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日常の変化

帝国の人間と言うだけで人気者扱い。

ソレは良い。

だけど、こんな毎日飽きることなく囲まれることってある?


まぁ、それもこれも攻略対象たちが全員生徒会の引き継ぎ業務で忙しくしていて捕まえることができないというのが理由なんだけど。


殿下にはお嬢様が居るから、遠慮する人たちも少なからず居る。

もちろん、ヒロインのように日々めげずに声をかけに行ってる生徒も居る。


監視するようにとは言われているけれど、ずっと一緒に居られるわけじゃない。

何より、何もするつもりが無い相手をずっと見ていても正直時間の無駄だ。


アルベルトがついてるし、私はお嬢様のところにでも行こうかな。

そろそろ生徒会の業務も終わる頃だし。


「どこに行かれるのですか、ユリア。」


ちっ、目ざといな。


「マリア様のところです。」

「ご一緒しても?」


あくまで紳士的。

貼り付けられた笑顔はいつもどおり。


「えぇ、構いませんよ。一緒に行きましょうか。」

「ありがとうございます、ユリア」


ニコリとほほ笑むと輪を抜けて近づいてくる。


「囲まれるのが嫌ならそう伝えればよろしいのでは?」

「王国の皆さんと仲良くできるのは、本懐を遂げることにつながります。」


その言い方に引っかかりを覚える。


本懐を遂げることにつながる、ね。

何が一番の狙いなんだか。


「そうですか。それがマリア様を皇太子の婚約者にするなどと言う戯言でない限りは死なずに済むでしょう。」

「ご安心ください。冗談でもそんなこと言いませんよ。何より彼には思いを寄せる人が居るので。」


その発言に思わず目を見開く。


「嘘。」

「嘘じゃありません。」

「あの戦闘狂が恋してるの?」

「戦闘狂じゃないです。」

「いやいや、戦闘狂でしょ。」

「はぁ……では聞きますが、なぜそのように思うのですか?」

「戦場で顔を合わせるといつも笑ってるわよ、彼。」

「それは…………。」

「戦闘狂でしょ、アレ。」


血に飢えた獣までは言わないし、誰も殺さないように指示を出してくれてるのか死人は減った。

それでも皇太子自身が戦場に立つ姿を見ると、私達の初陣を思い出す。

ロイドの額に消えない傷をつけたあの日を。


「剣を交えながら表情観察ですか。いやはや、素晴らしいですね。興味本位で聞きますが、彼、そんなに表情に出てるのですか?感情が??」

「アレが笑顔じゃなかったら何って言いたくなるくらいには笑顔よ。」

「へぇ……。」

「…………。」

「いえ、やっぱり素晴らしいなと思いまして。コースター辺境伯は。どうですか?皇太子とお茶の席でも設けましょうか。」

「その頃にはあの施設も閉鎖かしら。」

「やれやれ、抜け目のないお姫様だ。」


当然だ。

帝国(そっち)のわがままで娯楽施設の内情探るのをやめているのに、私を戯れにお茶に誘うならさっさと解決して欲しい。


こっちは、家族の生命(いのち)がかかってるんだから。


「マリア様!」

「!あら、ユリア。」

「生徒会の仕事は終わりましたか?」

「えぇ。何かあったの?」

「マリア様、今日は殿下のご公務でしたよね?一緒に行っても良いですか?」

「それはもちろん。ね、クロード様。」

「あぁ。ラチェット義兄上から聞いている。商会から遣わされるのはユリア嬢だったか。」

「はい。お手柔らかにお願いしますね、お二方。」

「こちらこそ。」


殿下が貼り付けた笑みで私を見る。

ふむ。


「生徒会の仕事はいかがですか?順調ですか?」

「えぇ。滞りなく進んでいるわ。ね、クロード様。」

「あぁ、そうだね。マリアのお陰だよ。ありがと、マリア。」

「当然のことをしたまでです。」


なるほど。

また何かやったな、ヒロイン。


「殿下、マリア様無しじゃ生きていけないですね。」

「あぁ。マリアはなくてはならない存在だからな。」

「く、クロード様……!」

「殿下の惚気話は、そのままマリア様へお伝えください。邪魔者は消えますので。」


くるりと身体を翻して、手首を掴むとそのまま廊下を進む。


「積極的ですね、ユリア。」

「あの二人の間に貴方が邪魔だと判断しただけよ。」

「横恋慕なんてしないですよ。」

「皇太子は、でしょ。貴方じゃない。」

「惚れる可能性があると?」


まるで心外だとでも言いたげな表情にこっちが、そんな顔をしたくなる。


「殿下とマリア様の相思相愛っぷりを見て興味が湧かないとも限りませんので。」


そう応じれば、なんとも言えない顔をする。


「あぁ、それから。」

「…………。」

「慣れない真似はしないほうが良いわよ。外行きの仮面なんでしょうけど、貴方にへりくだった話し方は似合わないから。」

「────」


目を見開いたかと思えば、お腹を抱えて笑い出す。

突然のソレに驚く私なんてお構い無しで。


「……はぁ、笑った。やっぱり良いな、お姫様は。」


目元を拭ってそう言葉にする姿に眉間を寄せる。


「褒められてる気が全然しないんだけど。」

「そうか。それで、商会の話を城でするなら立ち会っても良いか?」

「ダメに決まってるでしょ。」

「それは残念。」


対して残念そうでもない様子でニヤリと笑った。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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