37話
信長の言葉を聞いた義昭はすぐに反論した。
「おい、無礼ではないか!貴殿は誰に向かって口を利いていると思っている」
「ふん、生意気な奴め」
信長は鼻で笑った。すると、
「その辺にしておけ」
そこに、一人の男がやって来た。その男は『細川藤孝』と言い、幕府の重臣の一人だ。
「細川か」
信長はそう呟くと、ニヤリと笑みを浮かべる。そして、
「それで、何か用か?」
「はい、実は折り入ってご相談したいことがありまして」
「ほほう……なんだ?」
「実は、我が主君である三好家のことです」
「……なに?つまり、あの謀反を起こした者どもの件か?」
信長は目を細める。すると、今度は『和田惟政』がやってきた。
彼もまた重臣の一人である。
「左様にございます。どうかお聞き入れいただければ幸いでございます」
そう言って、頭を下げる。信長はしばらく沈黙した。
「どうした?返答やいかに?」
「ふっ、断る!」
「……!?なんですって!?何故でしょうか?我々は三好家と同盟を結んだのでは!?」
「確かにそうだ。だが、俺には関係ない話だ」
「そんな!」
「ふっ、話は終わりだ。俺は忙しいのだ」
信長は立ち去ろうとする。すると、
「待て!まだ話は終わっていないぞ!」
藤孝が呼び止める。
「なんなのだ!もうよい!これ以上邪魔をするなら斬り捨てるぞ!」
信長は苛立った表情で言う。
「まぁ、そう焦らずに落ち着いてくださいませ」
「はっ!ふざけているのか!」
「いえ、決してそのようなことは……」
「ならば、早く要件を言うがよい」
「はい、実は……」
「なんだ?」
「松永弾正少弼久秀、および毛利新介輝元らを味方に引き入れることに成功致しました」
「おお、それは良かったではないか」
「ありがとうございます!これも、織田様のおかげでございます」
惟政は再び頭を下げた。
「ところで、その二人は今どこにいる?」
「はい、二人とも今は京に滞在しております」
「なるほど、わかった。あとで会いに行くことにしよう」
「分かりました。では、失礼します」
そう言うと、藤孝たちは部屋から出て行った。
「さて、俺も行くとするかな」
信長は立ち上がり、その場から去った。
その後、久秀たちと会った信長は、彼らに対してある命令を下した。
「お前たち三人は、それぞれ別々の大名に仕えろ」
信長は久秀たちにそう告げた。
「えっ?どういうことですか?」
輝元は驚いた様子で尋ねる。
「そのままの意味だ。お前たちを他の大名たちのところへ送り込むのだ。そして、そいつらを利用して、どんどん勢力を拡大させていくのだ。いいな?」
信長は淡々と言う。
「承知いたしました。必ずや成し遂げて見せましょう。そして、天下布武の実現を!」
「うむ、期待しているぞ」
こうして、三人組はそれぞれ別の国へと向かっていった。
それからしばらくして、信長のもとに『明智光秀』が訪ねてきた。
「織田様、先程細川殿がいらっしゃいました」
「ああ、聞いておる。それで?」
「実は、織田様に会いたいとのことでして……」
「なに?まさかとは思うが、あの三人のことか?」
「はい、恐らくはその者たちかと」
「分かった。すぐに会おう」
信長はそう答えると、光秀と一緒に細川がいる場所へ向かった。
そこには、『和田惟政』『中川清秀』が待っていた。
「織田様、このたびはご面会いただき誠に光栄でございます」
「良い、それより何の用だ?」
「はい、まずは私共のことについて報告に参りました」
「ほほう、聞かせてもらおうか」
「はい、実は……
こうして、久秀たちがそれぞれの大名に仕えることに成功したという話を聞いていた信長は、「よし、これでしばらくは大丈夫だろう」とホッとしたのであった。
【解説】今回の話について少し説明していきますね。
まずは、足利義昭の話からですね。彼は室町幕府の13代将軍です。そして、史実通り信長によって追放されてしまいました。
次に、久秀たちの話ですが、彼らは三好家を裏切って信長についたものの、結局は捨てられてしまったのです。しかし、それでもめげずに再び忠誠を誓ったというわけです。
最後に、信長の命令の話ですが、これはいわゆる『天下布武計画』の一環です。これによって、信長の勢力はさらに拡大することになります。
永禄11年(1568年)7月、信長の元に『今川義元』からの書状が届いた。その内容は、信長と同盟を結ぶという内容だった。
「ついに来たか」
信長はニヤリと笑みを浮かべると、家臣を集めてこう言った。
「皆のもの、よく聞け!俺はこれより、駿河に向かう!準備しろ!」
信長の言葉を聞いた家臣たちは、
「「「「おおおぉー!!!」」」」
大声で叫びながら、立ち上がった。
一方その頃、三河では……
「ふっ、いよいよだな」
『松平広忠』がそう呟くと、隣にいた『酒井忠次』が言った。
「父上、ご安心ください。私がついていますので」
「そうか……頼んだぞ」
「お任せください」
そう言うと、広忠は部屋から出て行った。
すると、今度は家臣の『本多正信』が話しかけてくる。
「殿、私も同行してもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わん」
「ありがとうございます」
正信は頭を下げると、部屋を出て行った。
そして、信長率いる軍勢は、無事に駿府に到着した。その後、城内に入った信長は、そこで『今川義元』と対面した。
「ようこそおいでくださりました。お初にお目にかかります。某が今川氏真でございます」
義元は頭を下げる。すると、信長も名乗る。
「うむ、よろしく頼むぞ」
「はい!それで、本日はどのようなご要件でしょうか?」
「無論、同盟締結のために参ったのだ」
「それはありがたい!実はこちらからも同盟を申し込もうと思っていたところでした。どうか、これから末永い付き合いをお願いします」
「うむ、もちろんだ。それと、そちらにはもう一人来ているそうだな?」
「はい、そうですけど……」
「そいつに会わせてくれないか?」
「分かりました。それじゃあ、連れてきます」
「うむ、待っているぞ」
こうして、信長と義元の会談が始まった。
「初めまして、織田信長様。私は、北条氏規と申します」
「ああ、俺は織田信長だ。よろしくな」
二人は握手を交わす。
「ところで、そなたは北条家の者だと聞いたが、間違いないのか?」
信長が尋ねる。
「はい、その通りでございます」
「なるほど。だが、何故わざわざここへ?」
「はい、実は私の父は氏康と言います。つまり、現当主である私の父上は、織田様の家臣なのでございます」
「なるほど。そういうことか」




