東3局4本場:反撃
「わかりやすく言い換えますね。余剰牌によるイカサマですね」
中原みなみが一色清美に対して指摘を行う。
卓の上にある5枚の「南」「中」。そして、6枚ある「白」。
普通に考えればイカサマがされているのが明白である。
ただし、それは同時に中原みなみに対しても言える事である。
「……証拠を出しなさいよッ!! 証拠をッ!! 証拠がないなら、メス豚がイカサマしてるかもしれないでしょ!! いや、してるに違いないッ!! 白夜をたぶらかすゴミ!! カス!! うんこ!!!」
支離滅裂意味不明。
それが現在の一色清美である。
だが、その発言には一理ある。
そう、状況的には中原みなみがイカサマをしていてもおかしくはない。
ゆえに、中原みなみは「イカサマをしていない」という証拠を見せろ。
そう裏社会で生きる人間としては失格であることを言っている。
そんなことも理解できないほど、一色清美は狼狽している。
暗にそれがイカサマをしており、そのイカサマの手段が正解であると示しているという事も分からないまま……。
「私がイカサマをしていない証明は難しいですけど、あなたがイカサマしている証拠は簡単ですよ」
そういって、中原みなみはギャンプと呼ばれる修道服の合わせに腕を差し込みまさぐる。
そして、数秒。
何かを握った手を抜き、卓の上で手を開く。
そして、音を立てて落ちる「發」と「東」の牌。
「ほら、余剰牌を服の中に隠してますよね。これが証拠です。多分、鞄を探せばもっとたくさんあるんじゃないんですか? この麻雀牌も卓もそっちが用意したんで『予備の麻雀牌セット』から何枚か抜いた、ってとこですかね。軍星さん、そのかばん開けてみてもらえますか?」
中原みなみの指示により、軍星は一色清美のやや大きめのデイパックを開ける。
そこには麻雀牌が3セット。
卓に2セットはセットするので、2箱は空である。
だが、残りの1セットは中原みなみの指摘した通り、何枚か牌が抜けていた。
「イカサマの証明完了ですね。逆説的に、私がイカサマしていないことも証明されたってことで良いですよね」
お手本のようなどや顔をする中原みなみ。
逆にいっそスガスガしさすら感じるほどである。
だが、それに対し怒りを感じ震えている一色清美。
自らが誇りとしてきたイカサマである、余剰牌との入れ替えを見破られた。
それだけであればまだいいが、言い逃れが出来ない確たる証拠を突き付けられた。
それはつまり、今後同じイカサマは中原みなみに通じないという事である。
イカサマでしか勝つことが出来ないほど実力が解離している以上、もはや勝つことは不可能である。
「……俺は盆暗だな。いや、シゲさんもか。俺たちは『卓の上』で起きる異常には気が付ける。だけど、『卓の外』は意識から外れていたわけか。わかっちまえば単純なんだな」
そう、白夜自身も腕地雷は非常によい麻雀打ちである。
イカサマのタネさえ割れてしまえば、あとは見破ることはたやすい。
不幸なのは、「卓の上」という事だけに意識を向けていたことである。
だが、「卓の外」で起こるという事にさえ気が付けば、あとは単純。
再開された試合で、普段使わないいイカサマを一色清美は行う。
だが、それは確度が低く、簡単に白夜に見破られる。
あえて指摘するのであれば、余剰牌との入れ替えだけしかできない一発屋だったわけだ。
ゆえに、一色清美と白夜。いや、六道軍星という男との格付けは終了した。
これ以上はただただ傷を広げるだけである。
普通であれば、もはやギブアップをして「次」に希望をつなぐのが正着手である。
「……ギブアップはさせない。俺はお前をここで終わらせる。これは俺の『誇り』をかけた戦いだからな」
ここで終わらせる。そう決意した白夜。
ゆえに、ギブアップなどという「ヌルイ」行為は許さない。
潰す。
ただその意識のみで対局を続けていく。
「その牌で地獄に落ちろ。ロン」
恐れ入りますが、作品の評価をお願いいたします。




