剣術大会本戦の舞台裏
私たちにとって最後の剣術大会。
不参加の殿下とお嬢様はギブハート団長の傍で大人しく座っている……なんてことはなく。
「ユリア嬢!そっちはどうだっ?」
私たちは今、学園の中庭にあたる部分で探し物をしている。
もちろん、昨晩お嬢様を襲った暗殺者に吐かせた情報をもとに、だ。
まぁ、ココはハズレの場所だから何も出てこないんだけどね。
「こちらには何もありません。レオナルド様、そちらはいかがですか?」
「こちらも不審なものは見当たりません。マリア嬢、そちらはどうですか?」
「ココにもありませんわ。」
「ココまで来ると、敵の嘘という可能性も…………。」
「どう思う、ユリア。」
「嘘ではありませんよ。」
ニコリと微笑み、感じた気配に廊下へと視線を向ける。
そうすれば、ソフィアが探し物を手渡してくれる。
「ありがと、ソフィア。どうだった?」
「どうもこうも、ユリアの言った通りの場所にあったわよ。あぁ、潜り込んでいた怪しい人物は予定通りに泳がしてるわ。」
「鉢合わせしなかった?」
「こっちで時間稼ぎしてくれてたお陰でね。」
「それは良かった。」
お嬢様が昨晩襲撃されてから、ずっと感じていた違和感。
それがやっと、解決した。
「それが、マリアを襲撃した暗殺者が言っていた指示書か?」
「そのようです。」
「なんと書いてある?」
「次の標的は国王陛下とだけ。」
「「「!!!?」」」
ひったくるように奪われる指示書。
それに肩をすくめてソフィアを見る。
「ありがと、ソフィア。会場に戻りましょう。」
「良いの?」
「良いの。お嬢様も今は殿下とレオナルド様が一緒だし。何より、この指示書が私たちの手に渡った時点で詰みよ。」
「まさかユリア────」
口元に人差し指を当てれば、押し黙る。
それにニコリと笑って一歩踏み出す。
「ま、待ってくれユリア嬢!」
殿下の焦って呼び止める声に振り返る。
何をしても絵になるわね、この人は。
さすが、攻略キャラ。
「どこでコレを見つけた!?いや、そもそもココを探そうと言ったのはなぜだ!?」
「敵を欺くには先ず味方からも言いますでしょう。」
「だが……!!」
「?セザンヌ公爵から、情報の共有はされていいたでしょう。だったら、ココではない事くらい見抜けたハズです。」
「……場所を特定するものなんて何も無かっただろう!?」
「セザンヌ公爵には敵が言った言葉を一言一句違わずに綴ってくれとお願いしました。アレで見抜けなかったのなら、それは殿下、貴方の責任です。」
「な……っ!!」
「貴方は一国の王になられるお方。他人を頼ることの大切さを学んだのならば、貴方が次に学ぶべきは己の力を示すことだと私は考えます。マリア・セザンヌ様との婚姻の儀が差し迫っています。他人の力を頼ってばかりのままなら、確実に愚王となりましょう。」
「!」
「ユリア嬢!言葉が過ぎるぞ!!」
「事実でしょう。私はソフィアに、指示書の受取人が姿を現すギリギリまで待機と伝えていました。そして、時間を計れとも。ソフィア、貴方が指示書を見つけて受取人が現れるまで何分?」
「一時間二十分です。」
その答えに三人が息を呑む。
「一時間二十分、ココで私たちが足止めしたのに貴方たちは答えにたどり着けなかった。敵にこの指示書を渡すところだった。その意味が、わかりますか?」
「……、……っ。」
「次の標的は国王陛下でしょう。お二人の婚姻の儀を先延ばしにするために標的を貴方がた二人に戻すほど相手は馬鹿ではない。ま、そこに書かれている犯行日程は変わるでしょうが。」
「!!この文章に犯行日が書かれているのか!?」
「というか、ユリア嬢は一体コレを見てなぜ国王陛下とおわかりに……?」
レオナルド様の質問に殿下が眉間にシワを寄せ、お嬢様が真剣に指示書を見つめる。
「本当にわからないのですか?」
「…………あ。この文章ね?天に召します黄昏の獅子。王家の紋章は金色の獅子と言われているし、獅子を囲うように描かれた輪は天地の支配者を意味すると習ったわ。」
「正解です、お嬢様。流石ですね。」
「いいえ。今ようやくわかったもの。この指示書、しばらく預かっても良いかしら?ゆっくりと読みたいの。」
「殿下が許可をされるなら。私には必要ありませんから。」
「必要無いって……、ユリア嬢!この緊急時に何を…………っ。」
「私は国なんて面倒なものに関わるつもりは毛頭ありませんよ。」
王命はただ一つ。
王太子クロード・カルメの婚約者を婚姻の儀まで護ること。
「それでは、私は先に戻ってますね。」
チラリと木陰に視線を向け、その場をあとにする。
「良いの?捕まえなくて。」
「良いわ。コースター辺境伯領に害が無いもの。今は、ね。」
殿下たちの護衛なのか、はたまた内通者なのか。
陛下が襲われる時に、はっきりするだろう。
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