒るなんて、よっぽどのことをしたんだねぇ。王都の貴族は。」

「お父様が心配性なだけだよ。」


婚姻の儀が終わってすぐ、混乱のさなか近づいてきた皇太子に視線が集中して。

国賓のいる前で大捕物をしたことを罰せられるんじゃないかと、ヒヤヒヤしていた貴族たちに目もくれず眼の前に立ちはだかった。


いや、何よりも視線を集めたのは私と同じように純黒の衣装に白銀でバラの刺繍が施されていたことか。


「その男には私も用がある。国王、ぜひとも立会の許可をいただきたい。」

「もちろんだとも。」

「陛下!!」

「構わぬ。帝国の民を語った犯罪が横行しているのは皆も聞き及んでいよう。」

「感謝する。」


そして、私の隣を通り過ぎる時。


「私たちの婚姻の儀も延期になりそうだな、ユリア。」

「えっ?」


あの会話が、近くに居た貴族たちに聞こえていたらしい。

瞬く間に王国内に広まった噂は、私が辺境伯領に戻る頃にはここまで広まっており。


「お嬢様、帝国の皇太子に嫁ぐのかい!?」

「は?」


私と入れ替わりでお父様は王都へ行った。


「ずっと勘違いさせたままの婚約者について、話し合ってくるよ。ひとまず、ゆっくり過ごすと良い。あとは任せておいて。」


満面の笑みと不釣り合いの殺気をまといながら。


平和的に解決してくれることを願ってる。


「お嬢様が帰ってきてくれて、嬉しいよ。ようやっと男どもが言う事を聞く。」

「あら。私が居なくても皆ちゃんと言う事は聞くでしょ?」

「領主様は甘やかすからね!ダメ!!」

「あははは!」


私が離れている間の領地経営はお父様が直々に指揮を取っていたから、かなり発展している。


「姫さーん。見回り異常なかったぞ……て、美味そうだなソレ。新作?」

「おかえり、アルベルト。新作って言うか(まかない)?」

「へぇ。」

「こんにちは。相変わらず賑わってますね。」

「グレムート様はお一人ですか?ソフィアは?」

「誘ったのですが、ソフィア嬢には先に行けと怒られました。」


肩を落とすグレムート様に苦笑する。

グレムート様は、このコースター辺境伯領に移住希望な上ソフィアに婿入りするつもりらしい。

お陰で、キャンベル伯爵家と騎士団は大混乱。

コースター辺境伯領の人たちは歓迎ムード。


「いやぁ、それにしてもグレムートがここに住むなら心強いよな。副団長辞めるんだろ?」

「えぇ。副団長辞めてキャンベル伯爵とも縁を切る予定ですよ。コースター辺境伯に迷惑かけられませんから。あ、そうそう。先程コースター辺境伯の屋敷に使わなくなった教材を届けたので、使えそうなら利用してください。」

「え!良いの!?ありがとうございます、グレムート様!」


やった!

王都の貴族様が実際に使っていた教材なんて超貴重な代物!

学び舎が充実するわ!


「思い切ったよなぁ。ソフィアのためだろ?」

「いえ、自分のためです。ソフィア嬢と居るためにとれる手段は全部とらないと。三男坊は身軽で助かります。」

「でも、収入はどうするの?ラチェット様のお陰で商会の往来はあるけれど、働き口なんてないわよ。」

「あぁ、そのあたりは考えがあるので心配いりません。それに、当分は騎士団でもらった給金だけで過ごせますよ。」


ニコリと微笑まれる。

この人、一体どれだけの高給取りなの。


「それに、畑仕事って初めてしましたが楽しいですよね。今はソフィア嬢たちに習って薬草の種類も学ばせてもらってます。まだまだ覚えることがあるって、素晴らしいですよね。」

「うわー。なんかアレだな。ソフィアに出会うべくして出会ったって感じだな。」

「うん。」

「本当ですか?では、ソフィア嬢に振り向いてもらえるように頑張ります。」

「頑張らなくてもいける気がするけどな。な、姫さん。」

「ソフィアは素直じゃないから、頑張ってとしか言えないわね。」


アルベルトとソフィアは貴族籍を返上し、平民に戻った。

子爵領に関しては、お父様の計画通りにリューキが引き継いでいる。

元々アルベルトは領地経営にそこまで関わってなかったから、今のところ問題は起きてない。


「こんにちはー!テレサママ、ユリアたちいてる〜?」

「いらっしゃい、ソフィア。お嬢様たちなら、奥の席に居るよ。」


聞こえてきた声に顔を上げれば、ソフィアが近づいてきて。


「ちょっとアルベルト、そこ邪魔。どいて。」

「横暴すぎるだろ。こっち座れよ。」

「イヤよ。ユリアの隣は私の席って決まってるの。」

「はいはい、喧嘩しない。」


空いてる席にソフィアを促せば、大人しく座る。

不本意そうだけど、大人しくしたがってくれたため良しとする。


「それで?何か用事?」

「あ、そうそう。さっきそこでラチェット様に会ってね。コレ、預かってきた。」

「あら。わざわざありがとう。」

「どういたしまして。」


差し出された手紙の封蝋はセザンヌ公爵家の紋章。

私たち三人が先んじて学園を卒業したため、時々近況報告で手紙をくれる。


「無事に婚姻の儀を迎えたってさ。それから、学園の卒業式に参加するなら、名簿に名前入れておくから教えてほしいって。どうする?」

「ユリアが行くなら行く。」

「俺も。」

「じゃあ全員欠席で返事しておくわね。」


あとは未払だったお給金に上乗せした支払い額の小切手が同封されていた。


ありがとうございます、お嬢様。

ありがたく使わせていただきます。


「それじゃあ早速手紙の返事を書いてくるわ。」

「おー。」

「ごちそうさま、テレサ。また来るわね。」

「いつでもおいで。ほら、アルベルト!アンタは食べ終わったらこっち手伝いな!」

「へーい。んじゃあ、お二人ごゆっくり。」

「ソフィア嬢とデート気分を味わえるなんて嬉しいね。」

「な……っ!!ば、バカじゃないの…っ!?」


ソフィアの反応に笑顔のグレムート様。

ソフィアがもう少し素直になれれば良いんだけどな。


領地を見回りつつ屋敷に戻る。


「ただいまー。」

「おかえり、姉ちゃん。」

「「お姉様、おかえり〜!!」」

「姉さま、おかえり!抱っこ!!」

「ふふ、ニーナってば。大きくなっても甘えん坊ね。」

「えへへ。」


舌っ足らずな話し方をしていたあの頃が懐かしい。

三年ほど離れていただけで、こんなにも成長しているんだから。

お母様が見たらきっと、泣いて喜ぶわね。


「姉ちゃん宛に手紙届いてるよ。」

「手紙?お父様から?」

「ううん、王様から。」

「は?」


ニーナを抱きかかえながら手紙の封蝋を確認すれば、王家の紋章。

差出人の名前は書かれていない。


殿下からの手紙だったら名前が書かれているハズ。

つまり、コレは本当に王様からということになる。


「嫌な予感。」

「どうする?開ける?」

「そうね、開けてもらって良い?」

「わかった。」


ウイリアムに開いてもらった手紙を受け取り、読み進める。

抱きかかえるニーナが手紙を見ないように両手で目元を隠している。


本当、よくできた妹だ。


「…………。」

「姉ちゃん?」

「お父様から手紙は?」

「届いてたよ。二週間後に帰るって。」

「そう。」


ため息を一つ。


考えても仕方がない。

なるようになるだろう。


「姉さま、こーたい、だいじょーぶ?」

「え?わ、もうこんな時間!そろそろ交代に行かないと、エドワードが拗ねちゃう。ありがと、ニーナ。」

「わ、本当だ。ニーナ、こっちにおいで。姉ちゃん当番だから。」

「はぁい。」


仕方がない、お嬢様への返事は帰ってきてからにしよう。


「行ってきます。」

「いってらっしゃーい!」

「いってらっしゃい、お姉様!」

「お姉様、気をつけてね!」


今頃見張り台で退屈しているであろう三男坊のため、駆け足で向かう。


「あ!ユリア姉!やっと来た!」

「異常はなかった?」

「帝国の兵士が怪しい動きをしてたくらい。」

「いつもどおりね。」

「うん。」


入れ替わりで見張り台に登れば、エドワードの言う通り、帝国の騎士が巡回してるのが見えて。


「…………帝国、ね。」


手紙の内容を思い出し、息を吐き出した。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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