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今年の戦利品

学園の一角に貼り出されてる告知。

その前に人々が集まっている。


「もうそんな時期か。」

「今年はクロード様も参加されるのですか?」

「そのつもりだよ。」

「応援しておりますわ。」

「ありがとう、マリア。マリアの応援があれば優勝できそうだ。」


殿下がニコリと微笑み、お嬢様の手の甲に口づけを贈る。

お嬢様がポッと赤く染まるから、ニコニコと二人の様子を観察する。


「剣術大会かぁ、これって去年姫さんが出てたヤツ?」

「そうよ。アルベルトも参加したら?騎士団の人たちがスカウトする場にもなってるみたいだから活躍したら騎士団入団も夢じゃないわよ?」

「んー、良いや。興味ない。」

「えっ。」


思わず目を瞬く。


「どうして?アルベルト、騎士団に入りたいって……。」

「ん?俺、姫さんに剣向けんの苦手だから。」

「アンタねぇ……。」


思わず頭を抱える私。

なんともないように笑うアルベルトをキッと見上げる。


「良い!?やりたいことがあるんでしょ!?眼の前にそのチャンスが転がってんのよ!?私に剣を向けられないって理由だけで諦めるなんて許さないわ!!」


ずっと、騎士団に入るのが目標だと言っていた。

ずっと、入団試験を見送らせてきた。

今回、やっとアルベルトの夢に一歩近づく。


「そんな理由で諦めないでよ、アルベルト。それに、真剣じゃなくて木刀よ?」

「んー、それでもやっぱ無理。」

「アルベルト……。」


ニカッと笑って、頭をなでてくる。

大きな手のひらは優しくて、温かい。


「大丈夫。誓いだけは、守るから。」

「────」

「その時だけは、苦手なんて言わねーからさ。」


初めて戦場に出る時に交わした誓い。


残酷な約束という名の誓い。


“わかった。本当に、その時が来たら、俺がちゃんと姫さんをコースター辺境伯の娘として終わらせてやる。”

“ありがと、ごめんね。”

“ま、そんな日が来ねぇのが一番だけどな。”


目を閉じ、呼吸を落ち着ける。


「…………また、夢が遠のくわ。」

「そうだな。」

「貴方は、優しすぎるのよ。」

「俺は自分勝手でわがままなだけだよ。俺の一番が姫さんってだけだ。」


ポンポンと慰めるように頭を撫でると手が離れていく。

思わず苦笑する。


アルベルトは、優しすぎる。


「ソフィアはどうするんだ?」

「あら、覚えてたの私が居ること。私も参加しない。決勝戦で戦うのユリアよ?絶対に嫌。それに私、観覧席でマリア様の隣を譲る気はないから。」

「そっか。」


私はシードだから、剣術大会の最終日以外はお嬢様と一緒に観覧できる。


今年はヒロインが居るから、ヒロインが応援している人が決勝の舞台に上がってくるだろう。


ま、ヒロインが応援するのは殿下だろうけど。


「クロード殿下。」

「君は……。」

「剣術大会出られるのですか?」

「そのつもりだ。」

「応援してます。」

「ありがとう。頑張るよ。」


ヒロインが満足げに微笑むと立ち去っていく。

隣に居る悪役令嬢なんて見えてないとでも言いたげに。


「クロード様、人気ですね。」

「マリア以外に人気が出てもね……。」

「あら。王太子殿下が人気者なのは良いことではありませんか。民に愛されない王に、誰もついてきませんわ。」

「……そのとおりだね、マリア。王妃教育が身についているね。」

「当然です。このくらいの知識持たずして、クロード様の婚約者は務まりませんわ。」


ツンッと澄まし顔のお嬢様に殿下が優しく微笑みかける。

本当、大好きが溢れてるわ……。


ヒロインの攻略(アピール)があったから心配してたけど、今のところ順調そうだ。


「そういえば、今年の優勝賞品ってなんだろ?」

「去年は確か百二十のカラーパレットだったんだよな。」

「そーそー。ユリアが落ち込んでたの。」


ゲーム本編での優勝賞品は確か……。


「あぁ……今年は、外遊チケットらしい。」

「外遊チケット?」

「王国内にも観光名所は存在するんだが……、娯楽施設が集まっている場所を旅行するチケットと言ったほうがわかりやすいかな?」

「娯楽施設……。」


思わず目をキラキラとさせる。


そう、コレだ。


デートチケットとも言えるプラチナチケット。

ヒロインが誰を応援するかによって手に入れる攻略対象は違うが、一定以上の好感度を持っていたらヒロインは誘ってもらえる。

普段はヒロインから攻略に行くから、攻略対象からのお誘いはこのチケットのみ。

そりゃあ、好感度を上げきれば攻略対象からデートのお誘いは不定期に発生するけど。


ヒロインは一途に殿下の攻略に動いている。

まず優勝候補は殿下で間違いない。


「興味あります、娯楽施設。」


つまり、シードをとってる私が優勝し殿下とお嬢様にチケットを譲ればヒロインと殿下のフラグはバキッと折れるわけで。


「あら大変。ユリアがやる気を出してしまいましたわ、クロード様。」

「う、う〜ん……ユリア嬢の興味を引いてしまったな……。」


殿下が苦笑する。


ご安心ください、貴方のために私が優勝してプレゼントしましょう。


「ペアチケットだったらマリア様に差し上げますね!」

「え。」

「殿下、私は絶対に負けません……!!」


貴方とお嬢様の幸せのためにも……!!


「私も負けるつもりはない。マリア、優勝してチケットを渡すからね。一緒に行こう。」

「はい、クロード様。楽しみにしております。」


さぁ、ヒロイン!

貴方の攻略、全力で邪魔させてもらうわ!!

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