学園入学前夜
学園に入学する前に基礎訓練終わって良かった。
お嬢様は元々の身体能力が高かったのか、避ける逃げるという行動だけなら領地の子たちと同じくらいにはできるようになった。
実にありがたい。
これで暗殺される確率が格段に減った。
「……ソレだけできれば、大丈夫でしょう。」
「ありがとうございます。」
ステラさんが安心したように微笑む。
彼女の暗殺術もメキメキ上達していて、ナイフを投げるくらいなら的に当てられるようになった。
まぁ、棒立ちした状態で動かない的相手に、ですが。
「あとは常に冷静になれれば言うことなしですね。」
「……成長してませんか?」
「成長してないとは言いません。ですが、そんな殺気立つ相手に殺されてはくれませんよ。」
「……はい。」
ナイフを抜き取り、隠すステラさん。
だいぶこの動きに慣れたように思う。
「明日から学園ですね。」
「はい。ステラさんは学園に行かれていたのですよね?貴族の集まる空間って、どんなところなんですか?」
「愛と憎悪渦巻く華やかな場所、ですね。」
「昼ドラ地獄?」
「ひ……?」
「なんでもありません。なるほど、注意しておきます。」
「特にお嬢様は王太子殿下の婚約者という立場ですから、注意しすぎということはないでしょう。」
「わかりました。殿下も学園にいらっしゃるのですよね?」
「はい。殿下はお嬢様と同じ年なのでいらっしゃいますよ。」
ヒロインが接近する前に手を打つしか無いな。
お嬢様と殿下のために……、何より私のために。
早く領地に帰りたいし、仕事はちゃんと達成しなくちゃ。
「教えてくださり、ありがとうございます。では、私は明日の準備がありますのでこれで。」
「はい。ありがとうございました。」
「ステラさんもお休みになったほうが良いですよ。無理をしても良い結果には繋がりません。」
「……そうですね、そうします。」
ステラさんと二人、並んて歩く。
私より年上の彼女は、出会った頃に比べてたくましくなったように思う。
「おやすみなさい。」
「おやすみなさい、ステラさん。」
それぞれの部屋に入り、鍵をかける。
ソレが、一日終わりの合図。
お仕着せを脱ぎ捨て、ストレッチする。
「あー、もっかいお風呂に入りたい。」
だけど侍女にそんなこと許されるハズもなく。
諦めて明日の最終確認と、着替えをすませる。
「私が学園生活を楽しめるように助っ人を送るって……誰のことよ。」
お父様からの手紙にため息をつき、電気を消した。
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感(ー人ー)謝




