弱肉強食 Sideヒロイン
眼の前に積まれた書類の束が、大きな音をたてて床に落とされた。
視線を少しずらせば、修道院から連れて来た二人組が静かに立っていて。
「ちゃんと始末したんじゃろうな。」
「はい。言われた通りに野犬に食われるのを見届けました。」
「必要であれば骨でも持ってきましょうか。」
「いらん。そんな不愉快なものをココに持ち込むな。」
二人組は平然と酷いことをする。
いや、させているのは眼の前のジジイだけど。
それでも、顔色一つ変えずに、汚れ仕事をする神経を疑う。
やっぱり、問題児ばかりを収容していた修道院出身者なだけあるわ。
「暗殺日を変更するしかないとは。ワシの完璧な計画をとことん狂わしてくれるわ、コースターめ。」
この人、手を組むと決めた時から親の仇かってくらいにコースター辺境伯を目の敵にしてるわね。
たかがモブキャラ一家なんだから放っておけば良いのに。
「あんな意味のわからない言葉の羅列で本当にバレたわけ?」
「フォッフォッフォッ。学園で首席をキープするだけの実力は持ち合わせておるわ。忌々しいのぉ、全く。」
ココ最近、計画通りに進まないことが多いらしい。
ヒロインとヒーローが結ばれる、当たり前のエンディングを迎えられるのなら。
それ以外はどうでも良い。
「それより、クロード殿下の誕生日パーティーまで日付が無いんだけど。どうするの?あの女とクロード様が婚姻の儀を挙げちゃったら、アンタたちと組んでる意味無いんだけど。」
「それはお互い様じゃよ。ワシはあの二人の邪魔をしてくれれば良いのだからのお。だが、進捗はどうじゃ?全然殿下の御心を射止められていないではないか。」
「……、予想外のことが立て続けに起きただけよ。まだ希望はあるわ。だって生徒会室では私、殿下と二人きりになって仕事すること多いんだもの。」
思わず笑いが漏れる。
スチルイベントは思うようにいかなかったが、着実に高感度は上がっている。
最大のおじゃま虫ラチェットが現れないし、悪役令嬢は私達が二人で過ごしていることを知らないみたいだし?
ほんと、最高の環境よね!
あー、ヒロインで良かった!!
「フォッフォッフォッ。順調そうで何より。じゃが、当初の予定よりも、攻めるのじゃぞ。噂通りの日程なら大変じゃからのお。」
「わかってるわよ。」
「して、そなたらはどうじゃった?」
「はい。下級騎士団警邏隊全員の弱みを把握しました。以前抱え込んだ下級騎士団の給仕係である双子がせっせと集めてくれています。この調子で行けば数日中に左羽軍は掌握できるかと。」
「また、セザンヌ公爵家お抱えの騎士の中に右羽軍に詳しい者を見つけました。セザンヌ公爵家お抱えの騎士及び右羽軍がこちら側につくのも時間の問題かと。」
「ふむ……。その調子で情報を集めるように。して、婚約者殿のスケジュールは掴めたかの?」
「それが……。」
「なんじゃ。」
「テストまでの間、城に泊まる予定だと。」
「なんじゃと?」
「クロード殿下の動きを監視するためだと、一部で噂に。他には……お二人とも、ユリア・コースターに負け続けているので、その対策だとも言われておりますが……。」
「ふむ……。」
考え込む姿に二人は困った顔をして顔を見合わせる。
「ねぇ。アンタたち、もっと詳しい情報集められないわけ?」
「我々がバレずに動ける範囲は限られてます。その中でも接触できる人間はごくわずか。不満を漏らすのなら、情報流してくれそうな人を紹介してくださいよ。」
「ハッ、冗談でしょ?なんで私が。」
選ばれし存在である私がモブキャラのために人肌脱ぐなんてありえないわ。
メインヒーローであるクロード殿下を攻略するために、わざわざこんなヤツらと手を組んでるってのに。
このジジイも偉い人だってこと以外の情報掴めないし。
本当に偉いのかどうかも疑わしいわ。
「ふむ。城内で過ごされるのであれば、都合が良い。陛下暗殺の首謀者になってもらおうかのお。」
「?そんなことができるの?」
「フォッフォ。ようは、やりようじゃよ。あの娘が泊まる部屋は決まっておるでな。侍女を何人か買収すれば良いわ。……使えそうな侍女を見繕ってまいれ。」
「はい。」
「交渉はワシがしよう。」
「!」
「手段を選んでられぬでな。フォッフォッフォッ。」
動いてくれるなら話が早い。
ヒロインの邪魔をするモブ共を根絶やしにしちゃって欲しいわ。
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