謁見
お父様に連れられて王都へ。
一人で行くと言ったのに、聞き入れてもらえなかった。
まぁ、たしかに?
お父様が居ないと王都なんて未知中の未知だから不安だったけど。
王様がお父様と一緒に来いって言ってたけど。
「ココが、王城だよ。」
「……緊張してきた。」
「帰る?」
「ダメよ、お父様。それより、この格好で大丈夫かしら。ドレスじゃないんだけど……。」
「あぁ、心配いらないよ。領地の様子を知らないわけじゃないからね。戦のあとなんだ、許されるよ。」
「そう……?」
まあ、我が家にはドレス一着ないのだが。
お母様が居る時に何度かドレスは着たことあるけれど、それももう、ニーナが着てる。
私はロイドやお父様のお古……、男物を着ている。
その方が動きやすいからだし、農作業の時とか便利だからだ。
知識として、一応は淑女とは何たるかというものは持ってる。
お母様が厳しい人だったから、ひとしきりの教育は受けてる。
お父様も優秀な先生を付けてくれてるから、バッチリだと思う。
「ドレスじゃないから、挨拶は間違えないようにね。」
「わかってる、大丈夫よ。」
ココ数年は間違えてないから。
男装令嬢として、挨拶は間違えられない。
謁見の間へと続く扉が開かれる。
長く続く赤い絨毯の上を歩く。
そして、予定通り略式の礼をとる。
「……オズワルド・コースター、お召により参上いたしました。」
「同じくユリア・コースター、お召により参上いたしました。」
「……面をあげよ。」
陛下の声に合わせてまっすぐに立つ。
「遠路はるばるご苦労だった。此度の戦も良い成果だと報告を受けている。疲れているであろうに、急な呼びたて、申し訳なく思う。」
「いえ。今に始まった急な呼び出しではありませんから。」
チクリと嫌味を言う思う様に気分を害した様子もなく、ジッと見られる。
「変わらぬな、オズワルド。相変わらずの嫌味っぷりだ。」
「陛下には負けます。毎度のごとく、戦終わりの呼び出し。溜まっている仕事に手を付けることもできぬまま王都へと参りましたゆえ、要件をさっさと済ませて領地に帰らせていただきたく思います。」
丁寧な言葉遣いに、慇懃無礼な態度。
なるほど、お父様と陛下は付き合いが長いと聞いていたけど、こんな感じなのか。
「優秀な跡継ぎが何人も居ると聞き及んでいるが?」
「ご冗談を。隣にいるユリアを含め、我が子は、まだまだ青い若輩者ばかり。古参の狐狸妖怪相手にはまだまだ足元を掬われましょう。」
「なるほど。だから、今回の要件は受け入れられるものではないと。そう、申すか?」
「!」
「娘にも良い経験になると思ったから、連れてきたのですよ、陛下。ですが、そうですね……陛下がもし、今回の急な呼びたてに申し訳なく思うのであれば、我が願い、聞いていただきたく存じます。」
「申してみよ。」
口角をあげ、いつも通りの笑みを浮かべるお父様は私の知らない当主の顔をしていた。
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