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ジャスター

「ジャスター、そのお金で家を買って!」


「え?家、ですか?」


ウサギの売上の一部を持って来たジャスターに私はそうお願いした。


「何故ですか?理由をお伺いしても?」


言わなきゃ買ってくれない雰囲気だったので私は色々と考えて『未来予知』の能力を少しだけ持っている事にした。


「見えてしまったの、私の未来が」


そう言って断罪されて追放される未来の話をしたらジャスターは興味深そうに話を聞いてくれた。


「未来予知、ですか...確かにそういう能力を持って生まれる人間はいますね。俄には信じられませんがお嬢様が嘘をついているようには見えない...」


「嘘は言っていないわ...現に今学園では私は何もしていないのに『悪女』になっていて、殿下にもすっかりと嫌われてしまっているの...殿下は他の女性に夢中だし...」


「それが信じられないんですよね...お嬢様が悪女?!それこそ有り得ないじゃないですか」


「でも現に私は平民を虐める悪女になっているわ」


「...不思議ですよね、何かおかしな事が起きているとしか考えなれないのですが」


「私もね、否定はしたし、本当に何もしていないのだけど、私がいない日の出来事も私がした事になっていて、それを誰も疑問にも思わないの。これは神の力でも働いていて、私を排除する方向に動いているとしか考えられなくて...だから諦めたのよ」


「...分かりました。家は購入しましょう。でも僕も僕なりに何が起きているのか調べてもいいですか?」


「え、えぇ、それは構わないけれど」


「家の希望はありますか?何なら何時でも住めるように家具等も揃えておきましょうか?」


「そうね、そうして貰えると助かるわね。希望は、そうね、追放される場所からそう離れていない事と、出来れば近くの町からもそう遠くないと助かるわね。自給自足が少しでも出来るように庭もあるといいかもしれないわね」


「場所は追放されてからでも移動すればいいのでは?もしそうなるのならば私が先回りして待機すれば新居までご案内致しますし、追放された場所の近くに新居を構えるとお嬢様を排除しようとする謎の力に新しい生活を妨害されるかもしれませんし」


「それもそうね。そんな事考えもしなかったわ」


私とジャスターは暫くの間追放後の新居の事で話し合った。



ジャスターは不思議だった。


このお嬢様は何を言い出すのだろうか?と。


話を聞いて嘘をついているようには見えなかったが、このお嬢様が悪女?


その点がどうしても腑に落ちない。


お嬢様を知ったのはまだお嬢様が小さく、婚約も決まっていなかった頃だった。


その頃からお嬢様は屋敷中の皆から愛されていて、誰もが「お嬢様は天使だ」と心から言っていた。


貴族特有の傲慢さは全くなく、誰にでも気さくで愛らしいお嬢様を僕もとても気に入った。


ある時屋敷の門の前に怪我をして蹲る子供がいたのだが、それに気付いたお嬢様はあろう事かその子供を屋敷に迎え入れ、完全に傷が癒えるまで甲斐甲斐しくご自身の手で介抱した。


両親もなく家もないと聞くとどうにか出来ないかと両親に頼み込み、今ではお嬢様を崇拝する使用人の1人となっている。


他にもお嬢様は同じような理由で人や動物を拾って来ては助け、しかもただ助けるのではなくその後の生活がきちんと送れるようにと両親に頼む為、お嬢様に助けられた者達は本当の意味で人生を救われるのだ。


だから屋敷内だけでなく領地内でもお嬢様の評判は凄ぶる高く、誰もがお嬢様の優しさを本物だと知っている。


慈善事業にもお嬢様は強い関心を持っていて、お嬢様の提案で色々な改革がされた為にモルガン領では読み書きや計算の出来ない者はおらず、モルガン領出身というだけである程度の信頼を得る事が出来るというステータスまで出来上がっている。


しかし当の本人は自分が何かをしたという意識は全くなく、自己評価も低めで、決して驕る事も偉ぶる事もない。


どうやったらこんな子が出来上がるのか?


僕はモルガン家の教育が特殊なのかと考えたのだが、他のご兄弟を見る限り特段他の貴族と変わりないので『あぁ、お嬢様が特別なのだ』という結論に達した。


そんなお嬢様が悪女?!


それこそ有り得ない。


モルガン領の皆に知れたら暴動でも起きかねない事が学園で起きているようだ。


これは調べてみる価値がありそうだ。


お嬢様は神なんて言っていたが、僕からしたらそんな神がいるのならば何とも無能な神だと思う。


お嬢様を不必要として排除するなんて、頭がおかしいとしか考えられない。


そんな事を考える僕も、相当なお嬢様崇拝者の1人なのだと思う。

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