34話
義元の姿を見ていた徳川家康は『勝てるはずがない』という恐怖に襲われていた。そのため、彼は震えてまともに立つことすらできなかった。そしてついに、義元の前に姿を現してしまった。そして彼は地面にひれ伏し、命乞いを始めた。
「お願いします!!どうか命だけは助けてください!!!」
家康は涙ながらに叫んだ。
しかし、義元は冷たい態度を取り続けた。
「貴様は、自分が何者なのか忘れたか?我は天下を統一するために生まれてきた男。つまり、今川家の当主なのだ。そのような者が簡単に降伏など出来るわけなかろう」
義元の言葉を聞いた徳川家康は絶望した。そして、そのまま気絶してしまった。
その後、今川軍によって家康は捕らえられてしまった。
家康は処刑されそうになる寸前、義元の正室『築山殿』が家康を助けるために身代わりになった。
「どうか、この子だけでもお許しいただけないでしょうか。この子は私の子供なんです」
そう懇願した。しかし、義元は決して首を縦には振らなかった。そして、翌日。
徳川家康は処刑された。
そして、今川軍は尾張へと攻め入った。
~第一章・完 ~ 【解説】
まず初めに、桶狭間の戦いとは『織田信長』が今川義元を打ち破った戦いのことを指します。この戦いの結果、今川家は滅亡の危機に陥りました。しかし、織田家の傘下に入り、なんとか生き延びることに成功。その後は織田家を乗っ取り、最終的に全国を支配することに成功します。
さて、ここからは少し歴史について語りましょうかね。
まずは、今川家の方から。
今川家と織田家は同盟を組んでいました。この関係は信長の父である織田信秀が生きていた頃から始まり、信秀の死後も続いていきます。
その後、今川家当主の今川氏真は織田家に従属する形で駿河の支配権を奪われてしまいます。さらに、三河の国まで奪われてしまう事態にまで発展してしまいました。
一方、そのころの信長は父親の『故信秀』の元で暮らしていました。この頃はまだ、家督を継ぐ前なのでただの一兵卒として働いています。
そんなある日、一人の兵士がこんなことを言い出しました。
「最近、今川家がやばいらしいぞ」
それを聞き、信長はすぐに今川家の元へ行こうと決心しました。そして、すぐに馬を走らせて今川領へ向かいます。
その道中、ある男と出会います。その男は『太原雪斎』と言い、今川家中でも有名な僧侶です。彼もまた、今川家へ行く途中だったようです。
二人は意気投合し、一緒に今川領内へ向かうことに決めました。
そして、今川領の手前で二人は野宿することになり、そこで酒を飲み交わしながら話を始めました。
「私は今こそ、織田家の領地を奪い返す絶好の機会だと考えているのです」
雪斎は真剣な眼差しで言いました。しかし、信長はこう言います。
「ワシは、そんな考えは全く持ってはおりません。何故なら、あの今川家は強すぎる。もし戦ったところで負けるのは確実でしょう。それに、今の今川家に味方をしても何も得をしないと思うのです」
すると、雪斎は大きく溜息をついてこう言いました。
「なるほど、ではどうすればいいと思いますか?」
それに対し、信長は自信満々にこう言い放ちました。
「今川家から独立して、新たに大名に名乗りをあげればよいのでは?」
「独立ですか……面白いですね。では、どちらがより優秀な国を作れるか勝負をしませんか?勝った方が今川家当主になるというのはいかがでしょうか」
こうして、二人の勝負が始まりました。
翌朝、信長と雪斎は今川家へ到着し、早速今川家の当主がいる場所へ向かった。
そこには、今川家当主の『氏真』と重臣の『飯尾乗連』と『太原崇孚』がいた。
彼らは、二人を見るなり警戒心を強めた。そして、すぐさま武器を構えようとした。しかし、それを制止して義元が口を開いた。
「お前たちは誰だ?名を名乗れ」
それに対して、二人は堂々と自分の名前を名乗った。
「ワシの名は、織田上総介信長と申します」
「私の名前は太原雪斎と申す。以後、お見知り置きください」
その名前を聞いて、義元は驚いていた。その顔には動揺の色が伺えた。
「織田上総介信長だと!?それは、本当なのか?」
義元は声を大きく上げて驚いた。
「はい、間違いありません。彼は『日ノ本の覇者』となる人物です」
雪斎がそう言うと、義元は『織田信長』という人物に興味を持ち始めた。
「ほう、『日の本の覇者』とな。それは、大層な肩書だな。しかし、今はそのような話をしている場合ではないのだ。我々は急いでいるゆえ早く用件を言うがよい」
義元は冷たい口調で言う。
それに対し、信長は毅然とした態度を取り続けた。
「単刀直入に申し上げます。我々織田家は今川家と対等の関係を結びたいと考えております。どうか、傘下に入れていただきたい!!」
そう言って、地面にひれ伏した。
義元はその様子を見て、ニヤリとした笑みを浮かべた。
「ほぅ、同盟を組みたいと申すか。しかし、貴様らのような弱小勢力など我が今川家にとっては足手まといにしかならない。故に、同盟など結ぶ必要は無い」
義元の言葉を聞いた信長は怒りを覚えた。しかし、それと同時に『このままでは、勝てない』という焦りを感じた。
「お言葉ですが、今川家は織田家よりも格下の存在。これは紛れもない事実なのです。ならば、こちらが下手に出るしか生き残る道は残されていないはず。どうか、どうかお願いします!!」
信長は必死になって懇願した。しかし、義元は決して首を縦には振らなかった。
そして、ついに痺れを切らせたのか太原がこう言った。
「義元様、ここは一度彼らと話し合ってみてはいかがでしょうか」
すると、義元は大きく溜息をついた。
「はぁ、仕方ないな。では、まずは貴様に交渉を任せる。よき判断を期待しているぞ」
義元は太原に向かってそう命令を下した。そして、太原は信長に対してこう話しかけてきた。
「交渉と言っても、そんなに大した話じゃない。我らは織田家の力を借りるまでもなく、自分たちの力で天下統一を果たすつもりだからな。よって、同盟を組む必要性がない」
太原は余裕の表情を見せていた。
しかし、信長は冷静なまま言葉を続けた。
「同盟を組まなくてもよいのであれば、そちらが欲しいものを一つだけ与えてやろう。それが何か分かるか?」
信長の質問に対し、太原は少し考えた後に答えを口にした。
「ふむ、それは何なのだ?」
その問いに、信長はすぐに返答する。
「今川家の領土の一部を与える代わりに、ワシの傘下に入ってもらう。これなら、どうだ?」
信長はニヤリとして言った。太原の顔色が変わる。そして、雪斎の方を向く。雪斎もまた、小さく微笑んだ。
太原は少し悩んだ後、大きな声で叫んだ。
「よし、分かった!!その提案を受け入れよう。これで良いだろう?」
こうして、織田家対今川家の戦いは織田家の勝利に終わった。
その後、信長はすぐに今川家の領地から立ち去った。
しかし、この行動こそが後の悲劇を生むことになるとは、この時誰も思っていなかった。
~第二章・完
第三章
『今川家との戦い』に続く……




