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隠しイベント発生

ガタガタと馬車が揺れる。


「守護騎士は最強の暗殺者集団。構成員は十一名。あそこに居た四名以外はすでにこの世には居ない。」

「!」

「んー、少し授業の復習をしようか。構成員は十一名。元々は“王室の影”で構成されていた。だから、国の礎と呼ばれ幻の存在とされていた。ところがある日、謀反が起きた。それにより死傷者多数の大惨事。残ったのは今日ユリアが対峙した四人だけ……と、されている。」


それはつまり……。


「生き残りが居るの!?」

「居るよ。僕も最近知ったのだけどね。ユリアも会ったことあるよ。」

「え……?」


お父様がニコリと笑う。


「皇太子は良い側近をお持ちだね。」


え、嘘。

まさか。

でも……あり得ない話ではない。


「…………殺したこと、恨まれるかしら。」

「心配ないよ。殺されたいと願われれば、応えるしかない。あそこで断って、民間人を殺されれば元も子もない。あの場での最善の策をとったよ、ユリアは。」

「他の三人は?」

「心配ない。ちゃんと、追いかけてきてる。」

「それって……。」

「おや、ついたね。さぁ、彼を送ってあげよう。」


あぁ、本当に。


「お父様。」

「なんだい。」

「今日、マルエラン・ディ・シエルとシノア・ワイナールが皇太子に会いに行くと別行動をしていたの。」

「そうか。」

「守護騎士の存在を(おおやけ)にするの?」

「それを決めるのはこの国だよ。僕達はただ、いつもどおり行動すれば良い。」


馬車から先に降りたお父様に手を伸ばされる。

その手を掴もうとすれば、身体ごと抱え上げられて。


「わ……っ!」


くるくるとその場で高くあげられたまま回って。


「お、お父様…!?」


ニコニコと微笑むお父様に釣られるように思わず笑い声をあげれば。


「やっと笑ったね。」

「え?」


抱きかかえられ、目を瞬く。


「笑いなさい、ユリア。」

「────」

「大丈夫。夢は、叶う。願いを叶えるために妥協せずに今日まで過ごしてきたんだ。王命も卒業式を待たずして終わらせられるように手を打っている。」


ゆっくりと降ろされ、地面に足がつく。


まだ、ふわふわと浮いているような気がする。


「やりたかったことは、もっと大きな目標だろう?」

「…………うん。」

「だったら、歩みを止めてはいけないよ。今回の件は、僕が対処する。だからユリア。今、最もやるべきことをする準備をしなさい。」

「今最もやるべきこと……。」


私達二人の前に降り立つ三人の覆面。

それは、さっきまで刃を交えていた相手で。


「君たちの処遇を決める。ついておいで。」

「「「ご随意に。」」」

「ユリア、テストの結果が出たら長期休みだろう。娯楽施設の襲撃があると聞いている。」

「さすがお父様。耳が早い。」

「だけど、僕の代わりに領地に戻ってくれるかい。こっちで処理を終えたらすぐ戻る。」

「わかったわ。今はウイリアムが?」

「あぁ。」


私もロイドも居ない領地を治めるのは次男であるウイリアムなのは当然。

だけど、私達にとっては別の意味を持つ。


「今から戻るわ。」

「そう急がなくて良い。汗を流す時間くらいはちゃんと稼げるから。」

「……それもそうね。じゃあそうする。ありがと、お父様。」


お父様をその場において、先に邸に入る。


「お帰りなさいませ、お嬢様。」

「ただいま、セバス。数日邸を空けるわ。お父様が代わりにココに残るから。ロイドも居るし心配ないと思うけど。」

「かしこまりました。では、荷造りをしておきましょう。」

「お願いするわ。」


ヒロインが殿下たちと一緒に居た。


強制的にゲームのシナリオ通りにするつもりか?

それとも、殿下との好感度が思ったよりも上がっている?


どちらにせよ、ヒロインが悪役令嬢と一緒に居るのは危険だ。


「お帰りなさいませ、お嬢様。」

「ただいま、ガゼル。変わりない?」

「はい。お嬢様は……少しお疲れですね。後でソフィアさん特製の薬膳茶をお持ちいたします。」

「ありがとう。」


必要なものを手に浴室へと向かう。

一人の空間で、急いで入る必要もないのは随分と久しぶりだ。


「…………ふぅ。」


シャワーノズルをひねれば水音が浴室内を満たす。


血の匂いを消すように洗う。


「…………っ。」


でも、何年分もこびりついた血の匂いは消えてくれなくて。


洗っても、洗っても、取れている気がしなくて。


「ふぃ〜、あったかい……。」


どれだけ良い香りのする入浴剤を入れて湯船に浸かっても、染み付いた匂いは消えない。


「血なまぐさい、ね。」


そんなの、言われなくてもわかっている。


こればかりはモブキャラとして生きている私が背負うべき(ごう)だろう。


それよりも今はヒロインだ。


なぜ、殿下たちと?


お嬢様と殿下は長期休みの計画の打ち合わせ兼公務で王城へ向かっていた。

レオナルド様は護衛騎士として私と二人を追いかけていた。

シノア様は殿下の命令で皇太子の元へ向かっていた。


ヒロインが合流したのは私が馬車を飛び降りてから。


「…………偶然にしては出来すぎている。だから、偶然なんかじゃない。」


彼女は今日あそこで私達が狙われることを知っていた。

狙いが私だという割に、襲撃が大掛かりだったのも気になる。

狙われる可能性が高いのはマリア・セザンヌとクロード・カルメ。

黒幕たちが狙うならマリア・セザンヌだろう。

この世界のメインヒーローを亡き者にするメリットがない。

それこそ、ラチェット・カルメーラが王位につくのを諦めていない連中だけだろうし…………あれ、可能性として無くはないな。


当の本人は王位継承権を復活させる気も無い上、クロード・カルメを絶対的に支持しているし商会長としてクロード・カルメの治世を支えると決意されているけど。


それに、今は諸外国に拠点を置けるように絶賛奮闘中だ。


「……て、ダメだ。のぼせた。」


浴室を出れば、邸の中に漂ういつもよりも緊張した空気で。


「お父様って、当主なのよねぇ……。」


わかってはいるけれど、邸の中で緊張感があるのはなんとなく、しんどい。


髪を乾かして気配のする方へと向かえば。


「疲れはとれたかい、ユリア。」

「うん。それより、どうしたの、この緊張感。廊下まで届いてるけど。」

「あはは、僕が久しぶりに帰ったからね。こうして会うのは面接の時以来だから緊張してるみたいだ。」

「あぁ、なるほど。ユミエル、ガゼル。馬の用意してきてくれる?」

「は、はい!」

「かしこまりました。」

「お願いね。」


緊張した面持ちで部屋を出ていく二人を見送り、お父様に向き直る。


「それで?あの覆面三人衆は?」

「自分たちで葬送するって、連れて行ったよ。そのまま皇太子に会うように指示を出したから、当分は会うこと無いだろうね。」

「良いの?丸投げして。一応、王国の民でしょ。」

「良いんだよ。それより、コレ。今、領地でウイリアムが手掛けている問題の一部。」


書類を一式渡されて、目を通す。


随分と改革したと聞いていたのに、問題は山積みね。

まぁ、そう簡単に無くなる問題でもないけれど。


「ラチェット様は?」

「彼は諸外国へ出ているから忙しいんじゃないかな。必要なものは全部領地に届いてるから、心配はいらないよ。」

「…………あれから帝国は本当におとなしいの?」

「さぁ、どうかな。」


笑っているのに、目が全然笑ってない。


「戻ったら()()()からになりそうね。」

「頼んだよ、ユリア。」


資料をお父様に返せば、扉がノックされて。


「お嬢様、馬の準備ができました。」

「ありがと。じゃあ、お父様。行ってきます。」

「行ってらっしゃい。任せたよ。」

「任されました。」


さて、予定外に戻ることになってしまったけど……仕事はきっちりとこなさないとね。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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