ルート分岐のテスト
ヒロインが入学してから初めてのテストはマーシャル・タールグナーを攻略するために赤点をとるか、他の攻略キャラのために一位をとるかの二択だった。
だったハズ。
「さすがね、ユリア。」
「ユリア嬢に順位勝てたのは、テストを受けられなかったあの一回きりか。」
苦笑する殿下とお嬢様の眼の前には順位が張り出された掲示板。
一位、ユリア・コースター
二位、クロード・カルメ
三位、マリア・セザンヌ
四位、アルベルト・シュチュワート
五位、ソフィア・ローゼン
六位、シノア・ワイナール
九位、レオナルド・ドナウ
私達モブキャラのせいで番狂わせが起きているが、攻略キャラたちは着実に順位を上げてきている。
「はぁあああ!?」
人混みの向こう側から聞こえてきた声。
「なんで……!!なんで!ヒロインである私を差し置いて、モブキャラが一位なわけ!?入学イベントは仕方がないとしても!!赤点一つもないから、スチルイベント起きないし!!こんなことなら赤点狙えば良かった!!」
「お、落ち着いて……っ?」
どうやらヒロインが発狂しているらしい。
「姫さん、一年の方はロイド坊っちゃんみてーだぞ。」
しかも発狂相手は私の弟らしい。
「当然の結果でしょう。新入生代表も勤め上げていたし、コースター辺境伯家は将来安泰ですね。ね、レオナルド?」
「そうだな。」
レオナルド様とシノア様にヒロインが気付いたらしく慌てた様子で取り繕って、走り去っていく。
ソレを追いかける別の女子生徒。
もしかしなくても、アレはヒロインとお友達になるモブキャラ……!?
良いなぁ、ヒロイン!!
学園のお友達ができて!!
二年目もボッチ決め込んでる私と違って!!
「姉さん。」
「ロイド。おめでと、一位みたいね。」
「まぁな。そういう姉さんこそ、殿下の上に名前があるなんて、親父が聞いたら喜びそうだ。」
「お父様はよくやったねって褒めてくれるだけよ。」
「どうだか。まぁ、領地のみんなは飲む理由ができて、盛り上がるんじゃないか?」
「ソレはありそう。」
みんな、なんだかんだで宴をする口実を探しているフシがあるから。
「明日からの長期休みの予定は?」
「予定通りよ。今のところはね。」
殿下の誕生日パーティー前にちょっとした旅行へ行く。
もちろん、殿下とお嬢様のデートに付き従う形になるので、他の参加者は居ない。
アルベルトとソフィアも、領地に帰ると言っていたからロイドと一緒に戻ることになるだろう。
「ルナが居るから、ペース考えてあげてね。」
「わかってる。ソフィアが居るから、無茶な道中にはならないハズだ。」
ロイドの視線を受け止めた二人が頷く。
「この後ルナが屋敷にくるから早く帰ってあげないと。」
「だな。ロイド坊っちゃんは姫さんと戻ってくるか?」
「そのつもりだ。」
「わかった。気を付けてな。」
アルベルトとソフィアが領地に帰る前に寄りたいところがあるとか話をしながら立ち去っていく。
「殿下とマリア嬢はデートでしたよね。」
「あぁ。明後日から行ってくるよ。」
「そうですか。気を付けてくださいね。じゃあ、今日は姉と用事があるので、僕達もコレで。良い休みを、皆様。」
「あぁ、ロイド殿も。」
「ロイド、何か買い物でもあるの?」
「姉さん……あの騒ぎで皆心配してるから、顔見せてあげてほしいんだけど?」
「あ。」
そうだった、すっかり忘れてた。
私、あの後屋敷に戻らずに王命遂行のためにセザンヌ公爵家で過ごしてたから、戻ってないんだった。
話は聞いてるだろうからと思って、油断してた。
「そうね。エドワードとウイリアムの件でも迷惑をかけたし、お詫びの品でも買って帰りましょう。ロイド、荷物持ちよろしく。」
「はいはい。」
お嬢様に合図を出して、ロイドと二人その場を離れる。
今日はお嬢様も殿下と一緒に公務にはげむ予定だから私が少し離れるくらいは問題ないだろう。
ヒロインもあの調子じゃあ、生徒会に選ばれないだろうし。
殿下とヒロインのフラグの心配は……、少しマシかな。
「何が良いかしら。やっぱり、お菓子?」
「普通に今晩のご飯作ってくれたら嬉しい。」
「ソレってロイドが食べたいだけじゃないの?」
「そうとも言う。」
素直なその言葉に目を瞬いて、笑う。
私よりも高い位置にある頭をよしよしと撫でれば、照れくさそうな顔をする。
「任せなさい、好きなもの作ってあげる。」
こういうところは変わってないんだけどなぁ、全然。
本当、人の成長って早いわ……。
読んでいただき、ありがとうございます
感(ー人ー)謝




