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攻略状況

新入生としてレオナルド・ドナウの弟が入ってきたというのは、学園内に瞬く間に広がった。


ユミエルに対する悪い噂ももちろんあるが、それでも攻略対象の弟。

見目麗しいため、女子生徒の目線は釘付けだ。


というか、狙われている。


「ユミエル、すげー人気だな。」

「そうね。囲まれてるわね。」


アルベルトと二人、窓から様子を伺う。


戸惑いながらも対応しているのが見て取れる。


「好意的なのは良いことね。パーティーでは悪意の塊に囲まれてたし。」

「まぁな。そう思うと、ユミエルって頑張ったよな。」

「うん。」


剣術の腕はダメダメだけど、新入生代表になるくらいには頑張ったらしいから。


「お祝いね。」

「お祝いだな。」


王都の邸のみんなに指示出しておかなきゃ。


「ユミエルって、どっちに帰るつもりだろう?聞いてる?」

「コースター辺境伯が良いってさ。」

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。」


あ、レオナルド様と殿下が行った。


アレ、逆効果では?


「そういえば、お父様からリューキの件聞いた?」

「あぁ。領主様と話し合ったから、大丈夫だ。」

「それなら良いの。」

「ユリア、お待たせしました。」

「ディル様。」

「んじゃあ俺は課題提出してくる。」

「うん。暇つぶしに付き合ってくれてありがと。」

「姫さん相手なら喜んで。」


手を振って見送り、ディル様へと向き直る。


「相変わらず仲良しですね。」

「そりゃあ、付き合い長いので。あとは、図書館ですよね。」

「はい。助かります、ユリア。」


窓枠に仮置きしていた書物の束を抱え、二人並んで歩く。


「それにしても、この短期間でコレだけの書物読み終えるって……。長期休みの間も学園に通ってたんですか?帝国に戻らずに?」

「はい。ユリアに教えてもらった書物が面白くて。帝国では読めないモノばかりだったので、つい。」

「気に入ってもらえて良かったです。」

「おすすめしてもらった本はすべて読みました。どれも、帝国では置かれていない書物でした。ユリアは知ってたのですか?帝国に置かれてないことを。」

「予想をたてただけです。」

「…………。」

「王国と帝国の違い、著者の出身地、書物の内容……あらゆる情報を精査し、予想をたてただけです。人質同然の学園生活とはいえ、有意義に過ごさないともったいないでしょ?」


特別なことなんてない日常会話。

その日常会話の中で聞かれたおすすめの書物。


図書室への扉を開き、受付に返す。


「っし。返却完了!」

「ありがとうございます、ユリア。お陰様で往復せずに済みました。」

「どういたしまして。」

「お礼に何か────」

「ふざけないで!!!!」


この声は……ヒロイン?


図書室で叫ぶなんて、非常識すぎるでしょ。


「またか……。」

「また?」

「えぇ。長期休みの間含め、何度かあったんですよ。あの女子生徒。」

「…………。」


正直、ヒロインには関わりたくない。


だけど、何か情報が手に入るかもしれない。


「ディル様、先に戻っててください。私、用事を思い出しました。」


野次馬するしかないでしょ!


声の反響からして……こっちか?


「図書館ではお静かになさってください。」

「貴方が変なこと言うからでしょ!?」

「変、とは?」


あら、珍しい組み合わせだこと。

シノア様とヒロインってことは……、生徒会の仕事か?


あ!


図書館でのスチルイベントか!!


殿下狙いに絞ってたみたいだから、すっかり忘れてた。

生徒会に入っていること、友好度が良好以上の状態であること、始業式から四週間以内に一人図書館で自習すること。


…………シノア様とヒロイン、良好以上の関係築いてたの??


「クロード殿下が学園を卒業する前に婚姻の儀を行うって!」

「何も変ではありませんよ。むしろ殿下は遅すぎるくらいだと思ってます。」


お父様が手を回していると言ってたのは、そういうことね。


それにしても、卒業式の前に婚姻の儀って……。

一応この国ではに十八歳以上の男と十六歳以上の女であれば婚姻可能と決まっている。

そう考えると、卒業式前に婚姻の儀をあげることは不可能ではない。


「それに、マリア嬢は王妃教育をすでに終えております。何の問題もありません。」

「そんなの、反感があるに決まってるわ!」

「そうですね。でも、些細な問題です。」


淡々としてるシノア様と白熱するヒロイン。


これは……もうひと騒動ありそうね。


「話は以上です。理解できたなら、これ以上お二人の邪魔をしないように。もちろん、僕の邪魔も。」

「邪魔って……!」

「鈍い人ですね。それとも、愚者ですか?いずれにせよ、これ以上は付き合いきれません。化け物レベルの切れ者に囲まれているのが理解できないような貴方と居ると破滅しそうなので。」


書棚に隠れ、気配を殺す。


立ち去る姿を見送り、安堵の息を吐く。


ドンッ!


どうやら机を叩いたらしい。


「何が破滅よ……!私は、ヒロインよ!?破滅するのは悪役令嬢だけなのよ!そのために、色々と手を回して陰険ジジイの言う事きいてんのに…!!」


へぇ、独り言でそういうこと言っちゃうんだ?


「修道院から連れてきた二人も失敗ばかりで役に立たないし……!!あんなのだったら別のヤツらの方が絶対良いのに、使い道はあるからって聞いてくれないし、あの老いぼれジジイ。」


ひ、ヒロインめちゃくちゃ口悪っ。


私と同じ前世の知識持ちみたいだから仕方がない?

ヒロインと噂の翁が一蓮托生ってわけじゃないのは予想通りだし。


問題は、修道院から連れて行かれた二人だ。

ヒロインと翁、二人の考え方が分かれば良いんだけど……。


それによって、動き方が変わる。


「あー、もう、本当イライラする。ゲームでこんな流れなかったじゃない。クロード殿下に真偽を確かめなくちゃ……。」


激しい独り言を吐き出しながら立ち去る姿に、書棚へと視線を移す。


目についたのは『利益と損失』と書かれた背表紙。


「…………ふむ。」


一度確認した方が良さそうね。


明るい未来のために。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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