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暗殺日和

寝る前にもテスト勉強をする真面目なお嬢様が寝静まったのを確認して、王都の邸へと戻る。


いやぁ、まさかお嬢様が殿下の誘いを受けて城で寝泊まりするなんて思わなかったよね。

でもまあ……。

そのおかげで、簡単に城内探索できたけど。

ルナにも伝えるべきことは伝えたし。

全ては今夜次第だろう。


「……?」


深夜だから、全員が寝静まっている。

そのハズなのに、動く気配が一つ。


「思ったより遅かったわね、ユリア。」


仁王立ちして迎え入れてくれるソフィアに苦笑する。


お風呂には入ったようだけど、外出着を着ている。

どこまでも私のことを見透かした幼馴染だ。


「ごめんね。ありがと、ソフィア。起きて待ってなくて良いのよ?」

「このくらいするって。それで、コレが昨日ルナからもらった定期報告書よ。」

「ありがと。」


城内で仕事の話はできなかった分、頑張ってくれたのね。

さすがだわ、ルナ。

やっぱり、許可証をルナに渡して正解だった。

今度いっぱいお礼しなきゃ。


「…………ソフィア。テストあるんだから、寝て待ってても良いわよ。」

「何言ってんのよ。一緒に行くわ。頼ってって言ったでしょ。」

「じゃあ、約束して。」

「…………。」

「もし、この問題が長引いたとしてもアンタはテストを受けるって。」

「!」

「約束して、ソフィア。じゃないと、同行を許可できないわ。」

「…………、はい。」

「よし。」


不満そうだけれど、約束は破らないから心配はいらないだろう。


「行くわよ。」

「了解。」


こんな夜中に城に侵入したなんてバレたら首が飛ぶだけじゃ済まない。

だけど、行かなきゃ。

命を狙われてるみたいだから。


「ルナ、狙われてるの?」

「ルナの方はソフィアが連絡してくれたから、大丈夫だと思うわよ。頼んだ通りに届けてくれたんでしょ?グレムート様に手紙。」

ユリア(お嬢様)の頼みですから。」


少し不満そうだけれど仕方がない。

ルナには部屋から出るなとは伝えてあるけれど、気休めにもならない。

あの人の協力は必要不可欠だ。


城壁を見上げ、お父様に聞いていた抜け道を使って城壁内へ侵入。

夜とは言えど、やっぱり見回りの兵士は多いわね。


「思ったよりも高い位置にあるわね。」


木々からもう少し近い位置に窓があると思っていたのに。

まぁ、仕方がないか。


「どうするの、ユリア。」

「とりあえず、本命の方に行くわ。ソフィアはルナの様子を見に行って。グレムート様を信用してないわけじゃないけど、何かあってからじゃ遅いわ。」

「……わかった。絶対に無理、しないでよ。」

「わかってるって。」


ソフィアが静かに傍を離れていく。

闇夜に紛れ込んで動けるのは暗殺者だけじゃない。


「…………。」


見回りの兵士の背中を見送り、傍にあった一番背の高い木に登る。


「…………?」

「…………。」

「う…っ。」


潜んでいた暗殺者と思われる人物の意識を奪い、生け垣へ突き落とす。

ガサリと音は鳴ったけど、問題はない。


死んでないだろうしね。


「さて。」


窓を見上げる。

暗殺者はまだ居るだろう。

これだけ気配が多かったら特定するのは難しい。


殺気立ってる人たち全員が暗殺者なら、それなりの人数居ることになる。


「…………あのバルコニーからなら届きそう。」


今世の私の身体能力はそこそこ高いと思う。

なんせ、野生育ちだから。


「……っ。」


木から飛び移り、バルコニーの手すりに降りる。

バクバクとする心臓に一呼吸。

あまり時間はかけてられない。


少し上の位置にある窓を見上げ、窓枠目掛けてジャンプ。


よしっ、指がかかった。


あとは…………。


「あーけーてー。」


この部屋の中に入るだけだ。


「開けてくださーい。」


トントンと窓をノックする。


やばい、腕痺れてきた。


「開けてください、陛下ぁ。」


一国の国王が呑気に寝てんじゃねーよと内心毒づいていると、気配が動いて。

嫌な予感に背筋がゾッとする。


「……窓を割れ!許可する!!」


部屋の中からの叫び声にグッと腕に力を入れて、身体をそのままクルリと回転させ、窓を蹴り破り中へと侵入する。


陛下とソレを囲む暗殺者。

迷いなく一番近い暗殺者の意識を奪って、暗器を拝借。


「その剣は飾りですか。飾りならそこから動かないでください。」

「オズワルドには一勝もしたことはないが、ワシも剣術の腕前は、それなりにあるぞ。」


そのまま闇夜に紛れている暗殺者を切りつけていく。


「なんだコレは!見張りが殺られてるぞ!!」

「陛下!!ご無事ですか、陛下!!」


どうやら窓が割られた音で駆けつけてくれたらしい。


最後の一人を陛下が切り捨てると同時に扉が強引に開かれる。


「これは…………。」


騎士の戸惑う声。


「行け、ユリア。」

「!」

「ココはワシがおさめる。」

「…………外に暗殺者一名転がしてますので。」


意識が陛下に向かってる間に窓から飛び出て、逃走。

全員視線が下に向かっていて、頭上がおろそかだ。


この世界に前世みたいな画期的な捜査技術がなくて良かった。

じゃないと指紋とか足跡とかでバレてただろうから。

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