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歴史という名のファンタジー  作者: みなと劉
44/255

44話

「へぇー、そうなんですか。でも、大徳寺は大丈夫なのか?」

「もちろん大徳寺にも報告済みだし、大徳寺派の僧侶はみんなこの寺の出身だから問題はないはずよ。それに大徳寺派は元々は京の都にあったの。それを戦国乱世で荒廃したのを機に復興させたのは私たち大徳寺派だもの。当然の権利だと思っているわ」

妙慶は誇らしげに語る。大徳寺は室町時代から京都にあり、京の文化を支えていたと言っても過言ではない存在だ。その復興に関わったことを誇りに思うのは当然のことなのかもしれない。だが、

「でも、他の宗派が受け入れてくれなかったんじゃないの?」

俺が尋ねると、妙慶は表情を曇らせる。

「その通りよ。大徳は禅宗の中でも一番の勢力を誇る宗派で、多くの寺院があるの。特に大徳寺の末寺は多いし、他の流派からも一目置かれている。ただ、この宗派が衰退したら、他は困ってしまう。だから受け入れられなかったの」

「なるほど」

「でも、そんなとき、たまたまこのお寺に立ち寄った玄昭様が『自分の死後にはこの寺に入ってくれる者はいないのではないか?』と言ったらしく、それがきっかけでこの寺で修行する人が増えたの。そして、玄昭様が亡くなると、今度はその息子である光慶様が、玄昭様に認められたということで、その遺言に従って、この寺に入ることになったという経緯があったの」

「そうだったんだ。まあ、それはいいとして、光慶殿はなぜこの寺に来たのですか?」

俺は正吉郎の方を向き、光慶に質問する。

「それは……私もこの寺に来て、いずれはこの寺を継ぎたいと思っていたのですが、なかなか良い縁に恵まれませんでした。そんな中、ちょうど光秀さんが出家したので、私のところに来ないかと誘ったのです」

「なるほど」

俺は納得した。

「はい」

「そうだったのですか。しかし、良いご縁があって良かったですね」

「ええ、本当に。こうして父上や正吉郎と一緒に修行できるなんて夢のようです」

「そうですね」

俺は笑みを浮かべながら答える。

「ところで、正吉郎と利久さんはどこで出会ったのですか?」

「ああ、俺と正吉郎は尾張の津島の商人の子で、物心ついた頃から一緒に遊んでいたのですよ」

「そうなのですね」

「ええ。それから、俺と正吉郎は二人で信長様に仕えて、今に至るというわけです」

「そうだったのね。やはり、昔から仲の良い幼馴染だったのね」

妙慶は微笑む。

「ええ、そうですね」

俺は照れ笑いをする。

「ふっ、そういうことだ」

正吉郎は俺に向かってニヤリと笑う。

「なるほど。そういうことだったのね」

「ええ」

俺が返事をすると、

「それじゃあ、私はそろそろ帰るわね」

そう言って、妙慶が席を立つ。

「あっ、もう行かれるのですか?」

「ええ、明日の準備もあるしね」

「そうでしたか」

「ええ。また明日来るわね」

「わかりました」

俺は立ち上がると、妙慶は部屋を出て行った。

「さて、俺も帰ろうかな」

「そうだな。では、失礼します」

「おう、気をつけて帰れよ」

俺と正吉郎は挨拶をして、寺を出ると、俺たちは家路についた。

◆天文22年(1553年)7月13日尾張国 那古野城 翌朝、俺はいつものように朝稽古を終えて朝食を食べ終えると、茶室に向かった。今日は正吉郎との約束の日であったからだ。

「おはようございます」

「おお、来たな」

「はい」

「そういえば、昨日の妙慶姫の話なのだが……」

「はい?何でしょうか?」

「実は、妙慶に結婚を申し込もうと思っているのだ」

突然の報告に俺は驚く。

(おい、まだ早すぎるだろ!)

思わず内心ツッコミを入れてしまった。

「はぁー、それはおめでとうございます」

俺は動揺しつつも祝いの言葉を口にする。

「うむ。それでだな。政にも協力してもらおうと思ってな」

「もちろん協力させていただきます」

「それはありがたい。実は、妙慶に求婚するに当たって、織田家と斎藤家の両家から嫁を迎えたいという話が上がっているのだが、どうしたものかと思っていてな」

「確かにそれが無難かと思います」

俺も前世で結婚したときのことを思い出す。俺の家は大して裕福ではなかったが、父が資産家であったため、見栄を張って、結婚式を盛大に挙げて親戚一同に祝ってもらった記憶がある。だが、父の会社の先輩の話では「披露宴などやらずに質素に挙げた方が良いぞ」と言われたことがある。理由は、「お金が掛かるから」だそうだ。要は経済力を示すのには良いが、金銭感覚のおかしい人間は信用されないということだ。

つまり、正吉郎が妙慶に好意を持っていることが伝わるように、俺も正吉郎に協力しなければならないということである。俺としても妙慶が妻になってくれれば、将来的には義理の姉になるわけで嬉しくはある。それに妙慶が正室になれば、俺が次期当主に内定した時に、正吉郎が後ろ盾となり、俺の派閥となるだろうから、願ったり叶ったりである。しかし、だからといって、俺の一存で安易に承諾するのはまずい。ここは慎重に判断する必要がある。

「そうか。ありがとう。ただ、妙慶はまだ15歳だ。それに、この寺には年長者も多い。だから、妙慶が20歳になるまで待ってくれと言ってきたら、その時は受け入れようと思っている」

「そうですか。では、そのことも含めて妙慶殿と相談されてみてはいかがでしょう?」

「ふむ。それもそうかもしれんな。分かった。妙慶と話し合ってみることにしよう」

「よろしくお願いいたします」

「ああ。ところで、話は変わるが、先日に我が家臣となった滝川一益がお主の家臣になりたいと言っている」

「そうなのですか。なぜ私に仕えようと思ったのですか?」

「ああ、何でもお主に惚れたらしい」

「……そうですか」

俺は頭を抱えたくなる。こんなときに何を言っているんだと思う。

「まあ、本人の意思を尊重し、しばらく様子見をするつもりだ。だから、少し時間をくれないか?」

「分かりました。その件は承知しました」

「そうか。すまんな」

「いえ、気にしないでください」

「そうか。そう言ってくれて助かる」

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