公爵令嬢とお茶を
生徒会の引き継ぎなどで、日々忙しそうにされているお嬢様たち。
どうやら役職は成績順で当てはまるらしく、会長は殿下、副会長がお嬢様となったらしい。
まぁ、原作通りだ。
だからおそらく他の役職も原作通りだろう。
問題はヒロイン。
「一年生が二人入ったと聞いていますが、どの役職に?」
「会計と書記よ。シノア様とレオナルド様がついていれば、仕事に不安はないだろうとクロード様が。」
わーお。
まさか、殿下自らヒロイン遠ざけちゃいましたか。
「いきなり忙しいのも大変だろうから、全員の補佐をさせて覚えさせてはと進言したのだけど……。クロード様が、その必要はないって言われたのよ。」
「ほう……。」
「クロード様がそんなふうに言われるのが意外で少しびっくりしたわね。」
「確かにソレはびっくりですね。殿下ならお嬢様の意見を全肯定して丁寧に教えそうなのに。」
「そうなのよ。前にクロード様に迷惑をかけていた女子生徒だから、クロード様も警戒してるのかしら?」
「かもしれませんね。」
現在サロンでお嬢様と一緒にお茶をしている。
ちなみにソフィアは帝国のお客様を相手している。
アルベルトに任せるつもりだっけど、やらせてと強く願われてしまっては……ねぇ?
断る理由もないし、お願いしてきた。
「昨晩ステラさんにも相談してましたよね。なんて言われてたんですか?」
「…………。」
「……?」
「わ……。」
「わ?」
「私のことがす…、好きだから他の女性と仲良くなって誤解を生みたくないのでは、と。」
照れた顔を誤魔化すようにカップを傾ける姿にニヤニヤしないように表情を引き締める。
悪役令嬢、可愛すぎん??
「さすがステラさん。お嬢様や殿下と付き合いが長いだけありますね。そんなステラさんが言うなら、信じても良いのでは?」
「ダメよ。だってステラは私を甘やかすもの。その点ユリアは遠慮ないし失礼だから、素直な意見を聞けるかと思ったの。」
「褒められてるんですか、ソレ。」
「褒めてるわよ、ものすごく。」
お嬢様が力強く頷く。
本当に悪気はなく、私を失礼な人だと思っているらしい。
ソレが失礼なことだと思うのだけど……前世の感覚のせいかな?
「ステラさんの予想はほぼ正しいと思いますよ。少なくとも殿下は、お嬢様のことを第一に考えられてますから。」
「でも……、ほぼ?」
「えぇ、ほぼ。」
ニコリと微笑み、カップを傾ける。
うん、公爵家御用達の茶葉はやっぱり美味しい。
「殿下はどうやら、問題解決に意識を割かれると大切なことを見落とすタイプのようですから。」
「…………。」
「まぁ、そんなことは私に言われなくてもご存知でしょうが。」
「…………でもそこが、クロード様の良いところよ。」
「えぇ、そう思います。」
何を犠牲にしてでも国のために動けるところは、国王に必要な素質だと思うから。
「そうやって殿下を陰ながら支えて応援できるのもお嬢様だからだと思いますよ。」
「ユリア…………。」
「お嬢様ならわかるんじゃないですか?一年生に対する殿下の対応の意図が。」
「クロード様の、意図…………。」
「…………。」
「……そうね。ありがと、ユリア。覚悟が決まったわ。クロード様に確認してみる。」
「どういたしまして。」
「お礼に今度美味しいお菓子でも買ってくるわね。」
「ありがとうございます。楽しみにしてます。」
お嬢様が用意してくれるお菓子は美味しいから楽しみだなぁ。
公爵令嬢という立場のおかげか、お嬢様は目利きどころか経済力もあるため美味しいものを手に入れて来ることが多い。
「ユリアは、大丈夫なの?」
「私は至って健康体ですが。」
「マルエラン様のことよ。」
「あぁ……。」
マルエラン・ディ・シエル様のことね。
帝国のお客人だとは言っても、戦場で毎日顔を合わせていた訳では無い相手だからまだ心穏やかなのに。
もしかしてという思いが消えてなくならない。
「敵意はないですし、今のところは大丈夫ですよ。お嬢様には指一つ触れさせませんから。」
「悪い人には見えないのにね……。」
「まぁ、彼は皇太子側の人間ですからね。」
私達にとっての脅威は皇帝陛下とその一派。
彼が皇太子側の人間だとわかっている分、まだ余裕がある。
その余裕に足元をすくわれないように、気を引き締めないとね。
「皇太子側の人間だと、敵意がないの?」
その問いかけに、一つの結論にたどり着く。
「お嬢様、帝国の情報を殿下や公爵様にもらえてないのですか?」
苦虫を噛み潰したような表情に思わず頷く、
なるほど、深窓の姫君だわ。
「そういうことなら、私から伝えられることはありません。」
「ユリア。」
「お嬢様は、紙の上ではない事実を知りたいとおっしゃいました。その言葉がとても嬉しかったです。だからこそ、お嬢様には公平な目で見聞きして欲しいです。」
何色にも染まっていない公爵令嬢。
この世界の悪役令嬢。
プレイしてるときの貴方は悪役令嬢にふさわしい情報収集力と行動力を持っていた。
今でも対ヒロインなら充分力を発揮しているけれど。
「私たちの言葉は、偏ってますから。」
「でも、マルエラン様の監視役を任されているのはユリアよ?」
「はい。だからこそです。私が彼一人に意識を割いている間に情勢は動きます。」
「!」
「お嬢様はお嬢様のやり方で殿下を支えてあげてください。情報収集はセザンヌ公爵家の力をもってすれば、数日ですべて集まるでしょう?」
「当然ね。貴方がそこまで言うのなら良いわ。クロード様も何かコソコソと調べ物をしてるみたいだし。私は私で調べることにするわ。」
「さすが。それでこそお嬢様です。」
「ありがと、ユリア。今度おすすめの茶葉を用意しておくわね。」
「ありがとうございます!頑張って働きますね!」
「全く……。調子いいんだから。」
呆れられるけど、気にしない。
だって悪役令嬢おすすめの茶葉よ?
家宝にしてもおかしくない代物よ?
お嬢様、この王命が終わってからも定期的にプレゼントしてくれないかなぁ。
今度頼んでみよっと。
読んでいただき、ありがとうございます
感(ー人ー)謝




