幼馴染と作戦会議
お嬢様と殿下が二人仲良くサロンでお茶をしている頃、見張りをレオナルド様にまかせて情報交換をする。
もちろん、すぐ駆けつけられる距離には居るから問題ない。
「じゃあ、王都の邸にはウイリアムが居るのね?」
「えぇ。エドワード坊ちゃんを追いかけてたらしいんだけど、途中で見失ってしまったって。それで、十中八九行き先は王都だろうと読んで、邸に来たみたい。」
「ちなみに、王都に入る前に領主様には連絡してるみたいだから騒ぎにはなってねーと思うって。」
あぁ、やっぱりか。
エドワードとウイリアムだけが王都に来たことなかったから、エドワードは家出してきたと言っていた。
頭の良いウイリアムがそソレを利用しない理由がない。
「ロイドはなんて言ってた?」
「呆れてたな。」
「呆れてたわね。」
まぁ、呆れるわよね普通に。
まさかそんな理由で王都に来るなんて思いもしなかったし。
近い将来、嫌でも王都に来ることになるのに。
「ねぇ、ユリア。やっぱり、建国祭のこと黙ってたから家出してきたんじゃない?」
「ん?坊っちゃんたちに建国祭の話してたのか?」
「話してないけど、お父様がこの時期に王都に行くことが多いのは知ってるから。何かあるって言うのは気づいてると思う。」
私も、本編突入前なら声をかけたんだけど……。
「今年はイレギュラー要素が多かったから。」
「あぁ……。そういや公爵令嬢の事件とか色々あったから自粛したんだっけ?」
「パレード中止で正式な婚約発表だったしね。国王夫妻も楽しんでたみたいだけど。」
「それもあるんだけど、今回我が領から誰にも知られずに婚約発表する時間にあわせてお嬢様を城へ連れて行くという大胆不敵な作戦を企てたから。」
「あぁ……。アレって、俺達も終わった後に知らされたんだよなぁ。」
「そうそう。ユリアがお使い頼まれてるからって馬車降りた後にあんな騒ぎがあったから……。」
二人が恨みがましい目でこっちを見てくるから、苦笑を返す。
だって、仕方がない。
建国祭のための見回りもお嬢様たちの行動ルートも全部、中枢の貴族たちが隠したのだから。
おかげで私のお願いも通らなかった。
ま、だからコースター辺境伯の領地から建国祭に間に合うように馬車を走らせて殿下と合流なんて無謀な計画を実行することになったんだけど。
いやぁ、この計画知ってるのが両陛下と殿下、お嬢様、私だけというね……。
ソフィアやアルベルトにも言っちゃダメだったし。
聞かされた時は流石にびっくりしたわ。
さすが悪役令嬢と思える計画だったけど。
「まぁ、終わった話だし。ね?そんなことよりウイリアムとエドワードよ。」
「エドワード坊ちゃん連れて王都の屋敷に寄るか?」
「んー、それも考えたんだけどやっぱり、二人を城下に連れて行くのが手っ取り早いかなって。」
「え。」
「それはそうだろうけど……。」
「そんな顔しなくても大丈夫よ。ちゃんと考えてるし、何より私の弟のことだもの。」
「…………それもそうね。じゃあ坊っちゃんたちのことはユリアに任せるわ。」
「任された。」
「お、じゃあさ!姫さんたちだけで王都の街、出かければ良いじゃん。」
「え。」
「それ良い!そうしなよ、ユリア!」
「いや、私は…………。」
王太子の婚約者を守る王命を授かってるわけだから、あまり勝手なことはできない。
領地に帰るという私のためにお嬢様がついてきたわけだし。
というか私が領地に帰りたいって相談したからこそ、建国祭の計画を思いついたみたいだったからね……。
これ以上、中枢の人たちを怒らせる……、悩ませる行動をさせるわけにはいかない。
マリア・セザンヌは未来の国母なのだから。
「大丈夫!俺に良い考えがある!」
アルベルトが楽しげに笑った。
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