表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/108

3話06



 いきなり登場した【九十九百恵】なる人物に戸惑う(アタシ)。なんて読むんでしょうか……【つくもももえ】? 絶対、渾名は【ももちゃん】でしょうね。ワンチャン【もももちゃん】かもしれませんが……。


 (アタシ)は冷蔵庫から冷えたカードを取り出しました。これで二枚目です。まったくもって関連性の無い二枚のカードを見比べてみても、何もわからないですね。(アタシ)は、さらなる手がかりを求め、キッチン周辺を隅から隅まで、しらみ潰しにしていきました。

  



 ━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━




 キッチンでの手がかり掃討作戦は徒労に終わりました。はい、(アタシ)も探しながら気づいたのです。これまでに発見した2枚のカードは鍋・冷蔵庫の中にありましたよね。それは隠されていたというよりは……置かれていたという方が適切な表現でしょう。つまりですね、キッチンを洗いざらい調べた所で見つけられる訳がないんですよ。多分、カードはわかりやすい場所に配置されていますね……間違いないです。ところで、キッチンを洗いざらいって、ちょっと面白くないですか? ほら、キッチンだけに……ってね。


「次は……リビングを探してみますか」


 誰も聞いていないにもかかわらず、自身の次の行動を独り言として漏らす(アタシ)。よくある事ですよね。


 リビングには小さな書棚とソファーが置かれていました。書棚には本も詰められていますね。そのタイトルを見ると……ミステリーや歴史本。そして恋愛小説が数多く並べられていました。


「この本って……乃済さんが知ってる本です?」


 (アタシ)は、私達が捜索している様を静かに見守っている乃済さんに尋ねました。


「ええ。その本は私と愛恵が一緒に語り合った事のある本です。私達にとっては思い出深い本なんですよ」


 (アタシ)は書棚から一冊抜くと、それを流し読みしてみました。恋愛小説みたいです。ざっと見、ダブルヒロインの恋愛物のようですね。

  



 ━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━




 沢山の本の間にカードが挟まれてはいないだろうか。(アタシ)はソファーに腰掛けながら、一冊一冊を丁寧に調べていきます。ですが、希求のカードは出てきません。たまに挟まれている(しおり)がある度に、(アタシ)は一喜一憂したものです。


 パタンと本を閉じました。最後の本まで調べ終わった結果、(アタシ)の手元には各出版社の栞が集められたのです。こう見てみると……それぞれに違っているものですね。同じ出版社の物でもデザインが異なる物があったりして興味深いです。そして私の探しもの……プラスチック製のカードは出てきませんでした。


「ふぅ〰」


 書棚の探索が徒労に終わった(アタシ)は、ソファーに大の字で横たわります。フカフカなソファーは(アタシ)を包み込むようで、(とろ)けるようになってしまいます。全身から力が抜け……だらけたまま放り出された足、弛緩しきった胴、怠慢な腕は動きを見せません。そして手だけは落ち着く場所を求めて……緩慢に動いていました。


 手だけが動いていたのには理由があります。ほら、ソファーって座る部分と背もたれの間に隙間があるじゃないですか。よくほこりが溜まっていたり、虫の死骸が入ってたりする場所です。そこに手を入れると落ち着きますよね? え、落ち着きませんか? まあ……(アタシ)には、それが落ち着くんです。そして(アタシ)の手はソファーの狭間を求め旅立つと、遂にはそこに到着し……念願の手をそこに突っ込む事が出来ました。その時です。


「あ……」


 なんと、そこにあったんです。プラスチック製のカードが……。


 (アタシ)はそのカードを掴むと、飛び跳ねるように起き上がりました。(アタシ)の急激な動きに、フカフカのソファーからは静電気の音がパチパチ聞こえています。さあ、今度は何が書かれているんでしょう……心して、カードを裏返しにすると……そこに書かれていた文字を見ました。


【峰仙一】


「誰?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ