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黒い噂

演劇の題目は、ロミオとジュリエット。

さすが乙女ゲームの世界。

全く知らない演劇だったらどうしようかと思ってたけど、普通に楽しんでしまった。


でも、なんで悲劇?


「誘ったかいがあったな。」

「…………。」


隣で私を見てクスクスと笑うこの男さえ居なければ、余韻に浸りながら殿下たちと合流できたのに。


「さっきのあのセリフ言ってくれ。」

「は?どのセリフ。」

「あぁ、ロミオってやつ。」

「アーロミオー、ドーシテアナタハロミオナノー。」

「やる気なさすぎだろ。」

「素人に何求めてんの。」


怪訝な顔をする私に苦笑する。


「愛する人の死を聞いて服毒自殺、か。報われないな。」

「…………。」

「アンタは服毒自殺するか?」

「愛する人の死を聞いて服毒自殺してたら、私は今頃ココには居なかったでしょうね。」

「…………。」

「貴方たち帝国相手に、何回毒飲まなきゃいけないのか数えたくもないわ。」

「ククク、言ってくれる。」


私の答えに満足したのか、立ち上がり手を差し伸べられる。


「らしい答えで安心したよ、()()()。」

「…………私に聞きたいことがあったんじゃないの。」

「ん?まぁな。でも、今はコレで充分。」


殿下とお嬢様が、座席に座ったまま動かない。

何かあったか……?

いや、もしかしたら私が以前お願いした一番最後に出るようにという頼みを聞いてくれてる……?


「仕事に戻るから。」

「あぁ。付き合ってくれてありがとうな。」

「こちらこそ、見つけてくれてありがとう。」

「!」


人混みにまぎれてお嬢様と殿下に近づく。


「お嬢様、殿下。」

「!ユリア……。」

「何かありましたか?」

「いいえ、なんでもないのよ。少し、この劇に感情移入してしまっただけ。」


一人手のひらを握りしめるお嬢様の手を、殿下がソッととって。


「マリア…………。服毒なんて、させないよ。」

「…………はい。」


お嬢様が悲しげにほほ笑む。

ソレに殿下はもどかしそうに笑みを浮かべる。


ふむ。


「どうやら私はもう少しお邪魔なようなので、離れてますね。」

「ゆ、ゆゆゆユリア。ソレは困るわ。私貴方の迷惑にならないように最後まで座ってただけであって……!!」

「お嬢様、普通に手を繋いで歩く時に感情を出さないようにはできたのに、そういうのはまだ慣れないんですか?」

「クロード様に慣れるなんて無理よ……!!」

「……だ、そうですよ。殿下、私離れてますね?」

「あぁ、そうだな。数秒後追いつく。」

「あの、クロードさ────」


あぁ、お嬢様。ご容赦ください。

殿下の愛で窒息死する前にはお迎えにあがりますので。


外に出れば帝国の使者はもう居なくて。

さすが、無駄がないな。


背後からの気配に、身体をずらせば。


「そこをどけ。」


横柄な態度でこちらを見下す男が居て。


「失礼いたしました。」


素早く腰を折り、大きく道を譲る。


「ふんっ、貴様のような下女を使っている家は一体どこ…………。」


侍女服に施された刺繍に目を瞠ると、誤魔化すように咳払いを一つ。


「セザンヌ公爵か。従順で素晴らしい下女だ。まぁ、こんな見た目じゃあ、何も楽しめないだろうがな。顔はまぁ、見れなくはなさそうだが……せめて身体は磨いておけよ?捨てられても拾ってやる。」


下卑た笑いをたたえ、立ち去っていく。


息を吐き出しながら身体を起こせば、ちょうどお嬢様と殿下が現れて。


「相変わらずだな、タールグナー伯爵は。」

「そのようですわね。」

「昔からあぁなのですか?」

「王都では好色家として有名よ。ちなみに御年七十二。」


気持ち悪っっ!!


「一緒に居たのは婦人ではないな。」

「…………クロード様。ユリアが笑顔を取り繕って立っている間に移動しませんか?」


……、この気配は。


「あぁ、そうだな。では、最近新しくできたと話題の店にしようか。マリアが好きそうなものがあったんだ。」

「まぁ、ソレは楽しみですわ。」

「それじゃあ移動しようか。」

「あははは!!案内は私が請け負おう!何、そう身構えるな。クロードとマリア嬢のためなら席の確保くらい容易だ。」


現れた第三者に全員が目を見開く。


やっぱりコイツかー!!

前世プレイしている時からデートのお邪魔キャラ!!

殿下が近くに来ていると言っていたから、もしかしたらって思ってたのよ!

でも、ヒロインと殿下のデートじゃないし、割って入ってくることもないかなぁとか淡い期待をしてたのよ!!


「ラチェット様……?」

「今日も麗しいな、マリア嬢。ステラ嬢以外の侍女を連れて歩いて居るのを初めて見たぞ。」

「ステラがこの後の予定を聞くのに使者として使わせてくれたんですわ。それじゃあ、私達は予定通りに戻るとステラに伝えてくれる?」

「はい。」


お嬢様の機転に従い、不自然じゃない動きでその団体から離れる。

チラリと窺い見れば、三人と護衛たちが揃って動き出していて。


「アレがラチェット・カルメーラとクロード・カルメ殿下か?」

「あぁ。どうして王位継承を辞退したのか……。充分素質もあるだろうに。」

「だが、カルメーラ卿の娘が捕まったのだろう?どこかの貴族の息子を連れ去ったと言うじゃないか。」

「縁談も次々と破談になっていたようだからな、強硬手段に出たか。」


ほんと、王都って噂話が好きよね。

まぁ、私には関係ないけど。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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