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剣術大会予選

剣術大会の予選。

ヒロインが殿下だけを応援している。

まぁ……お嬢様は、さっきまで殿下を独占して応援してたみたいだけど。


殿下に渡すものがあるって、少し離れたところに行ったお嬢様が真っ赤になって帰って来たんだよ?


もうそりゃあ、二人の恋を応援する身としてはニヤニヤもんよ。


「マリア様、真っ赤ですねぇ、暑いですか?日陰行きます?」

「だ、大丈夫よ。それにココも日陰だしっ!?」


お嬢様が不自然なほど過剰反応する。


殿下となんか良いことあったのね。

幸せそうで何よりだわ。


「アレ?マリア様、その痕…………。」

「!!」


ソフィアの指摘にますます真っ赤になるから。

ソフィアがいたずらを思いついた子供みたいな顔をするから、パシンッとその頭を叩く。


「マリア様、殿下の出番までもう少しだけ時間ありますし、ベンチに座りませんか?」

「そ、そうするわ。」


首筋を隠すように襟元を整えるお嬢様。


「大丈夫ですよ、マリア様。」

「!」

「それより、喉乾いてませんか?」


私がティーセットを出せば目を瞬いて。


「いつの間に……。」

「マリア様の優秀な侍女さんが、お嬢様にって。」


ニコリと笑い、底が銀になっているカップに注ぐ。


「ねぇユリア。」

「はい。」

「あそこで参加してるの、ロイド様では?」

「えっ。」


視線を向ければ、木刀の振りを確認しているロイドが居て。

目が合ったかと思えばニヤリと笑う。

そして、送られてくる合図に口角を引きつらせる。


「あー……マリア様。」

「何?」

「試合見えづらいかとは思うのですが、しばしご辛抱を。」


お嬢様をベンチに座らせたまま守るように前に立てば。


スタートの合図とともに数人の参加者が飛んできて。

お嬢様に当たらないように対処する。

もちろん、当たらないと確信している人に関してはそのまま吹っ飛んでもらった。


「相変わらず派手だねぇ、ロイド坊っちゃん。」

「まぁ、木刀折ってないし、手加減はしてるでしょ。」

「そーだろうけど。」


ロイドは何食わぬ顔をして舞台から降りるとこっちに近づいてくるから。


「見てた?」

「見てた。ロイド、木刀以外への配慮が足りないわ。マリア様にあたってたらどうするの。」

「姉さん居るから大丈夫かなって。それに木刀折ってないし骨も折ってない。」

「まぁ、アレで折れてたなら受け身もまともに取れない人が悪いって話ではあるけど。」

「だろ?」

「はぁ……まぁ、本戦出場おめでと、ロイド。本番ではレオナルド様や殿下も居るから気をつけてね。」

「大丈夫だろ。」

「油断してると足元すくわれるわよ?」

「決勝残って姉さんとやんのは俺だ。」


ロイドが持っていた木刀を肩に担ぐ。


「姉さんと手合わせすんの、久しぶりだから楽しみだ。」

「こらこら、他の出場者倒してからよ。」

「アルベルトもソフィアも出ねーのに、俺が負けるやけねーじゃん。親父が出るならともかく。」

「そりゃあ……まぁ、ね。」


お父様にだけは未だに勝てない。

長期休みで帰省した時に、久しぶりに手合わせしたけど勝てなかった。

剣術も、体術も。


何一つ、勝てなかった。


「それより、次殿下だぞ。」

「!マリア様、前へ行来ましょ、前へ!殿下を大きな声で応援しましょう!!」

「お、大きな声……。そんな、は…は……っ。」

「は?」

「恥ずかしいですわ……!!」


顔を真っ赤にして覆い隠してしまう。


うん。


可愛いかよ。


「もー!マリア様!大きな声は恥ずかしくないですよ!ほら、クロード殿下がこっち見てます!」

「…………っ。」


手をどけたお嬢様の視線の先にはこっちを見てる殿下。

そしてそれを温かく見守る体勢になってる剣士たち。

心做しか二人の間に立っていた人たちが身体をずらしてる気がする。


「く、くろ……っ。」

「クロード殿下ぁぁあ!!頑張ってぇぇぇえ!!!!」


ヒロインの声、めっちゃ届くやん。


お嬢様の声、かき消されたやん。


「……………………勝って。」


ボソリとつぶやくようにこぼされたお嬢様の声援。

視線を向ければ真剣な表情で頷く。


良かった、ちゃんと届いたらしい。


口の動きでも見てたのかな?


お陰でお嬢様が嬉しそうな顔で笑……え?

お嬢様が、他人前でちゃんと笑った……?


驚く私に、ハッとしたように表情を改めるお嬢様。


同じ笑みなのに、大衆向けと殿下向けじゃ雲泥の差がある。


審判の合図で斬り込む殿下の動きは、レオナルド様と遜色ない。


「へぇ、やるな殿下。結構強そう。」

「ね。レオナルド様とよく稽古してるらしいわよ。」


ヒロインの声援かお嬢様の声援のおかげか。

危なげなく本戦へとコマを進めた殿下。


「レオナルド様もさっき本戦出場決めたし、見る試合はないかな。ロイドはどうする?」

「俺はもう少し見ておく。王都のレベルが知りたい。」

「そう?」

「ロイド坊っちゃん、まだ帰んねーの?」


レオナルド様とアルベルトが近づいて来て。

どうやら、殿下とレオナルド様は帰るらしい。

もちろん、お嬢様と一緒に。


「俺はもう少し見てる。」

「お。なら一緒に見ようぜ!領主様以外の剣筋なんて見る機会ねーもんな!」

「じゃあ、私は先に帰るから。」

「おう!じゃあな、姫さん!」


去年、同じように剣術大会に出場して予選で不正を疑われた。

でも、ロイドには何も言わない。

当然のことなのかもしれない。

同じ貧乏貴族のコースター辺境伯の子供なのに、性別が違うだけで、扱いが変わる。


「明日の本戦も応援に来てくれるかい?マリア。」

「もちろんですわ。」

「決勝で私とユリア嬢が戦う時、マリアはどっちを応援するんだい?」

「もちろん、クロード様ですわ。」

「!」

「ユリアは失礼な子ですので、痛い目に合わせてくださいな。私の言う事は全然聞いてくれなくて困ってるんです。」

「君たちは相変わらず仲が良いんだね。」

「ユリアが失礼なだけですわ。」


ジロリとこちらに視線を向けてくるから、知らない顔をして微笑む。


「ヤダなぁ。マリア様が殿下を応援するからって嫉妬しませんよ?友達より好きな人を応援するのは仕方がないことですから。」

「す……!?そ、そん……っ!」

「あれ、違うんですか?」

「ちが…く、は……ない……!け、ど……!!」


お嬢様が顔を隠すように手を広げる。


「わた、私はただの婚約者としての役目を……っ。」

「…………っ。」

「……、クロード様……っ?」


殿下がお嬢様の手首を強引に掴むと、そのまま馬車へとずんずんと連れて行ってしまって。


私達が乗ってないのに、無慈悲にも走り去ってしまう。


「あー……ごめんなさい、お嬢様。」

「どうかご無事で、マリア嬢。」


ほんとごめん、お嬢様。

悪役令嬢可愛すぎかよって内心乱舞して、弄りすぎました。


「では、私もココで!さようなら!ユリア様!レオナルド様!」

「送らなくて平気ですか?」

「はい!」

「気をつけて帰ってね。」


不自然なほど何も仕掛けてこない相手に神経尖らせるだけ無駄なのはわかってるけど。


心配するのは仕方がないでしょ?

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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