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2話04



 まずは、ここまでの話をまとめてみましょうか。言い回しが古かった事もあって確認が必要ですよね。


 えっと……大庭二郎政直さんは杉家に生まれて、出来の良いお子さんであったみたいです。そして杉家は嫡男が早くにして亡くなっていた。正妻も亡くなっていて、二郎さんを含め三郎さん以下はお妾さんの子供であり、家督の継承がどうなるかって話でしたね。


「よろしいですか? 『三郎以下』と仰ったと思うのですが【以下】と言うからには、何人おられたのでしょうか?」


 コムさんが大庭さんに問い掛けました。


「そうですね……与三郎が末弟となります」


 あ……これ、(アタシ)知ってますよ! 与三郎って十三番目の男子なんです。ほら、那須与一っているじゃないですか。与一と言うのは十一番目を意味しているんです。つまりですね、与とか又が頭に付いてたりすると、十の位に突入しているんですよ。


「なるほど……わかりました。ありがとうございます」


 コムさんは回答にお礼を述べていますね。なんでしょう……その回答を聞いたコムさんからは、少し余裕が感じられます。


「大庭さんは兄弟の中でも優れていたと言っていましたけど、どれくらい凄かったんですか?」


 コムさんに負けじと(アタシ)も質問を投げかけました。引き出せる情報は一寸でも引き出さなきゃ損ですからね。今回こそは、余裕ぶってる人に勝たないといけません。


「そうですね、戦国の世ですので戦働きに必要となる、槍術や弓術においては兄弟に負けることはありませんでした。そして父の隠居前の事なのですが、領内で些細な合戦が起こった時のことです。父・兄弟揃って参陣した際、父と拙者のみが騎乗をして戦に臨んだのです。当時の杉の家では馬を用意するにも2匹が限界でして、父は当然のことながら、兄弟を差し置いて拙者が騎乗を許されたのは武士の誉れでありました」


 おぉ……すごいですね。親の期待を一身に受けているのがわかります。


「更には拙者、杉の家が仕える殿からの覚えもよく、しばしば城内にて学問の講義を受けることが出来まして……多少なりとも漢籍の知識は得ておりましたし、和歌を詠む事もありました」


 実は大庭さんって、実はすごいエリートだったりします? でも……まさか、その人がこっちの世界では健康サンダルを履いているとは思いませんよね。


「話を戻してよろしいでしょうか? 拙者は兄弟と共に父に呼ばれたのです。その際には父も隠居を考える(よわい)となっており、拙者だけではなく兄弟も家督の話が告げられるのであろうと感づいておりました」


 さあ……事件の予感がしますね。(アタシ)は、より注意深く大庭さんの話に耳を傾けます。


「その予想は正しく、呼ばれた理由は家督の継承でありました。我ら兄弟は父の前に並んで着座すると深く一礼をしました。そして誰が嫡男となるのか……父の口が開かれ、それを語るのを待ったのです」


 その言葉の後に少しの間がある。そして……


「家督が継承されたのは……大庭さんではなかったんですね」


 急にコムさんが話に割り込んできました。


 (アタシ)はその発言の意味を考えます。えっと……能力に優れていて、二匹しかいない馬を任される程の大庭さんが家督を継承できなかった。コムさんは、そう言うんです。いったいどういう事なんでしょう? 困惑する私を他所に大庭さんは口を開きます。


「その通りです。家督は他の者へ継承されました。では……いったい誰が継承したと思われますか?」


 そう発した大庭さんの顔は……さも稀代の謀略家とでも言わんばかりに、ほくそ笑みを浮かべているのでした。



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