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学年末目前

気がつけば、一年生最後のテストが目前に迫っていて。


え、早くない?

あんなに頑張ってた前半、なんだったの??


そう思うくらいには、私自身衝撃を受けている。


「ユリア嬢?」

「!」

「どこかわからないところでも?」

「いえ。ただ、もう一年が終わるんだなぁと。」

「あぁ……。」


レオナルド様が眩しいものを見るような視線でお嬢様と殿下を見る。


「ユリア嬢が王命でココに来てそんなにたつのですね……。」


現在、王城の一角にある庭園で仲良くテスト勉強をしている二人。

そんな二人から離れたところで、一緒に勉強をしているレオナルド様。


私より少し感慨深そうにしているレオナルド様。


「あの二人が今も、あぁやって二人で話せるのはユリア嬢のおかげです。」

「私は何もしてませんよ。」

「ユリア嬢が来る前、あの二人の空気がすごく悪かったんです。」

「え。」


私があの二人の逢瀬を初めて見た時、そんな様子はなかったけどなぁ。


「マリア嬢が、邸に軟禁されていたでしょう?」

「暗殺者が危ないからとか言って閉じ込められてましたね。」


窓も塞がれててどこの牢獄かと思ったわ。


「その間、何度か殿下はセザンヌ公爵邸を訪れていたのですが、日に日に険悪になっていきましてね。殿下が、その、笑うのも失礼になるくらい落ち込んで……。気分転換だなんだと理由をつけては打ち合いばかりやらされて……。いやぁ、本当……仲直りしてくださったので助かりました。」


レオナルド様がどこか遠い目をされる。


全然そんな雰囲気なかったように思うけど…。

やっぱり外で会話できたのが大きかったのかしら。


「久しぶりに庭園でお茶をされると聞いた時は心配しましたが、マリア嬢の表情を見て安心したんです。あぁ、きっと今日は殿下と落ち着いて話ができると。」

「……でも、そこまで心配はしていなかったのでしょう?」

「なぜそう思うのですか?」

「レオナルド様の表情が晴れやかですから。」


目を見開くレオナルド様から、二人仲良く教え合っているお嬢様へと視線を移す。


「それに、お二人の雰囲気が険悪だったとしても絶対に仲直りするって確信をもってるように聞こえましたよ。」

「…………さすがですね、ユリア嬢。」


レオナルド様が楽しげに笑う。

目元をほころばせて、二人を見る姿が、ヒロインに攻略されている時の表情に重なって見えて。


もしかして、レオナルド様って…………。


「ユリア、少しこっちに来てくれる?」

「レオナルド、お前もこっちに来い。」

「はい。」

「何かありましたか、お嬢様。」


呼ばれて近づく。

チラリとレオナルド様を見るも、すでにいつも通りの顔をされていて。


「ユリア、貴方建国祭のパーティーには出席するのよね?」

「…………建国祭……?」


はて、そんな予定はあったかしら…………て、あぁ!

アレか!!ヒロインが結ばれるイベントの!!

告白イベントのアレか!!


え、てことは大きなパーティーって建国祭のこと!?


「ユリア、貴方もしかして……。」

「いえ、大丈夫です。たった今思い出しました。学年が上がる前の長期休み中に開催されるパーティーですよね。バッチリ思い出しました。大丈夫です。」

「…………私のドレスと一緒に準備しましょうか?」

「え?そんなの良いですよ。私だってちゃんと自分で用意できます。」

「本当に?私の護衛しているのに、貴方いつも直前に用意しに行くじゃない?どこか懇意にしてる仕立て屋があるの?既製品には見えなかったのだけれど……。」

「あぁ、ソレは…………。」


シンプルな様々なドレスを自分たちで仕立て上げてますなんて口が裂けても言えない……!!


ど、どうしよう!?

どれが正解!?


あ、そうだ。


「以前から懇意にしているブティックがありますので、心配しなくても大丈夫ですよ、お嬢様。」


会員制のブティックってことしか知らないけど。

詳しい話はお父様……、セバスとベロニカに聞きましょう。

おそらく、お母様が利用していたブティックだろうから。


「そう……。困ったらすぐに言うのよ?」

「はい。ありがとうございます、お嬢様。」


お嬢様が安心したように笑う。

それだけで殿下が嬉しそうにする。

この人、本当にお嬢様が好きだよね。


これはもう、ヒロイン現れても心配いらないのでは?


「ところで、その建国式典がどうかされたのですか?殿下とマリア嬢は、建国式典のパレードがあったかと記憶しているのですが。」


なんと。

そんな豪華なことが!?

それはゲームでは語られなかったわ!


なんせ、殿下とヒロイン結ばれちゃったらパレードどころじゃないものね!


「あぁ、それなんだがな。なくなった。」

「なくなった!?」

「なくなったって、どういうことですか?」

「マリアを狙っている暗殺者の件もある。もし、パレード中に何かあっては国民を巻き込みかねない。だから、簡略化する。陛下には許可はもらった。」

「そうだったのですか……。確かに、パレードは不特定多数の人が行き交うので、避けられる問題なのであれば避けるべきでしょう。」


四人で顔を見合わせる。


「……………で、何か問題があるんですよね?何ですか?」


王都のパーティーは未知数。

何より乙女ゲームはヒロイン視点。

裏話なんて知らない。

後日談として語られてないし、エンディングイベントは。


「パレードの代わりに、私とマリアの婚約を大々的に発表する。」


殿下のセリフにポカンとする。

そんなことする必要ないのでは?


「なるほど。抑止力にはなりますね。」

「あぁ。マリアを大々的に守ることが可能になる。」


レオナルド様と殿下はうなずき合って何やら通じ合ってますが…………。

すみません、ついていけてません。


「私とクロード様はね、内密で婚約してるのよ。」

「え、内密?」

「そうよ。いろいろな人が知ってるのに、なんで今更って思ったのでしょう?」

「はい。」


だってお嬢様が悪役令嬢で、王太子の婚約者なのは前世知識有する私からすれば常識だ。


「内密な婚約だけれど、正式な場で私はいつもクロード様にエスコートされていたから、広まったの。だから、今の私とクロード様は仮の婚約者。発表することで私は、仮の婚約者ではなく正式な婚約者になれるの。」

「へぇ……。」


そうだったんだ。

幼い頃から婚約者してるってそういう意味だったんだ。


「仮の婚約者と正式な婚約者って何か違うんですか?」


大々的に守ることが可能になるって言うのは理解したけど……。

いまいちピンとこない。


「権限が変わるんだ。王室の業務を手伝えたり。」

「お嬢様は王妃教育をされていたと聞いてるのですが、また別なんですか?」

「あぁ。あくまで教育だからな。正式な婚約者になれば、国内外問わず、書類整理ができるようになるし、サインも自分の名を使えるようになる。私や国王夫妻が不在でも国交の場に立つことができる。」

「あぁ、なるほど。正式に未来の王妃だと知らしめることができるようになるんですね。」

「そういうことだ。」


へぇ、やっぱりヒロイン視点じゃわからないことはあるわねぇ。

ゲームの裏設定覗いてるみたいでワクワクする。


「その内容だけ聞いてると、問題があるように思えないんですけど……。パレードより守りやすそうですし。」


首を傾げれば、お嬢様が笑って。


「ふふ、貴方ならそう言うと思ったわ。あのね、貴族だけじゃなくて国中に知らせる必要があるから、建物の中じゃないの。それから、建国祭の日は一部区画は一般解放されてるのよ。」


それに手のひらを打つ。


「それは危ないですね。狙い放題です。」

「何が問題か、わかった?」

「はい。ありがとうございます、マリア様。王都の催し物に疎いので、すごく助かりました。」

「良いのよ。貴方にはいつもお世話になってるもの。」

「婚約発表をする場所って見せてもらえたりできますか?話から察するにお城のバルコニーか何かですよね?」

「陛下の執務室が近いから、陛下の許可がないと立ち入ることはできない。あそこは、式典以外の立ち入りを基本禁じてるからな。」


ふむ。

下見くらいはしておきたいんだけどなぁ。

パーティーが近づくと今より厳重な警戒態勢が敷かれてお城の中に入ること事態できなくなりそうだし。


「陛下にお願いしてみましょう。」

「本気?」

「もちろん本気ですよ。当日の動きはスケジュール決まった時に教えてくれれば良いです。でも、お城はそうはいきません。だって私、御三方と違って堂々と入る権限持ってませんから。」

「マリアの護衛なんだから、一緒に入ってくれば良い。」

「殿下、お忘れですか?私が王命でお嬢様についてるのは極秘事項です。知ってるのは陛下と秘書官のマルクル様。そして、殿下と側近候補のレオナルド様だけなんですよ?」

「「あ。」」

「そんな状態でお城の中自由に動き回れるわけないじゃないですか。」


迷子になっちゃった、てへっ!なぁんて許されるハズがない。

私がコースター辺境伯の娘でも、牢にぶち込まれる案件だ。


「…………わかった。陛下に相談してみる。」

「ありがとうございます、殿下。できるなら、当日の朝も見て回りたいのでソレも聞いておいてください。」

「わかった。すまないな、ユリア嬢。」

「仕事ですから。」


残り金貨二千枚を払ってもらうためだと思えば頑張りますよ、大切な家族の為にね。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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