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隠しイベント?

コポコポと紅茶を注ぐ音が耳へと届く。


「非公式のオークション、ですか。」

「えぇ。」


お嬢様が頬に手を添えて、息を吐き出す。


「場所も開催日時もわからない非公式な催しで、参加者も不明だそうよ。」

「よくソレで非公式のオークションがあるとわかりましたね。」

「なんでも、仮面舞踏会が開かれている日にオークションが行われているっていう情報だけは教えてもらえたって。」

「仮面……舞踏会……?教えてもらえた……?」


アレ、なんかソレ……知ってるような……。


「ユリア?」


どこだ?

どこでソレを知った?


「なんでもありません。その話をするために、ラチェット様はわざわざ?」

「クロード様と娯楽施設を堪能するために立ち寄られたそうよ。今頃お二人仲良くカジノじゃないかしら。」

「カジノ……。お嬢様は一緒に行かなくて良かったのですか?」

「あぁいう場所は危ないからとクロード様が。」


それで大人しく引き下がる辺りが良い子というか、悪役令嬢というか……。

ヒロインなら強引に駄々こねて一緒に行ってるところだ。


「それに、たまには婚約者(わたくし)という足枷なく動かれたほうが、気分転換になるでしょう。」

「お嬢様……。」

「お嬢様は本当、良い子ですねぇ。」

「?」


不思議そうな顔をするお嬢様にほほ笑む。

本当、こんな良い子なのに悪役令嬢ポジションなんだから、この世界も意地悪ね。


「ではそんな良い子なお嬢様が安心して眠れるように、少し遊びましょうか。」

「え?」

「ユリアさん、何するつもりですか?」

「そんな警戒しなくて良いですよ。本当にちょっとしたお遊びです。」


部屋に備え付けられていた立派な灰皿と花瓶、それからフォークを眼の前に並べる。


「侵入者相手に、どの武器を手に取りますか?」

「…………。」

「敵は近接武器しか持っていないこととします。」


お嬢様とステラさんが真剣な目で私の並べたソレらを見る。


「どう思う、ステラ。」

「過去の経験上、この中だと灰皿が妥当かと。」

「そうよね……。でも私、まだこんな重たそうなものを振り回せないわ。」

「確かに、お嬢様がそんな危ない目に合わないのが一番ですが……。」


真剣に武器のなるものを見つめる。

出会った頃は、こんな物騒な質問をしたら嫌な顔をされたっけ。

だけど、今はこうして護身術の大切さをわかってくれている。

それだけで、私がココに居る意味はあったように思う。


「こんなに熟考していたら、暗殺者にグサリと殺されてしまいますね。」

「だ、大丈夫よ。咄嗟の時は考えるよりも身体が動くから。ユリアがそういうふうに訓練してくれたし。」

「そうですね。本番には強いです、私は。」


そう言いながらステラさんが花瓶、お嬢様が灰皿を手に取った。


ソレに小さく笑う。


「半分正解。」

「は、半分……ですか。」

「そ、半分。手に取ったのは各々正解の武器でした。使い慣れてますからね。でも私、この中から選べなんて一言も言ってません。どの武器を選びますかとは尋ねましたけど。」

「「!!」」

「思い込みはダメですよ、お二方。私が一番初めに言ったことをお忘れですか?身近にあるもので身を守る、です。」

「あ……。」

「お嬢様、ステラさん。貴方たちが一番初めに手に持たなけれならない武器は、なんですか?」


隠し持っていたそれぞれの武器を手に取る。

お嬢様は鉄扇、ステラさんは小型ナイフ。


「ふふ、この手に引っかかってるうちは悪い商人にも騙されそうですね。減らした訓練の回数、もとに戻しましょうか。」

「「う……。」」

「護身術の復習ですよ。セザンヌ公爵家に戻ったら頑張りましょうね。」

「……お手柔らかにお願いするわ。」

「私はいつでも手加減してますよ。」


ニコリと微笑めば、二人の口角が引きつっていた。






殿下とお嬢様が今日もゆっくりと娯楽施設を見て回ると言うから、私も出かける準備をしていたのに。


「ふはははは!!迎えに来たぞ、クロード!マリア嬢!!」

「ラチェット兄上……!?」


続き部屋の向こう側から聞こえた声に動きを止める。


「……………………今、ラチェット様の声が聞こえなかった?」

「バッチリ聞こえました。」


ということで、私はお留守番。

代わりにステラさんが二人に付き従って行った。


「はぁあ、ようやく人の気配がなくなった。」


私達の寝室だから入ってくることはないけれど、ずっと王室の影が居たから。

ようやく離れてくれて助かった。


「ったく……デートの邪魔してなきゃ良いけど。」


換気のために開いていた窓を閉めようと近づけば。


「うん?」


人混みの中に見えたのはヒロインと見知らぬ翁……いや、中枢の人物だな。

ニーナとお嬢様誘拐事件のときに見かけた気がする。

モブキャラだから、あんまり意識に残ってないけど間違いなく中枢の重鎮だ。


「…………珍しい組み合わせ過ぎて、何かあるって言ってるようなものよねぇ。」


悟られないように窓を閉め、腕を組む。


与えられた選択肢は二つ。

ヒロインを追いかけるか、追いかけないか。


ヒロインを追いかけた場合、メインヒーローである殿下と悪役令嬢であるお嬢様を巻き込む可能性がある。

そしてそのままこの娯楽施設にある噂の元をたどることになるだろう。

それだけは避けたい。

というかは、ヒロインと殿下を接触させたくない。

王命のためにも。


ヒロインを追いかけなかった場合、このイベントのフラグが立つだけたって、放置という形になる。

おそらく、来年のフラグ回収になるだろう。


どっちが私の王命に支障がないかを考えると……。


「我慢、ね。」


追いかけたって意味はない。

何よりヒロイン相手に危険なことが起きないなんてことは絶対にない。

そうなると人手が足りない。


悪役令嬢よりもヒロインのほうがある意味チートだっつうの。


「お嬢様、大丈夫かなぁ。」


どうかヒロインと殿下とお嬢様が出会いませんよーに!

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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