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宿泊施設

お嬢様と殿下は前世でいうところのロイヤルスイートルームに通された。

貴族御用達なので、王族専用の部屋が備え付けられているらしい。


歴代の王族がどれだけココに来ていたのかがわかる待遇だ。


「同室と聞いてちょっとびっくりしましたが……コレは完全に別部屋ですね。」


ステラさんの言っていた通り、部屋は繋がっているが二つの部屋を扉で繋いだという表現がぴったりの部屋だ。


王族の寝室が全てこんな広さなら掃除が大変そうだ。

帰ったらルナに聞いてみよう。


「お嬢様、お茶になさいますか?ご入浴の準備も整えておりますが。」

「ありがとう、ステラ。先にシャワーを浴びさせて頂戴。」

「かしこまりました。」

「では私はその間に、色々と見て回りますね。」

「お願いします。」

「部屋に入る前にも色々と確認していたじゃないの。まだ何か気になることでも?」

「お嬢様と殿下が揃っている空間で気にしすぎということはないでしょうから。」


ニコリと笑い、浴室へと消えていく二人を見送る。

そして、扉の向こう側に感じる気配の主を扉越しに睨む。


「淑女の部屋を聞き耳ですか。それとも、私に用ですか。」

「…………すまない、ユリア嬢。少し話せるか。」

「わかりました。そちらへ参ります。」


殿下の気まずそうな声に扉を開いて、部屋を移る。

さすがにお風呂上がりの姿を殿下に見せるのは早いだろう。

というか、そんなことしたらステラさんとお嬢様に殺されかねない。


「それで、話とは。」

「マリアは?」

「ご心配なさらず。ステラさんと一緒に居ます。」

「そうか。……コレを。」

「?」


随分と良い質の良い便箋だな……。

さすが王族。


開いて中を確認する。


「ココ最近、この娯楽施設で嫌な噂と怪しい連中が居ると報告が入った。」

「お嬢様を連れて帰りますか。」

「そうしたい気持ちはあるが、聡いマリアなら何かあったに違いないと気づいてしまう。」

「まぁ、そうでしょうね。」

「どうやらラチェット兄上もココの噂話は聞いてるみたいでな。近くにいるそうなんだ。」

「…………。」


嫌な予感……。


「それで、いっそのこと調査に乗り出そうかと思ってな。ココで何が起きているのか確認する必要がある。」

「せっかくお嬢様とお二人でデートしてるのに、公務にするんですか?」

「あぁ、そうだ。」


決意の硬そうな返事にため息を一つ。

こういうところ、ゲームと同じだよなぁ。

気になったところは片っ端から調べてたし。

まぁ、だからこそ、クズ石に紛れ込ませた宝石のイベントも発生させることができたんだけど。

今回のコレはゲーム本編にもなかったハズ。

つまり、未知。


「人手が足りません。」

「ラチェット兄上に頼んで商会の人間も借りるつもりだ。」

「調査する人手ではなく。何かあった時に対応できる戦闘員の人手です。」

「!」

「ラチェット様の商会に居るのはあくまで商人です。それに今回は側近のレオナルド様もいらっしゃいません。」

「護衛はついている。」

「騎士団員二名と王室の影一名で、守れると?たった数百人の施設の利用者全員を?」

「……、ソレは…………。」

「話になりませんね。」


殿下は自分とお嬢様のことしか考えて居ない。

何かあったときの対処は非戦闘員のラチェット様たちに任せるつもりだった?

非戦闘員の人たちができるのはせいぜい避難誘導だけ。

もしそこを狙われたら助けられないし、紛れ込まれて逃げ出されでもしたらソレこそ無駄な犠牲だ。


「調べるのは勝手ですが、王命を授かっている身としては了承しかねます。王太子の婚約者を守ること。その婚約者であるマリア・セザンヌを危険な場所に連れてはいけません。」

「…………そうだな、すまない。少し、気が急いたようだ。忘れてくれ。」

「いいえ。今ココで勝手に調べに行かれたとしても私は止めませんが、マリア・セザンヌとデート中に負傷されたと噂が流れれば後ろ指をさされるのはお嬢様だとご理解ください。」

「……あぁ、そうだな。」


うなだれる殿下に背を向け、部屋に戻ればお嬢様がステラさんにお茶を淹れてもらっているところで。


「おかえりなさい、ユリア。」

「ただいま戻りました。」

「何か見つかった?」

「何も見つかりませんでしたよ。さすが、王族が泊まる空間ですね。廊下には護衛の騎士団員が立っているし、このフロアは王族関係者しか出入りできないようですから。」

「フフ、それなら安全ね。」

「良かったですね、お嬢様。おかわりはいかがですか?」

「いただくわ。」


その護衛が暗殺者に負けたり、護衛自身が裏切り者で無い限りは心配いらないだろう。


周囲に怪しい気配はないし。


「そういえば、私達はどこで寝れば良いんですか?ステラさん。」

「この部屋ですよ。」

「え、ココで寝て良いの!?」


この立派なお部屋で!?


「あぁ、ですが寝台が足りませんね。ユリアさんはそこのソファでおやすみください。」


そう言って指し示されるのは部屋の隅に置かれた立派なソファ。

大人一人寝転がっても問題ない長さはあるし、硬さも……、うわっ、柔らか!!


「ちょっとステラ。流石にソレはかわいそうでしょ……て、ユリア?」

「はい、なんでしょう?」

「貴方、何してるの?」

「何って……寝れるように整えてるだけですよ。こんな立派なソファで寝かせてもらえるなんて、最高です。公爵家の寝台も立派で感動しましたが、このソファもなかなか……本当にココ私が使ってもよろしいのですか?」

「…………貴方がイヤじゃないなら構わないわ。」

「やった!」


このソファ、いくらくらいするんだろう。


公爵家の使用人としての給金で買えるかしら?


見張り台には置けなくても、詰め所のほうに置いてあげたら皆も身体痛めなくて良いかもしれない。


金貨二千枚は全部領地のために使いたいから、こういうちょっとした道具は、なるべくなら私財で買って皆に行き渡るようにしたいのよねぇ。


ラチェット様に相談して、比較的安い値段で似たような物が手に入らないか調べてもらおう。


「寝台もう一つ入れられないか聞かなくて良いのかしら……。」

「本人が喜んでるんですから大丈夫ですよ、お嬢様。」


ふふふ、領地の皆にお土産も買って帰らなきゃ。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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