忍び寄る影 Sideヒロイン
少し遡ってヒロイン視点
初めてのテスト。
あらかじめ答案用紙をもらっていたから、丸暗記するだけだった。
それだけで良いテストだったのに、張り出された順位は二位。
ヒロインである私の名前が攻略対象でもないモブキャラの下にあった衝撃ったらないわ。
「それで?ココは何。」
「フォッフォッフォッ。ココは修道院じゃよ。」
「修道院……。」
あぁ、近い未来マリア・セザンヌが入る場所ね。
ふーん?
思ったよりもキレイな場所ね。
「もっと汚いとこかと思ってたわ。」
「ココは人手が居るからのぉ。だが、見掛け倒し。所詮は修道院じゃよ。孤児や犯罪を犯した者がおくりこまれる更生施設。クズじゃよ。」
「良いの?そんなこと言って。」
「フォッフォ。」
笑って修道院の扉を開く。
コイツの言う通りに色々としてきたけど……、本当にあの悪役令嬢を陥れることができるの?
まぁでも?
シナリオ通りに生徒会に入ることは決まったし。
あとは、殿下を攻略するだけ。
殿下攻略に必須の誕生日パーティーのイベントはもう招待が決まってるし?
あとは、小さなスチルイベントをこなせば問題なし。
全部のイベントスチルがなくても、クロード様のルートに入れるってことは経験済み。
「行くぞ。」
「!」
シスター服を着たオバサンとの話が終わったらしい。
「どこに行くの?」
「ココには、人員確保で来てるんじゃぞ?手ぶらで帰る理由がないわい。」
「ソレってココじゃないとできないの?」
「言うたじゃろ?ココは都合が良いんじゃよ、色々とな。」
ニヤリと笑う後ろ姿を追いかければ、数多くの大人がいる空間について。
「うむうむ、皆元気で何よりじゃ。」
独り言のように呟く。
「ふむ……。」
「何考えてんのよ。」
「誰でも良いわけじゃないということじゃよ。」
そう言って二人で窓拭きをしている男たちに近づいていく。
「ちと良いかの?」
「はい、なんでしょ────」
「ヌシら、ワシの頼みを聞いてくれんか?聞いてくれた暁にはココから出してやる。」
男二人が目を見開いて。
顔を合わせて目をパチパチと瞬く。
そりゃそうね。
何言ってんだこのジジイって思うに決まってるわ。
「嫌ならほかを当たるしかないのお。どれ、他にも声をかけてくるとするか。」
男たちに背を向ける。
「ま、待ってくれ!」
「その話、詳しく聞かせてくれ。」
ニヤリと口角をあげ、私に向かって。
「のう?扱いやすいんじゃよ、ココの連中は。」
と。
「そうか、そうか。では、向こうで少し話をしよう。何、心配はいらん。シスターの許可は得ておる。」
男二人を連れて着た道を戻っていく。
「はぁ、やっとだな。」
「あぁ、やっとだ。」
ん?やっと??
ジッと見るけれど、男たちはただ素直に従っていて。
なんか、気持ち悪い。
まぁ、なんでも良いけど。
私がクロード・カルメという最上級の男を捕まえるために必要なことだって言うんだから。
モブキャラの犠牲くらい。ね?
「おぉ、そうじゃ。忘れるところじゃった。」
「?」
「次の狩猟大会に、コレを用意しておいてくれんかのぉ。」
紙切れに書かれたソレに眉間を寄せる。
「ちょっと。いくらなんでも急すぎじゃない?それに、会長が許可しなきゃ私には何もできないわよ。」
何より副会長が素直に従うとは思えない。
私に滅ぼされる悪役令嬢のくせに生意気なのよね。
「何、そんなの顧問の先生に相談すればどうとでもなるわい。」
「…………わかった。」
顧問のマーシャル先生は幸い攻略対象だし、私に対する好感度は悪くない。
確かに、どうとでもなるかも。
「でも、コレが何の役に立つわけ?」
「フォッフォッフォ。その時がくればわかる。」
ニヤリと不気味にほほ笑む姿に悪寒が走った。
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