82話
そして、彼はその冠を戴くように頭の上に輪を持ち、その翼は二対あり、その羽が広げる大きさはおよそ十二メートルにもなるらしい。その姿は、全身が輝く白色をしているとされ、両眼には紅玉のような輝きを放つ美しい瞳があるらしい。そして、その口から出る声は、すべての言語と人間の声音を完全に表現でき、いかなる質問にも答える能力を持っているとされているようだ。
この『ミカエル』という名前だが、これは ヘブライ語で「神の守護者」「天の主」を意味しているそうで、『旧約聖書』では アブラハムの宗教の預言者であるモーゼによって与えられたものと伝えられているのだ。
『カトリック教会のカテキズム』の中での『ミカエル』という存在についての記述は以下の通り。
『神の使者であり、神に愛される者……』
この一文だけでも、彼の偉大な力を感じ取れる気がするが、この『神』という言葉が示す通り、彼にとっての『絶対の存在』は『唯一神』のみなのだ。それは、彼の中に潜む強い信仰心によるものと思われる。
そして彼は、人間達が犯した罪に対して常に怒りを覚えているようだ。その罪を裁くため……そして彼が愛する者達を守るため……その使命を遂行するために、彼は存在していると言ってもいいかもしれない。……さぁ、今こそ立ち上がるがいい! 我々人間は、罪深い生き物ではあるが、だからこそ『光の力』を手に入れ、それを操る術を手に入れた。
そして その『光』を束ねて、己の心の中に眠っていた本当の自分を呼び覚まし、その力で、この世界を守るのだ!! これが……私が皆に伝えることのできる、唯一の真実なのだ。だから……もう二度と過ちを繰り返すようなことは、しないでくれ。
どうか、この世界の未来のためにも……。
私は……ずっと君のことを信じてきた。君と初めて会ったのは……君がまだ幼い頃のことだったね。君はその頃から聡明で、そして勇気のある子だった。その『優しさ』と『正義感』が、いつか必ず 君の力となっていくだろう。……だから、これからは 自分のためだけに生きていって欲しい。それが、今の君にできる最大限の罪滅ぼしだと思うからだ。……そして忘れないで欲しい。君を見守っている人達がいるということを……。
この物語の始まりとなる、約千年程前のことだと言われているのだが、『救世主伝説』は様々な形で伝えられていたようで、その中でも有名なのは、以下の話である。
まず初めに断っておくと、これはあくまでも私の個人的な意見なので、必ずしも全ての人にあてはまる訳ではないのである。しかし、これだけの人が信じていることもまた事実なのだ。
そして、これらの話は どれを取捨選択するかという問題もあるのだが、ここであえて、この四つの話を語ろうと思う。
『最初の人間』と
『最初の天使』の話。
『楽園追放』と
『大洪水』の話がそうだ。
まず『最初の人間』とは、旧約聖書に出てくる人物で、アダムという名の男のことを指しているようだ。そして、この男は神により作られた『最初に生まれた子供』でもあるのだ。……ちなみに『アダム』というのは、元々はヘブライ人の人名の一つなのだが、この男が そのアダムなのかはわからない。
そして、アダムとイブが蛇によって唆されて口にしてしまった『善悪を知る実』を食べたことにより、『禁断の実』を食べたとして、その二人以外の全ての存在が地上を追われる羽目になるという話だ。そして、その後……二人は『エデンの園』を離れ 裸でいることを恥ずかしく思ったために衣服を作ったことから、服を作るための『労働』『植物を栽培すること』『知識』……などの『善行』を得たとされているのだ。そして、この『善行』が元となって、人は神の恩寵を受けて天使達と同じ姿となり『天使』として認められるようになった……というのが、聖書における『創世記』の物語なのだ。
『楽園』とは、神の創造した美しい『庭』のことで、そこには『善いもの』だけが住まうことを許されていたのだという。
しかし、そんな美しい楽園にも やがて『悪しき者』が忍び寄ることになる。そして『善き者』達は それを追い返すために戦うことになった。
その争いの末に勝ったのは、悪魔と契約を結んだ女達だったという。
そして彼女達は『火』を使って、その煙によって『空に虹をかける魔法』を使うようになるが、それを見た神様は怒って、それをお許しにならなかったという訳だ。
しかし、それでも『楽園の住人』達は『悪』に染まることはなかった。
なぜなら『悪を罰する者』が現れたからである。それは『神の声』を聞くことを許された者……すなわち、『救世主』だったのだ。……そして彼は『神の代理者』として、『天の国』より下界に降臨したのである。
そして、彼は この世界を闇から救うために、自ら『剣』を取って戦ったのだ。そしてその戦いに勝利した後……神はその力を使い果たし、この世界に天の御国をもたらしたという。そして彼は『天国の扉の鍵』を手に入れたことにより、永遠の命を手に入れることに成功したとも言われているようだ。
『空に虹をかける魔法』とは、何のことはない。『天国の門』を開くために必要な儀式のようなものなのだ。
だから『天使』は、その力を行使するためには 特別な条件が必要になるということらしい。
そして、これは『救世主』とて同じだったのだと。……だから『救世主』がこの世に誕生するということは、それだけ大変なことだったということになるだろう。
ちなみに、彼によって倒されなかった悪魔達のことは、その後も度々登場しているのだが、それらについては割愛しておこうと思う。そして、彼らは今でも、どこかに隠れ潜んでいると言われている。そして……いつか再び
『人類』の前に現れるかもしれないとも……。
さて……次に紹介するのは、これだ。
『ノアの方舟』と『洪水』の話で、これもやはり旧約聖書の「創世記」の中に出てくる話である。
そして『ノア』は、古代オリエントのウル第1王朝(紀元前16世紀)の第5代目の王であったと言われているのだが、この男について知っていることといえば、その名と顔くらいなもので、それ以外のことは、ほとんどわかっていないに等しいのである。……というのも、彼の存在自体を疑問視する説や否定している者もいる程なので、詳しいことを知ることができないようなのだ。
ただ……この男の治めていた時代、つまり『ノアの時代』の後に続いたとされている時代は、『ティグリス・ユーフラテス川流域文明』と呼ばれていたのだが、それが、この大洪水の起きた場所と重なるという説はあるようである。




