表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史という名のファンタジー  作者: みなと劉
87/255

87話

……ほら、そこに立っている女の子を見てごらん?……言われてみると、そこには一人の女の子の姿があった。先程まで確かに居なかったはずなのに、いつの間にか現れていて、しかも 僕らと同じテーブルについていたのだ。僕は 慌てて振り返ってみたが、そこに立っていたはずのルリさんと彼女の姿は 忽然と消えてしまっていた。そして、目の前には その少女だけが佇んでいる……。……そういえば さっき、その女の子の事を ルリさんと間違えた事を思い出すと、僕は恐る恐る 口を開いた。

(まさか……今のも 君の能力なのかい?)

うん、まぁ そうだね。俺の能力の一つで、いわゆる

『幻覚』を作り出すことが出来るのさ。と、僕の言葉に対して、そいつは自信ありげに言った。……えっと、それじゃあ

『音楽の女神』っていうのは?

(それは 今から会おうとしている神様のことだよ。……ちなみに、名前は……『ニケ』様だ。覚えやすい名前だろ?)

そうだね。……えっと、それで?どうして、そんなことをしたんだい?

(ん?……それは どうゆう意味でだい?)……それは そうか……。

『僕』の返答を聞くなり、少し間を空けてから そいつも何かを悟ったように「……まぁ、いずれ分かるよ」と呟くように口にした。

そうか……。

僕が静かに言うと、再び「そうか……」と言ってきた。そして、「まぁ そのうちわかるよ」とも。……一体、何がわかってくるというのか。僕としては、全くわからないのだが。

(それで、協力する代わりに 何かしてほしいことがあるのかい?)……話が早くて助かるな。俺の方も お前に協力する条件として、お前からお願いをきいてあげたいと思っているのだけど……どうかな?……いいよ。と、『僕』はあっさり了承すると、続けてこう言葉にした。……僕が望むのは、僕の中に居るもう一人の僕の解放だよ。と、彼が言うなり、今度は「そうか……」という声が 脳内に響き渡った。そして、しばらくすると「わかった」という声も聞こえてくる。

それから、しばらくの間は沈黙が続いたが、しばらくして そいつは僕に向けてある言葉を紡ぎ出してきた。……では、改めて自己紹介をしておこうかな。これから一緒に行動するわけだし、お互いの名前を知らないのは不便だろうしね。……まず、先に言っておくと、君に宿っているもう一つの人格というのは、厳密に言えば君自身が作り出したものじゃない。と、いうのもね。そもそも、俺達は一つの人格として存在していたわけじゃないんだよ。どちらかと言えば、俺は『器』として作られたものだからね。と、彼は静かに語ると、続けて話し始めた。俺は 元々は人間ではなく、神によって造られた

『天使』という存在だったんだよ。

その言葉を聞いた途端、僕は思わず目を見開いた。その表情の変化に気付いたのか、彼は話を続けると 僕に話しかけてきた。

(驚いているようだね)

(うん……。君が元々人間ではなかったことも驚きだったけど、それより どうして わざわざ『僕』を造り出したんだい?)

そうだね……。と、そいつは一拍置いた後に口を開くと、ゆっくりと話し出した。……実はね。俺にも詳しいことは分からないんだけど、君を造り出そうと思ったきっかけというのがあってね。……その前に、俺と『君』について 詳しく説明しておいた方がいいかもね。……とりあえず、今の話を聞いてもらった方が早いかもしれないな。

そこまで言うと、彼は小さく溜め息をつくと、どこか遠いところを見ながら話を続けた。……君には信じ難いことだと思うんだけどね。でも、本当の話なんだよ。……俺達が生きていた世界は、もう既に滅んでしまったんだよ。

そいつは、静かな口調でそう語った。僕は、思わず目を大きく見開いて 固まってしまう。あまりにも突拍子もない発言だったために、理解するのに かなりの時間を要することになったが、やがて僕は口を開いた。

(それって、一体どういうことなんだい?……君が言っていたのは、『地球は滅びた』とかって話なのか?)……いや、そうではないよ。でも、似たようなものではあるね。君にとっては信じられないことなのかもしれないけど、俺達の世界では『天変地異』と呼ばれるような出来事が起こったんだ。

そう告げられても、やはり僕は首を傾げるばかりだった。『僕たちが住んでいた街で大きな災害が起こることもなく平和な日々が続いていた』というのが、記憶に残っている限りだが、一番新しい記憶であるからだ。そんな僕の気持ちを感じ取ったのか、そいつは「君は あの日のことを憶えているのかい?」と聞いてきた。僕は一瞬 躊躇したが、ゆっくりと口を開いた。……確か、僕は学校にいたはずだよ。

(……学校に?)……そうさ。僕は教室に居たはずさ……。あれから数日しか経っていないんだから……忘れるわけがないよ……。

そっか……。と、彼が言うと、また少しの間だけ沈黙が流れる。それから、そいつは再び 語り出すと、「君のいた街の人達のほとんどは まだ避難を続けている最中だよ」と、一言添えて、話を再開した。……その 数日後のことだ。突然、この世界に隕石が落ちてきて 地上を破壊し尽くした。と、そいつは言うと、「そして、俺はその被害にあったのさ」と付け加えたのだった。……そして、「生き残ったのは ほんの一握りの人々だけだった」とも口にした。……それはつまり、君の両親も含まれているということなのかい?

(ああ、その通りさ。俺の家族も含めて、他の人はほとんど亡くなってしまっていた。そして、その中には『俺の友達』も含まれていて……。

彼は、そう言い終えると 少し間を空けた。そして、僕に向けてこんな言葉を口にする。

(俺には、妹がいたんだよ。……名前は『瑠璃』っていうんだ)……妹?と、僕は呟くように言った。そいつは、僕の問いかけに対して 静かに「……うん」と答えると、続けて言葉にした。……俺はね。その時に『彼女』と一緒に行動していたんだ。彼女は『君』でもあるわけだけど、今は『俺の妹』でもあるのだよ。……だから、君にお願いがあるんだ。俺が死んでから、ずっと 彼女の面倒を見てくれていたみたいだしね。

(君が死んだあとも……?……それって どうゆう意味だい?それに、なんで妹の面倒を見ていてくれたってわかるのかな?……僕には何も分からなかったのに……どうして?)……うーん。まぁ、簡単に言えば 君の体に残っていた わずかな『残滓』のようなものを感じたからなんだよ。

(ざん……?)

(そうだよ。『俺の残滓』……『俺の魂』みたいなものだと思ってくれればいいかな)

(じゃあ……もしかして、君とルリさんは同じ人間だと思っていたけど、実際は 違うの?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ