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風来坊、三男

我が弟のまさかの発言に迷わず拳を振り下ろした私をなだめたお嬢様。


そして、お嬢様のはからいで今少しだけ別行動をしている。


私の代わりにガーディナ様が傍に控えているからしばらくは大丈夫だろう。


「エド、一体どういうこと?」

「そんなに怒らないでよ。言葉のままだよ。」

「どうして家出して、セザンヌ公爵家(ココ)に来たの?王都の邸があるでしょ。」

「王都の邸だとすぐに足がつくでしょ?それに、ココにはユリア姉が居るもんね!」

「そんな可愛く言ってもダメ。」

「ちぇ。」

「家出したこと、お父様たちは知ってるの?」

「うん!家出してやるって言って家出してきたから。」

「…………はぁ。」


ロイドが王都で学園に通ってるから、家の守りが薄くなってるのはわかっていた。

アルベルトとソフィアも私の手伝いで王都にいるから、領地全体の守りが薄くなっているのも。


「ウイリアム兄が怒って追いかけてきてたけどちゃんと()いたから大丈夫!」

「何も大丈夫じゃないわよ……。」


頭を抑えて息を吐きだす。

ウィリアムのストレス数値がかなりあがってそうで心配だわ。


「家出の原因は?」

「俺とウイリアム兄以外は王都に行ったことあるんだぜ?ずるいと思わない?」

「…………まさか、あなた。」

「ニシシ!だから、家出してきた!大丈夫!ユリア姉に迷惑かけないし!だから、ちょっとの間ココに置いてください!!」


この通りと拝んでくるエドワードを黙って見下ろす。

ココにエドワードが居るってことは追いかけてきていたウイリアムも一緒に王都入りしてる可能性が高い。


ウイリアムはエドワードとは違って王都の邸に向かっていることだろう。

明日にでも学園でソフィアかアルベルトから情報が流れて来るかもしれない。


「ね、エドワード。あなたが王都(こっち)に来たら領地の守りが薄くなるってわかってる?」

「帝国なら最近見てないから大丈夫だって。」

「敵が帝国だけじゃないことを、学んでると思うのだけど。」

「大丈夫。俺一人抜けたところで対した痛手にはならないって。俺は領地の皆よりは強いけど、そんなに強くないし。」

「エドワード。あなたの逃げ足には皆が信頼をおいているんだけど?」

「ユリア姉たちには勝てないけどね。ねー、良いでしょ?王都ちょっと堪能したらすぐ帰るからさ。」


キラッキラな瞳を向けてくる三男坊。

わかってる。

我が弟の中で一番あざとい男だって。


けど、けど……!!


「はぁああああ。お嬢様が許可出したらね。出なかったら大人しく帰りなさい。」

「やったー!ありがと、ユリア姉!!」


大好きと声をあげて抱きついてくる。

こういう時だけ、調子が良い。


「働かるもの喰うべからず。わかってるわね、エドワード。」

「もちろん!」

「はぁ。じゃあ、お嬢様のところに戻りましょ。ちゃんと話をしないと。」

「はーい!」


エドワードを連れてお嬢様のところへと戻れば、ステラさんとガーディナ様がまたもや言い合いをしていて。

あの二人は喧嘩するほど仲が良いという域を軽く超えてる気がする。


「ユリア。話はできたの?」

「はい。それであの、お嬢様。」

「良いわよ。」

「え。」

「良いわよって言ったのよ。」

「まだ何もお願いしてませんが……?」

「弟の滞在を認めてくださいでしょ?あなたの考えそうなことよ。私は構わないわ。客間が空いてるからそこを使ってもらいましょう。」

「そこまでする必要はないですよ。」

「あら。コースター辺境伯の御子息を、野宿させるわけにもいかないわ。セザンヌ公爵家としての矜持があるもの。そういうわけだから、エドワード様。好きなだけ滞在してください。」

「ありがとうございます!へへへ、ユリア姉より話がわかる人だね!さすが、王太子の婚約者だ。」

「調子に乗らない。ほら、そうと決まれば手伝って。」

「ん?隠れてるヤツ捕まえるのか?」

「王室の影だからダメ。」

「ふ〜ん?それで殺気がないんだな。お嬢様は大変だな。四六時中監視されてるなんて。抜け出したい時は言えよな、お嬢様!俺、兄弟の中で一番抜け出すの上手だから!」

「エ〜ド〜?」


調子に乗るエドワードに詰め寄れば、一目散に庭を駆けて行く。


「たく…………。」

「ふふふ、仲が良いわね。」

「まぁ、悪くはないですけどね。」

「家出してきたって言ってたけど、大丈夫なの?」

「一応領地には後で手紙を出します。問題は私達が学園に行ってる間です。」


エドワードが大人しく課題をこなすとは思えない。

領地に居る時も、どれだけバレずにサボれるかと考えていたのだから。


「まぁ、やる気はないけどバカじゃないので心配は必要ないか。お嬢様、そう長居させるつもりはないのでご安心ください。」

「そんな心配はしてないわよ。ただ、彼を危険な目に合わせるのではないかと心配だわ。」

「お嬢様……。」

「お嬢様、それこそ不要な心配かと。あの()()()()()()()()()()()()()()で、()()ユリアさんの弟ですよ?普通じゃないに決まってます!」


ステラさんの言葉は本当清々しいなぁ。

本人は無意識なんだろうけど。


「でも、家出って心配ですね。ユリアさん、領地の方で何かあったりとかは?」

「心配ありがとうございます。ですが、三男坊が家出したということ以外、特別なことはありませんから。」


王都を一日でも堪能したら帰るだろうし。

しばらくは様子見かな。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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