公爵令嬢の誕生日パーティー
お嬢様の誕生日パーティーは、学園関係の人たちを主に呼んでいるらしい。
それでも、呼ばないわけにはいかない付き合いの方々は招待状を送っているらしいが。
「今日も素敵です、お嬢様!」
「殿下は本当にお嬢様のことをよくわかっておられますね……。殿下の贈り物をまとっている時が一番輝いているように感じます。」
「私達のお嬢様ですから。」
ステラさんと、着飾り終えたお嬢様を見て頷く。
悪役令嬢らしさを感じるのは、つり上がった目元くらいだろうか。
「ありがと、二人とも。ユリアはまだ時間大丈夫なの?」
「私は別に参加しなくても……。」
「駄目よ。参加しなさい。」
「…………はい。」
使用人の格好のまま会場を出入りするのは良くないから、部屋に引きこもろうかと思ってたのに。
「ドレスの用意は終わってるのよね?」
「はい。」
「ココにドレスを運び込ませれば良かったのに。そうすれば、すぐ準備できたでしょう?」
「私達の関係はまだ大々的にはなってませんから。」
というか、私がこっちで用意しちゃったらソフィアの着付けをベロニカ一人に任せることになっちゃうのよね。
「会場の方は奥様が切り盛りされております。ユリアさんはお屋敷に戻っても大丈夫かと。」
「え、奥様って……マリアお嬢様のお母様ってことですか?」
「えぇ。」
「ユリア?」
「あの、お嬢様。私、かれこれ一年くらいおそばにおりますが、奥様と顔を合わせたことがありません。あの、今更ですが挨拶とか……。」
「あぁ……そういえばそうね。」
お嬢様がうっかりしてたわと頬に手を当てて笑う。
笑い事じゃないと思うんですが、お嬢様。
「挨拶は必要ないわ。お母様、邸の中にいる使用人の名前なんて誰一人覚えてないから。」
「え。」
それはそれでどうなんだろう……。
「それに、貴方は陛下や殿下が手配してくれた私の護衛。長くココに務めるわけではないもの。まぁ、貴方がどうしてもって言うならココに居ても良いけど。」
「お嬢様……!!」
お嬢様、好き!
ついていく!!
お給金払ってくれる限り!
「駄目ですよ、お嬢様。私の仕事が増えます。」
「減るのではなくて?」
「ユリアさんはポンコツなので、私の負担が増えます。」
「まぁ。ふふふ、だ、そうよ?」
「私の安定した就職先が……!!ひどいですよ、ステラさん!」
「事実でしょう。」
「貴方たちもずいぶんと仲良くなったわね……。」
お嬢様が感慨深げに言う。
ココへ来た時のステラさんの威嚇っぷりが信じられないくらいに打ち解けている。
まぁ、ステラさんとの特訓で私に手も足も出ないからってのが一番の理由だろうけど。
「それより、早く邸に帰った方がよろしいのでは?お嬢様には私がついてますので。どうぞ。」
「ステラさんが冷たい……。では、お嬢様。私は行きますね。鉄扇は持ちましたか?」
「えぇ、大丈夫よ。」
「ステラさん、灰皿持ちましたか?」
「花瓶を置きましたので、持ってません。」
「あのお花、そのための……?」
「では、安全ですね。なるべくすぐ戻ってきます!」
「えぇ、気をつけるのよ。」
「はい!」
さて、手早く着替えに戻りますか。
邸に帰れは和、ソフィアがちょうど着替え終わったところで。
「お帰り、ユリア。貴方の分、準備できてるわよ。」
「さぁさぁ、お嬢様。どうぞ、こちらへ。」
「その前に、ソフィアの仕上げをしましょ。ソフィア、そこに座って。」
「私は別に良いから。」
「駄目。マリア様、今日のことすごく楽しみにしてるんだから。友達の誕生日くらい、めいいっぱいお祝いしてあげなきゃ。ね?」
ソフィアの長くてキレイな髪を、今日の為に用意していた髪飾りで飾り付ける。
それが今からの課題。
前世では、卒業式とか成人式でするんだけど……。
「やるわよ、ベロニカ。」
「はい、お嬢様。いつでもどうぞ。」
私、前世と今世、変わらずに不器用なのよね。
どうせなら転生特典で、器用さをプレゼントしてほしかったわ。
「……、……っ?」
「お嬢様、逆です。手順一つ戻ってください。」
「……こう?」
「はい、そっちです。」
「え、待って。ユリア、貴方久しぶりに何をしようとしてるの?」
「大丈夫よ、ソフィア。あの頃と違って今回は髪の毛も絡まってないし、強く引っ張りすぎてないから。」
「お嬢様、また間違えてます。手順二つ戻ってください。」
「はい。」
ベロニカに監視兼指導をしてもらい、なんとか完成。
「……、できた!」
「お見事です、お嬢様。今までで最高の仕上がりです。」
「ありがとう、ベロニカのおかげね!」
「ありがとう、ユリア、ベロニカさん。ベロニカさんのお陰で私の髪の毛は無事よ。」
「私も成長したわ。」
「こんな複雑なことできないものね、ユリアは。さて、次はユリアの番よ。私の髪型なんかで時間使っちちゃったから、早く準備しないと。」
「ソフィアを可愛く仕上げて満足なんだけど、私。」
渋々と着替える為に衣服を脱ぎ、ドレスを着用する。
今回のドレスも、お父様が前もって用意してくれていたドレスに手を加えたもの。
とは言っても、お嬢様の誕生日パーティーで私達が目立つわけにもいかないため、シンプルな作りのままで少しだけレースをつけたりリボン付けたりとしただけだ。
色は青色で統一している。
今回のドレスには肘までのグローブもセットだ。
「ユリアのドレスなのに、地味ねぇ。」
「良いじゃない、動きやすいし。それに、今回はマリア・セザンヌ様の誕生日パーティーよ?主役を喰うわけにはいかないじゃない。」
「喰っちゃいなさいよ、パクっと。どうせ殿下とダンスタイムになったら嫌でも呑まれるんだし。」
ベロニカとソフィアが手分けして身支度を整えてくれる。
とは言っても私の場合、髪の毛は短いから整えるほどの時間は必要ないんだけど。
「この大ぶりのイヤリング、用意しておいて良かったわ。」
「大金はたいてしまったわ。」
「使いなさいって領主様に言われてるんでしょ?」
「まぁね。イヤリングとネックレスを買っただけでも褒められる行動だと私は思ってる。」
この装飾品の総額を考えただけで目眩がする。
コレ、一つでも落としたり傷つけないようにしないと。
「ドレスにつけたレースの材料が余ってたから髪飾りにしたけど……。うん、ユリア。最高に可愛いわ。」
「ありがと、ソフィア。」
「アルベルトも見たがるでしょうねぇ、コレ。ふふふ、領地に帰ったら自慢してやらなきゃ。」
「アルベルトはあんまりこういうの興味ないと思うんだけど。」
「お嬢様のことになると馬鹿になるアイツに、そんなのは意味をなさないわ。」
「お二人共、そろそろお時間ですよ。」
「あ、いけない!」
最後にもう一度鏡で全体を確認して、部屋を出る。
エントランスホールには、ユミエルとガゼルが居て。
目があったかと思えば、二人揃ってポカンとした顔をする。
「みんな、パーティー終わるまで待ってなくて良いからね。先に休むのよ。じゃあ、行ってきます!」
「は、はい!行ってらっしゃいませ、お嬢様!」
「馬車の準備は整っております。」
「ありがと、ガゼル、ユミエル。」
外へと出れば、馬車の扉を開いて待っているセバスが居て。
「おまませ、セバス。寒かったでしょ?」
「いいえ。素敵なお嬢様方を待つ時間は、暖かい時間でした。」
「まぁ。口が上手ね、セバス。」
セバスの手を借りて馬車に乗り込む。
ソフィアも乗り込んだのを確認して扉が閉められる。
ゆっくりと走り出す馬車に大きく息を吐きだす。
「はぁ…。遅刻するかと思ったわ。」
「これでも充分早い出発だと思うけどね。」
「お嬢様の招待客リストの人数凄いわよ?時間ギリギリなんかに行ったら何時間待たされるかわかったもんじゃないわ。それに、厳重な警戒態勢が敷かれてるとは言え、心配だし。」
殿下もなるべく早めに来るとは言っていたけど、王太子という立場上、確約はできないだろうし。
なんせ、メインヒーロー。
悪役令嬢の誕生日パーティーに参加できなくなっても不思議じゃない。
「あ、見えて来た。」
「私達が最初なのか最後なのか……。誰も居ないわね。」
「早く着いた方に賭けるわ。」
じゃないと私のメンタルがもたない。
馬車を降りて、受付をしている騎士や使用人の間を抜ける。
もちろん、私は顔パスです。
お嬢様の指示のおかげでね。
「マリア様〜!」
「ユリア!ソフィアさん!来てくれたのね!」
「お誕生日おめでとうございます、マリア様!今日もとっても素敵ですね!クロード殿下はまだ来てないのですか?」
「えぇ。クロード様は、お忙しい方だから。」
お嬢様が悲しそうに笑う。
自分に言い聞かせるように。
来なくてもしょうがないって思ってるな、さては。
「おめでとうございます、マリア様。私で良ければ、殿下のこと引っ張って来ますよ。」
「気持ちだけいただいておくわ。それにしても、今日の装いもとっても素敵ね。あら?その石は、とても大ぶりで素敵ね。」
「ありがとうございます。大切な友人であるマリア様の誕生日パーティーですから。このくらいは当然です。」
「クロード様の時とはまた違った雰囲気ね?」
「王室で開かれるものと公爵家で開かれるものでは、規模も人々の装いも変わると父に聞いてましたから。」
まぁ、王都の邸で働くみんなに教えてもらったことがほとんどだけど。
動くたびに揺れるこの重さが、ドキドキさせてくれる。
落とさないように気をつけないと。
「それにしても…、私達が来るの早かっただけですか?思ったよりも集まりが悪い気がしますね。」
「……確かに。何かあったのかしら。ステラ、見てきてくれる?」
ステラさんが音を立てずに立ち去る。
本当、鍛えたかいがあるわ……。
「心配ですね。せっかくのマリア様のお誕生日なのに、何もないと良いんですが……。」
「…………。」
「二人とも、そんな心配そうな顔しなくて大丈夫ですよ。」
ソフィアとお嬢様の視線が集まる。
ニコリと笑えば、お嬢様が目を見開いて。
「何か騒ぎがあったとしても、殿下が放っておくわけないじゃないですか。」
彼がまだ姿を見せていない理由があるのかもしれない。
ヒロインが登場して、ヒロインに攻略され始めると悪役令嬢である婚約者の扱いが適当になる。
明確な描写はあまりなかったけど、あれだけヒロインと過ごしていたんだから、悪役令嬢と過ごす時間はなかったハズだ。
「お嬢様。」
「ステラ、どうだった?」
「何やら通りの方で騒ぎがあったようです。馬車の一部がソレに巻き込まれているとか。」
公爵家に続く通りで騒ぎ……?
ヒロインが登場する前に?
そんなのあったかしら……。
あ!!
“その怪我の痕、痛そうです…っ。”
“あぁ……。たいしたことはないよ。去年ちょっと人助けをした時についた傷なんだ。”
この騒ぎがアレか!!
「心配ね……。けが人の有無は?」
「詳しいことは何も。」
確信はない。
けど。
「お嬢様、公爵家の人員数名貸してください。」
「え?」
何かあってからじゃ遅い。
「胸騒ぎがします。」
「だったら、私も……!!」
「何を言ってるんですか。主役が抜けてどうするんです?少し様子を見に行くだけです。」
チラリとソフィアを見れば頷いて。
「お嬢様、特訓したでしょ?ポーカーフェイスです、ポーカーフェイス。今、とても表情が読みやすいですよ。それじゃあ、何かあったのかと心配をかけてしまいます。」
「…………っ。」
「大丈夫です。こういう騒ぎの対処は慣れてますから。」
「…………わかったわ。騎士を数名連れて行きなさい。」
「ありがとうございます。では、行ってきますね!」
あくまで笑顔で退場し、周囲の人目が集まらないように振る舞う。
会場の外へと出れば、門のところに騎士が数名集まっていて。
「数分もたってないのにこの伝達力。」
「さすが、公爵家。」
ソフィアと思わず感嘆の声を漏らす。
「通りの騒ぎを解決します。ついてきてください。」
「はっ。」
ココから騒ぎの場所まではそう遠くない。
けど、歩いて行って手遅れになったら困る。
「はぐれないように気をつけてくださいね。走りますから。」
「走るって…………。」
その格好で?
そんな態度の騎士たちを気にすることなく、走り出す私とソフィア。
慌てたようについてくる騎士たち。
そんな異様な光景に通り行く人の視線は集まったが、疾走するお嬢様とソレを追いかける騎士の構図にしか見えないハズだ。
「……、ココね。」
「コレは…………。」
馬車数台が横転。
中には平民の馬車もあるのに、貴族優先で救い出される姿に嫌気がする。
「指示を出します。家紋の入ってない馬車から救助をお願いします。けが人は私達のところへ。」
「家紋の入ってない馬車を優先!?正気ですか!」
「ココには名だたる貴族が居るのですよ!?」
「この大事故を見てまだ貴族だ平民だというのですか!!貴族の救助はすでに行われてます!加勢に来た私達が加入しても邪魔なだけです!!」
「……っ。」
「嫌なら結構。けが人だけ運んでください。ソフィア、手伝って、助けたい人がいるの。」
私の考えすぎなんかじゃなければ、ココに殿下が居る。
「どの馬車?」
「馬が離れてしまってて、横転もしくは押しつぶされてる重症な馬車。」
「やけに明確な指示ね。」
「重症者から助けるのは当然のことでしょ。」
視線を当たりに彷徨わせれば、気後れしてるのかなんなのか。
野次馬が集まり始めて。
「動ける人は救助の手伝いをお願いします!お医者様が近くにいらっしゃるのであれば、怪我人の手伝いをお願いします!!」
挙動不審に視線を彷徨わせる。
当然だ。
今、事故にあってるのは平民を軽んじる貴族なのだから。
「どうして貴族のお嬢様の言う事を聞かなきゃならねーんだ!」
「そーだそーだ!お前らがこんな仰々しい列を作ってたから罰が当たったんだ!!」
王都ってめんどくさいな。
「そうですか、わかりました。邪魔なので離れててください。気が散ります。」
「ユリア、見つけた!!」
「!!」
ソフィアの傍にはへしゃげた馬車。
扉も歪んで普通には開かないだろう。
天井に看板が落ちてる。
貫通してないのは幸いだな。
近くに落ちていた馬車の部品だったものを扉の隙間にねじ込む。
そのまま勢いをつけて蹴り飛ばせば、バキッと音をたてて扉が吹き飛ぶ。
脆い作りで良かった。
壊れた隙間から中を覗けば、目を見開く男前。
「ご無事ですか、殿下。」
「なぜ、君が……。」
「貴方が、マリアお嬢様を悲しませるわけないじゃないですか。大方、王族の馬車で乗り付けると迷惑をかけると思ったんでしょう?動けますか?すぐに手当が必要な人は?」
「レオナルドが頭を打ったようで、血が出ている。」
「わかりました。」
ふらついている二人に手を貸して、引っ張り出す。
「ソフィア!!」
「わかってる。二人共自力で動けるようですが、先に手当と症状観察です。人助けはその後。」
「私は良いです、殿下を────」
「重症者から見ます。権力も地位も関係ありません。」
ココはソフィアに任せて良さそうね。
無印の馬車から殿下たちが出てきたことに驚きを隠せない面々が多いようだが、今は良い。
横転している乗り合い馬車の扉を開けば、目が回ってるのかフラフラとしている人が居て。
「大丈夫ですか?自分で動けますか?手を伸ばしてください、引っ張りあげます。」
「むす、娘を…………。」
「全員助けます。手を伸ばして。」
中に居るのは子供を入れて三人。
御者の姿が見えないところを見れば、逃げたか。
「もう大丈夫ですよ。」
親子に笑顔を向ける。
そうすれば、ホッとしたような顔をして泣き出すから。
三人の頭をそれぞれ撫でる。
「ちょっと失礼しますね。」
三人それぞれを簡易的に診察して行く。
領地に居る頃、教えてもらったけど私は詳しい診察ができない。
私にできるのは怪我の手当だけ。
「骨は折れてなさそうですね。腫れてはいますが、捻挫なので、心配はいりません。」
「あの、お貴族様、お召し物が…………。」
「あぁ、気にしないでください。洗えば良いだけですから。」
「ユリア、向こう二人見てきたわ。」
「ありがと、ソフィア。この家族も見てもらって良い?骨は折れてなさそうなんだけど、出血が多くて。」
「…………。……、切り口が少し深いわね。時間がたてば塞がるような傷じゃないわ。」
「縫合?」
「それしかないわね。顔だし。出血多量で死ぬか、ココで私に治療を任せるか選んで。悪いけど、新しい医者を待ってるような時間は与えられないわ。」
「…………。」
「ママ…………?」
「…………、お願いします。」
「わかった、助けてあげる。血が苦手なら、見ない方良いわよ。パパさんは娘さん見てあげててユリア、抑えてて。」
「任せなさい。というか、アンタ縫合の用意までしてたわけ。」
「お転婆なお嬢様のお陰で私も気苦労が絶えないのよ。」
「言ってくれるわね。」
持っていたほんの少しの水で傷口を荒い流しつつ、砂利などを取り除いていくソフィア。
そして、迷いのない手つきで額の深いキズを縫合していく。
「う…っ。」
「大丈夫よ、頑張って。」
腕に爪がたてられる。
だけど、このくらいなら騒ぐほどの傷でもない。
「…………、よし、完成。」
「お疲れ。」
「…………、…………塞がったんですか……?」
「えぇ、塞がったわ。だけど、すぐにひっつかないから。しばらくは安静にして。水浴びするときも、その傷口だけは極力触らないように。お医者さんに抜糸してもらうのよ。」
ソフィアの言葉に呆然としたまま頷く女性。
「ユリア嬢。」
「レオナルド様、殿下。平衡感覚は戻りましたか?」
「あぁ大丈夫だ。ソフィア嬢にもらった薬のおかげだな。」
「あくまで一時的なものです、過信しないでください。」
周囲を見回せば貴族優先で動いてきた連中が事態の収集に動いていて。
「よし、なら殿下は私と一緒にパーティー会場に戻りましょう。マリア様が殿下を思って悲しそうな顔をしてるのを慰めに。」
「あぁ、そうだな。」
「あ、馬車はないので徒歩ですからね。」
殿下とレオナルド様にそう言えば頷いて。
「お嬢様、ソフィアさん!!」
「!セバス!どうしてココにっ?」
「お嬢様が全力疾走してるのが見えました。馬車を回しております。私が、お二人をお送りしましょう。」
「良いの?」
「えぇ。それに、まだ気になることがおありの様子。」
「!!」
ソフィアと思わず顔を見合わせれば、ニコリとセバスが笑って。
「お嬢様は、本当に旦那様によく似ておられる。お嬢様、危険なことはなさらないでくださいよ。でないと私、皆に怒られてしまいます。」
「…………えぇ、わかったわ。ありがと、セバス。二人をお願いね。」
いつもと同じように微笑むセバスに、いつも通りの笑顔を返した。
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