43話
「そのままの意味だ。先ほどの戦いの様子を見てわかった。お主達は全力を出していなかった。つまり、お互いに手加減していたということだ。だから、この戦ではお互いが無事で済む」
そう言って、信虎は晴信達の方を見る。
「そういうことですから、もう争う必要はありませんよね?」
晴信は尋ねる。
「そうだな」
信玄は納得した様子で答える。
「それじゃあ、今日はこれで解散にしましょう」
「ああ」
こうして、この日の戦闘は終了した。
・この後、晴信は部屋に戻って休んだ。一方、信玄は信虎の元へと向かった。
・その後、晴信は部屋を出て武田軍の元へ戻ろうとした。その時、
「晴信殿、お待ちください」
そう言って一人の男が近寄ってきた。
「誰だ、貴様は?」
晴信は尋ねる。すると、男は名乗りを上げた。
「初めまして、織田家の真田幸村と言います」
「えっ?」
晴信は再び驚いた表情を浮かべる。
「何を言っている?俺には戦う理由などない」
「確かに戦う理由はありません。でも、あなたにも戦うべき理由はあるはずです」
「それはどういうことなんだ?」
「それは……今は話すことができません」
「どうして?」
「それは……すみません」
「どうして謝る必要がある?」
「それは……今の私が言える立場ではないんです」
「どういうことだよ?さっきから全然話が見えないんだけど」
晴信は困惑していた。
「とにかく、晴信殿に協力してほしいんです。どうかお願いします!」
すると、晴信はため息を吐く。
「仕方がない。俺も戦う理由はないし、協力しよう」
「ありがとうございます!」
そう言うと、幸村の笑顔は輝いていた。
こうして、『織田軍との決戦』は織田軍の勝利で終わった。これにより、織田家はさらに勢いを増した。一方の信玄率いる武田軍は、織田家に敗れて大幅に戦力を減らしてしまった。特に晴信との戦いで大きな損害を受けたようだ。
それから数日後、信長は甲斐へやって来た。そして、今回の戦いについての報告を聞いた後、
「よくやった。これでこの国も安泰だ」
と、信長は満足そうな笑みを浮かべて言った。
しかし、その一方で晴信は複雑な気持ちを抱いていた。それは、今回の戦で織田家を勝たせることができなかったからである。しかし、この責任は自分にあると晴信は考えていた。そこで、
(いつか必ず織田家と決着をつけてやる)
と、心の中で誓うのであった。永禄10年(1567年)11月1日、俺は正吉郎と一緒にとある寺に来ていた。この寺は臨済宗の大徳寺といい、かの有名な大徳寺の末寺である。そして、ここは大徳寺派の本山である大徳寺の京都分院である。大徳寺派というのは大徳寺の他にも聚光院や相国寺などの寺院があり、大徳寺派は日本最大の宗派となっている。ちなみに、この大徳寺派は元は京の都にあったのだが、応仁の乱により荒廃してしまったので、鎌倉の建長寺の開山の蘭渓道隆の弟子で、当時は一介の僧に過ぎなかった了庵宗哲が復興させたのだ。
ところで、なぜ俺たちがこんなところに来たかというと、もちろんお茶をするためだ。その相手はもちろん利久だ。今日は久しぶりに3人で茶会をすることにした。
俺たちが茶室に入ってしばらくすると、一人の女性がやってきた。彼女は妙慶という名の女性で、この寺で修行している尼僧だ。彼女の父もまた僧侶で、名を光秀という。光秀は大徳寺の第二代住持で、織田信長とも関わりが深い。また、史実では『本能寺の変』において主君である織田信忠に同行しており、明智城にいたところを裏切った明智光秀によって殺害された人物である。
まあ、それは置いておいて、妙慶さんはとても美人だった。年齢は20歳くらいだろうか。その美しい容姿に思わず見惚れてしまうほどだった。そんな彼女に案内されて席に着く。
まず最初に点てる役は当然のように正吉郎が務める。彼は慣れた手つきでお湯を入れていく。そして、あらかじめ温められていた茶碗にお湯を入れて蓋をし、2分ほど蒸らして蓋を開ける。すると、抹茶の良い香りが漂ってくる。
「おぉ、良い匂いですね」
俺がそう言うと、
「これはとても美味しそうですな」
「楽しみでござるな」
正吉郎に続いて利久も感嘆の声を上げる。
「それじゃあ、いただきます」
そう言って、俺は抹茶を飲む。
「うん、やっぱり正吉郎が立てるお茶は格別だな」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
俺が褒めると、正吉郎が嬉しそうにする。
「本当にお上手なのですな」
「ええ、まるで名人芸ですな」
「それほどでもないですよ」
「いやいや、謙遜することはないぞ」
「そうですな」
「いや、本当に……」
「いやいや、本当に……」
俺と利久はお互いに顔を見合わせて笑い合う。
「ふっふっ、相変わらず仲が良いのね」
その様子を見ていた妙慶は微笑む。
「ええ、親友同士だから」
「そうですか」
「ところで、今日は何用でこちらへ?」
俺が尋ねると、
「そう言えばそうよね」
「実は、先日父上に『今度上洛するのでついてこい』と言われたのです」
「えっ?それはいつの話?」
俺が尋ねると、
「昨日の晩の話だから明後日だと思うわ」
「なるほど」
どうりで急に話が決まったと思った。
「それで明日ここへ来るように言われているの」
「そうなんだ」
「ええ、だからここに来たわけ」
「そういうことだったのか」
俺は納得した様子で言う。
「はい」
「そういえば、二人はどうしてこの寺に入信されたの?」
気になった俺は二人に尋ねた。すると、
「私は元々父の後を継ぐためにここで修行をしていたの」
「ということは、実家の方は大徳寺の方だったのか」
「そうなの。だから最初は大徳寺派の臨済宗の寺院で働いていたのだけど、あるとき父がこの寺で修行していた縁で、ここに入信することになったの」
「そうか。しかし、大徳寺の末寺はいくつかあるだろう。わざわざ分院のこの寺に入ったのはどうしてなんだ?」
「確かに普通なら総本山の大徳寺に入ると思うけど、この寺には大徳寺の第三代住持を務めた玄昭義演という方が住んでいて、その方は大徳寺派を改革しようとしたらしいんだけど、結局大徳寺派と揉めて追放されてしまったの。だから今ではここは分院になってるの」
「そうなんですか」
俺は驚いた。史実でも大徳寺派との対立はあったが、まさか追放されたとは思わなかったからだ。
「そして、その人は大徳寺派を追放された後、この寺の住職となり、この寺の再興に尽力したの。そして、その人が亡くなってからは、この寺の住持が代々大徳寺の住持を兼ねるようになったの。そして、その方が亡くなった後は私が住持を継いでいるって訳。ちなみに、父はその方の娘婿だったの」




