少しずつ、確実に
学年があがってすぐの大きな学園イベントといえば!
そう!剣術大会!!
ヒロインと攻略対象の好感度がバク上がりイベント!
つまり!
悪役令嬢と殿下のラブラブ仕事タイムが増える!!
殿下を攻略したいヒロインにとってはイベントスチルの無いただの学園行事。
去年、殿下が優勝していればシード参加できたけど。
「ユリア嬢。」
「殿下。どうしたんですか?」
「一緒にきてもらえるか?」
教室にまで迎えに来てくれた殿下について行けば、生徒会室。
中には現生徒会メンバーと我が弟。
なんで?
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
顔を見上げれば、ヒロインの幼馴染くんで。
ふむ。
「ロイド。」
「予想はできてるが、何も。」
「そう。」
「姉さんも?」
「えぇ。」
「そっか。」
とりあえず、出されたミルクティーをいただく。
ミルク何杯入れたの?
というより、砂糖?コレ砂糖??
めちゃくちゃ甘いんだけど。
歯がキシキシするんだけど。
何コレ。なんかの嫌がらせ?
それともヒロイン好みの甘さ??
「美味しいですね。」
「ソレは良かった。ココにあるのは生徒会のメンバーが各自取り寄せしているモノだから。」
「あぁ、通りで。」
王城や公爵家で出されたモノとは質が違うと思った。
出されたお茶請けのクッキーに手を伸ばし、一口。
「……コレ、マリア様お気に入りのクッキーですね。良かったんですか、私たちが頂いて。殿下がご用意されたものでしょう?」
「驚いたな。わかるのか。」
「むしろなんでわからないと思ったんですか?ということで、マリア様もどうぞ。」
「あの、私は……。」
「食べさせて差し上げましょうか?」
「私が食べさせてあげよう、マリア。」
「じ、自分で食べますわ……!!」
真っ赤になってクッキーを手に取るお嬢様。
今日も可愛い。
残念そうにしてる殿下に残念なモノを見る目を向けるシノア様とレオナルド様は面白いけど。
「あの!」
やっぱり邪魔してきたか、ヒロイン。
「大事な話があるんですよね!?呑気にお茶してる場合ではないかと思います!!」
「あ、あぁ。では、本題に入ろうか。実は、剣術の件で相談があってな。」
殿下の言葉にロイドと顔を見合わせる。
「シード枠ですか?」
「あぁ、そうだ。」
「剣術大会の優勝者はいませんが、シード参加するならロイドだと思います。去年の最後、引き分けてますからね私と。」
「前例が無かったとは思えませんが……。殿下はシード参加枠をなくしたいのですか?」
「……、さすがだな。あぁ、そうだ。ラチェット義兄上のような人がいないとも限らないからな。」
「んー、でしたらトーナメント形式ではなく全試合乱戦にしては?やり方の変更が難しいのであれば開幕宣言とともに開幕試合をしてみるとか。見本にもなりますし、人も集まるでしょう。」
「開幕試合か……。だが、そうなると候補者がいない。」
「まぁ、無難に生徒会役員のメンバーが良いかとは思いますが……ダメですね。剣術が得意では無い人は居るでしょうし。卒業生の騎士団員を招いてしてもらうのが手っ取り早いと思いますがどうでしょう?」
「……確かに。毎年騎士団から注目を浴びるイベントではあるから、話をしてみる価値はあるかもしれない。ありがとう、ユリア嬢。」
「どういたしまして。でも、今年に間に合わせるのは現実的ではありませんよね?今年はクロード様とディル様でいかがでしょう?せっかく帝国から来られているのですし、王国の学園イベントを楽しく参加していただければ、今後に影響があるかもしれませんよ?」
「マルエラン殿か……。一度話を聞いてみるか。」
よし。
これで、マルエラン・ディ・シエルへの違和感の正体が見つかるかもしれない。
「帝国からのお客様を相手にするなら貧乏貴……、コースター辺境伯のお二人どちらかが相手すれば良いと思います!!」
「あはは、面白いこと言いますねぇ。別に構いませんけど、お互いに手加減できないのでどっちか死ぬまで終わりませんよ?」
「まぁ、公の場で斬り合う口実をもらえるのはありがたいけどな。王国と帝国の交渉が失敗に終わっても責任はとらない方向で調整してくださいね、殿下。」
「絶対にマルエラン殿と君達が剣を交えることはないと約束しよう。」
覚悟を決めた表情の殿下に、ヒロインが舌打ちでもしそうな顔をする。
また何か企んでるな?
「話もまとまったことですし……クロード様、ひとまず先生方に確認をしてみませんか?その間に、騎士団への要請書類は私の方で進めておきます。」
「ありがとう、マリア。私は学園長たちに話をしてくる。シノアは二人とともに剣術大会の企画書をまとめてくれ。レオナルド、マリアを頼む。」
「「はい、会長。」」
それぞれがバラけて動く。
さすが、攻略対象たち。
ヒロインが何か言いたそうにしてはいたが、シノア様に連れて行かれていた。
「話も済んだことだし、俺達はこれで。行くぞ、姉さん。」
「私はこのクッキー食べてから戻るわ。先に戻ってて良いわよ。」
「たく……。」
バイバイと手を振れば、呆れたように手を振り返される。
それにしても、さすがお嬢様と殿下。
いつ食べても美味しいわ。
「ユリア嬢。」
殿下の呼びかけに視線を向ける。
「娯楽施設での出来事は聞いてるかい?」
「……、簡単には把握しております。」
「そうか。」
「はい。」
「…………長期休み前の暗殺者集団の件だが。」
「…………。」
「ユリア嬢のお陰で全員生きて捕らえることができたのに、すまない。全員、毒殺された。」
「仕方がありませんよ。城内に犯人が居るのですから。殿下とマリア様がご無事で何よりです。」
やっぱり口封じに動いたか。
どれだけの証拠品を持とうと相手はこの国の重鎮。
一筋縄じゃいかない。
「城内って……犯人がわかってるの、ユリア。」
「……近い内に国王陛下に取り次いでもらえますか、殿下。陛下に謁見申請をすると、こちらの動きがバレて証拠も消されるかもしれませんので。」
「わかった。マリア経由で連絡しよう。」
「お願い致します。」
あんまり危険なことをさせたくはないのだけど……、陛下たちを味方につければ多少は危険から遠ざけられるハズ。
「これ以上はお仕事の邪魔になりそうなので、私はこれで。」
「では、私も学園長室へ行ってくるよ、マリア。」
「はい、クロード様。」
次の定期報告までに準備を進めるか。
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