83話
そして、その大洪水によって、地上にあったあらゆるものが水の底に沈んだとされているが、その中に『動物』が含まれていたという記述もあったように思う。
『ティグリス・ユーフラテス川流域文明』についてだが、実は、この文明を築いたとされる民族の名前はわかっておらず、ただ漠然と『バビロニア』と呼ばれることが多かったようだ。
そして、この文明の滅亡に関しての決定的な証拠となるものは発見されていないらしく、未だに謎の多いものとなっているのである。そして、その理由としては、当時の資料がほとんど残っていないことや、それ以前にあった他の遺跡が見つかっていることから、何かの陰謀ではないかという説もあるようだ。
『古代バビロニア王国』……これが『大洪水』で滅んだ都市の名前なのだが、その名前がつけられた理由は諸説あるものの……その中でも一番有力な説があるとされているのだが、『世界最後の日に方舟に乗って生き残ることができるのは、その王国の国民だけだ』という伝承に由来しているのではないかというものだ。
ちなみに、その伝承は
『ノアの方舟』に記された『箱船』の物語に基づいているのではないのかとも言われているようだが、それを裏付ける文献や記録は一切残されていなかった。そしてまた、そのような事実があったことを証明する物も何も見つかっていないらしい。
さらに、この国の王の名もわかっていないのだそうだ。
そして、王が誰だったかを知るためのヒントとなり得るのは、その王の宮殿の跡地と思われる遺跡がある場所の座標と、そこの碑文に書かれていた文字のみなのだという。……しかも、その文字を解読できた者はおらず、未だ 謎のままなのだそうだ。
……そして、もし仮に その文字を読み解くことができれば、この国がどのような危機にさらされていたのかがわかるかもしれないと言われている。なぜなら、そこには このような言葉が記されていたからである。
『……我々は、神の恵みによって救われる』と。
ちなみに『ティグリス・ユーフラテス川流域文明』の遺跡は、現在でも幾つか残っているそうで、その中には 巨大な『神殿跡』らしきものや『王墓』だと考えられるものまで存在するらしい。
しかし、残念ながら……そのいずれも、完全な形で残されているわけではないようで、特に重要な歴史的遺物は失われているのだとか。
そしてまた、それらとは別に発見された出土品に関しても、そのほとんどが どういった理由でそこに存在していたものなのかがわからなかったそうなのだ。
その話とは『救世主伝説』に関する逸話である。
『救世主伝説』とは、その名の通り『救世主』の伝説であり、その発祥は古代エジプトでの話だ。その物語はエジプト神話の『ラーの書』にあるとされ、それによると
『エジプトのファラオが『太陽神ラ―』に祈り、その力を借りて 悪逆非道の王を討ち果たすという奇跡が起きる』という話となっているようだ。しかし その真偽は定かではない。
というのも、その話自体は古くから語り継がれているものであり、それ以前からあるようなのだが、その内容には矛盾点が多くあり信憑性に乏しいというのが一般的な見方なのである。
ただ……そういった類の話が 他にもいくつか存在していることも確かだそうなのだ。そしてそれらは、『救世主伝説』というよりも、むしろ『勇者物語』に近いものだと認識されているようだったのだが……。まぁ、それはいいだろう。
そして その話の主人公は、もちろんのことながら『勇者』と呼ばれる者だ。
『ラーの書』の一説によりますと、まず最初に 天界に住む神達が人間達を作ったそうなのですが、その神々達は 自分達の力だけでは人間の力を借りなければ生きていけないことに気づきました。
だから、この世界に暮らす人達全てを見守ることのできる『聖なる地母神(女神)』を作りだし、彼女に地上の管理を委ねたと言い伝えられているのです。
そして、彼女はこの世界の人々に様々な知恵や知識を授けただけでなく、大地や植物などの命を生み出す力をも与えてくれたという。それによって この世界に生きとし生ける者は全て、神の御加護のもとに生まれることになったというわけです。
そして……それから数万年の月日が流れた頃、彼女の子孫にあたる人間達に 恐ろしいことが起きてしまうことになりました。
それは……
『神に対する冒涜的な行為と裏切り』だったと伝えられています。そして、その罪を背負った一族の末裔が、後に『大魔王』を名乗る存在になると言われているのですよ。……そして、それを見かねた天の神は『光の精霊(妖精)』を生み出し、彼らを使者にして人間達に裁きを下したのだと言われています。そして その時に下されたのが『断罪』と『浄化』の儀式だという。……これは この世界に伝わる昔話として語られている話でして、それが本当の話かどうかを立証することは 現時点ではできないでしょうね。……というのも、そもそも その話は『聖書』に書かれてあったことですし、それ以前には、同じような内容の話があったとさえ言われていた程なのです。それに……そんな話をしたとしても、大半の人は信じないと思いますよ。
だって、そんなことが実際に起こったなんて、誰にも証明できないのですから……。
ただ、その『救世主伝説』に関しては、少しだけ真実に近いものがあるのではないでしょうか。というのは……その話の中には『勇者』が二人登場するからなのですが、その二人は共に『聖女の子孫』なのです。




