ヒロインの変貌
一日のPV数が5000に迫る勢いでしたΣ( Д ) ﻌﻌﻌﻌ⊙ ⊙
沢山の人に読んでいただけているようで感謝です。
拙い、色々と甘い文章ですが読んでいただけて感謝いっぱいです。
「あ、兄上?!」
フロアに王子の情けない声が響いた。
私の隣にいたはずのジャスターはすっかりと様相を変え、茶色い髪と瞳の何ともパッとしない姿から金髪碧眼の美丈夫へと変貌していた。
「ジャスターが王太子ぃぃぃ?!」
私の驚愕の叫びがフロアに響いた。
「黙っていてすみません、お嬢様」
ジャスターとはまるで違う顔で美しく微笑まれると胸がドキッとした。
破壊力満点の笑顔ってこういうのを言うんだろうな...。
「王太子殿下にお嬢様って呼ばれるのは、どうかと思います!」
「姿が変わっても中身はジャスターです。ずっとお慕いしておりました、お嬢様、いえ、アイリシャス嬢」
「お、お、お、お慕いぃ?!」
「はい」
とても爽やかすぎる笑顔でサラリとそんな事を言われ、何と返していいものかも分からず口があんぐりと開いてしまっていた。
「あ、兄上!何を馬鹿な事を仰っているのですか?!そいつは罪人ですよ?!兄上は王太子なのです!罪人を慕っている等と間違っても口にしてはいけない!」
王子の言葉にロメオ様を纏う空気が変わったのを感じた。
もしかしなくても怒ってますよね?
「罪人?」
「そ、そうです!その女は罪人!ここにいるリアを殺そうとした罪人です!」
「へぇ、リア、ねぇ。で、そのリアとやらはお前の何なんだ?お前の腕にしがみついているようだが、それ程までに密着を許す関係だと思っていいのだね?」
「リ、リアは、僕の大切な人です!」
「ほぅ、大切な人ねぇ。で?お前はその大切な人の顔をハッキリと確認した事があるのかい?」
「何を馬鹿な事を!あるに決まっているじゃないですか?!」
王子の腕にしがみつきながらも顔を上げないヒロイン。
「なら確認するがいい。今ならその女の力ももう及ばないから、真の姿が見れるだろう?」
「真の姿?何を言っているのですか?シシリアは...シシリア?え?シシリア?お前がシシリア?」
こちらからは王子の背で見えないが、ヒロインの顔を覗き込んだ王子の様子が明らかにおかしい。
それを見てロメオ様が意地悪く、でも楽しそうに笑っている。
「この学園はね、浄化を何年も行っていなかったせいで魔界の一歩手前の状態まで落ちていたんだよ。そこに膨大な魔力を垂れ流すその女が入学してきた。その女の魔力を受けたこの学園は、この学園そのものをその女の理想の世界に作り上げてしまった。凡そ「小説のように王子に愛されたい」「皆に愛される自分になりたい」とでも思っていたんじゃないかな?その願いをこの学園は叶える為に力を使い始めた。その女の都合のいい世界にね。で、結果としてその女は歩くだけでも好感度を上げ、アイリシャスはいるだけで悪女となった。王子の婚約者は小説では大抵が愛する2人を引き裂く悪役だからね」
「う、嘘だ!」
「その姿こそがその女の真の姿だよ?それでも疑うのか?」
「あ、兄上がシシリアの姿を魔法で変えたのでしょう!」
「何の為に?そんな事をして僕に何の利がある?僕はね、お前とアイリシャスが婚約破棄してくれればそれで良かったんだよ。でもね、何もしていないのに悪女にされて一人ぼっちだったアイリシャスを見ているのも辛かった。だから動いた。それだけだ。その女の事なんて最初から眼中にもない。...ああ、でも学園から一歩外に出たその女の姿を初めて見た時には笑いが堪えられなかったけどね」
「そ、そんな...」
王子が動いたのでヒロインの姿がハッキリと見えた。
「え?誰?」
思わずそう口から出ていた。
髪や目の色こそヒロインと同じだったが、そこにいたのは全くの別人。
好奇心旺盛そうなクリクリと大きな目は何ともこぢんまりとした、言い様によっては愛嬌のある瞳だとも言えるとても小ぶりな目だし、鼻は少し上向きのぼってりとした鼻になっている。
そして透けるように白かった肌はこんがりと日に焼け、鼻の頭から頬にかけて濃いソバカスが顔中に散らばっている。
艶やかな髪はパサつき畝り、全体的に何とも残念な感じが否めない。
愛らしい、愛嬌のあるお顔だと言えるが、前の顔から違いすぎていて本当に「誰?」って感じになっている。
「だ、だが、その女が罪人なのには変わりはない!シシリアはその女に殺されかけたんだ!」
「まだ言う?じゃあ逆に聞くけど、アイリシャスが悪だと決め付ける根拠は何?この中で実際にアイリシャスがその女に何かしているのを見た者はいる?」
周囲がザワザワとし始めた。




