勇者の従者は優しいアサシン 序
勇者の従者でアサシン、パルシウスの三作目になります。
初めての方は「初めまして」、前作からの方は「お久しぶり」って感じで、特に後者の方には、こんな過疎ってる小説を読んでくれてありがとう!って大感謝です。
もともと三章構成ではあったのですが一作目(勇者の従者は秘密のアサシン)、二作目(勇者の従者は泣き虫アサシン)から少し現世では時間が経って、二作目で終わってもいいかな、なんて考えてもいたのですが。
間に挟んでた別の作品が終わって新作を書こうと思ってても、なんかパルシウスたちが心残りで、これ、「ちゃんと終わらせろ」って言われてるんだなって思いまして。
ま、そんなこんなで再開した次第です。
ただ、自分のキャラに甘いって自覚があるSHO-DAですがパルシウスは結構追い詰めることができますので、再開されたことをアイツ自身後悔するんじゃね?って思ってます。
勇者の従者は優しいアサシン 序
ここは雪の舞う色のない戦場だ。
もちろん今は聖月で、一年に一度の満月の日までほんの数日、つまりは真夏のはずだ。
なのに俺の前には、白い空に白い大地。
空気すらきっと白い。
ふと見た自分の右拳に降りた小さく白い結晶は、すぐに溶けて。
「ち。粉雪かよ」
忌々しいのは雪じゃない。
もうなに刻まれていない俺の拳だ。
今は、勇者様の虹の輪の紋章はなく、もう一つの拳にもゴウンフォルド家の族章はない。
つまりは俺は無力なアサシンさ。
アサシンなんて、敵の油断をつく卑怯で臆病な専門職だ。
そんな俺が、バカなことをしてるって自覚はある。
無数の困難にただ一人立ち向かうなんて、アサシンの風上にも置けない愚行に決まってる。
だけど、ここを超えなきゃ、俺は、俺の目指した場所に行けないから。
そう、ここは、俺が初めて選んだ、俺自身の戦場だから。
右手に握ったイアードダガーだけが俺の牙。
「んじゃ、行きますか」
俺は地獄への一歩目を軽~く踏み出す。
靴の下じゃ、踏まれた雪が、ぎゅうって悲鳴をあげた。
同シリーズの前二作は、一応書き終わってからのアップでしたが、今作は連載形式です。
できれば、完結までお付き合いいただければ、と思います。