東1局2本場:理由
「みなみ、キミはまたボクに黙って危険なことをしたらしいな」
「純ちゃん~、やーめーてーぐりぐりしないでー」
あの日の夜。白夜とかいう人と離ればなれになった後、落ち合う場所とかもわからなかったのでそのまま家に帰った私。
あの太ったおじさんが追いかけてくる夢を見てしまったせいで、結局明け方まで眠れなかった。
「まったく、キミはその『白夜』だっけ? その人が来なかったらどうする気だったんだ? あの雀荘は良い噂を聞かないぞ。父が言っていたが、平気で女を夜の店に売るっていうし、男も五体満足では帰れないって聞くぞ。 ……なんでキミはそんな危ないところに行くんだ?」
同じクラスで幼馴染の佐藤純ちゃん。黒髪ロングで姫カット。おっぱいは控えめだけど、とってもクールでかわいい女の子。
「純ちゃんには言わなかったっけ? 私が5年前に助けてもらった男の人のこと探してるって?」
「……あぁ、あの日のことか。びっくりだよ。お人形さんみたいだったみなみが、絵にかいたようなビッチな女の子みたいな恰好をするようになったあの日ね。 ……まだ、お父さんのこと許せない?」
「……許す日はたぶん来ない。いまだって、仕送りには手を付けないで全部麻雀で稼いだお金だけで生活してるんだから」
私は「売られそうになった」ことがある。
この間の雀荘のことじゃない。それ以前。実の父に。
父親が経営している鉄工所が経営不振。従業員へ最後の給料を払うためにお金を借りた先が「ヤバい」組織。
よく「銀行の奴らは薄情だ。経営が順調な時は『お金借りていただいて、設備投資に回したらどうですか?』って言ってくるくせに、いざ困ったときは一円だって貸してくれない。むしろ、『担保になっている工場から出て行ってくださいね』って言う始末。非道だ」って言いながら酒を飲んでいた。
そんな状態になったところに金を貸してくれるのは「ヤバい」ところだけ。そして、私はその「担保」にされた。私の将来を、終わる会社に奪われそうになった。
そして、事務所に連れていかれた私。そこにあの人は居た。
名前を六道軍星と言った。
軍星さんが「事務所」の偉い人に対して、わたしを父が売った金額の倍を支払って買い戻してくれた。
そして、「次に娘さんを売るようなことがあれば、俺はあんたを潰す」と宣言して去っていった。
父はそれがきっかけで心を入れ替えて働くようになり、最低限の生活ができるようになった。
でも、私は一度「売られた」ことで父を信じることが出来なくなった。
だからこの学校の入学資金だけ出してもらって、あとは全部麻雀で稼いだお金で学費や生活費をまかなっている。
「で、アレだっけ? 『俺は君みたいなお嬢様然とした子より、ちょっと活発で遊んでそうな子のほうが好きだ』って言われたから、そんな格好するようになったんだっけ?」
「……好きな人に好かれるように努力して何が悪いの?」
「悪いとは言わないけど……、せっかく『ぬばたまの~』の掛詞通りな黒髪だったのになぁ……。もったいない……。いまのキミもかわいいけど」
はぁはぁ、と息を荒くする純ちゃん。なんというか、ちょっとそっちの気があるのかな? 最近、野獣のような眼光を感じることがある……。怖い。
「でも、なんかこの間の『白夜さん』がなんか近い感じしたんだよね……。流石にそんな偶然は無いとは思うけど……。でも、恐怖でそう感じただけかな? 状況も一緒だったし」
「自爆だけどな。キミの。これに懲りたら、危険なことはやめて私と学園生活を楽しもうじゃないか!」
やっぱ、ちょっとだけ怖い。純ちゃん。
でも、また白夜さんって人には会える気がする。
そうしたら聞いてみるんだ。軍星さんって知りませんかって。
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