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東1局1本場:白夜

 そこからの対局はまるで麻雀をテーマにしたショーを見ているようだった。


「ロン。1000点のみ」


「ロン。1000点のみ」


「ロン」


「ツモ」


「ツモ」


「ツモ」「ロン」「ツモ」「ロン」「ロン」


「ツモ。八連荘(ぱーれんちゃん)で役満。まぁ、手牌自体も字一色(つーいーそー)七対子(ちーといつ)。まぁ、俗に言う大七星(だいちーしん)だな。3倍役満」


 自分の親番で八回連続で和了する八連荘。それが成立するまではそこまでは大して大きい役ではなく、安い手で速攻という感じだった。


「くそっ! テメーのイカサマさえわかれば指摘して潰してやんのに……」

「……あいにくだが、俺はイカサマなんかしてない。する必要がないっていう方が適切か。おまえら弱すぎんだよ。 ……雑魚が」


 まるで「つまらないものを斬ってしまった」かのように、吐き捨てる白夜とかいう白髪の男性。

 その言葉に激高するかと思ったら、デブのおじさんはいきなり黙り込む。

 まるで、自信を完全に失ったかのように。心が折れたかのように……。


「……Eルールで他人をハメて稼ぐのはありだ。だけど、加減しとかないとこうやって痛い目を見ることになる。分かったか。なら、精算でもいいぞ。この子を『買える』だけの金は稼いだしな」


 そうだった、私はこの人に1000万円で「買われた」んだった。

 この人が私のことを買う理由は分からないけど、ギャンブルの掛け金を払えなくなっていた私は「モノ」と同じ。

 そういった「モノ」をギャンブルでやりとりすることは、裏の世界では普通に行われているらしい。

 私も表の世界では「あの人」の情報が手に入らなくなったから、こういった裏世界の人たちが集まるところに出入りしていた訳だけど……。


「じゃあ、『貰っていく』ぞ。こい」


 そして、私は「買われ」た。


□■□■


「……正直、俺おまえのこといらないから帰っていいよ。ただ、事情だけは聞かせてくれないか? おまえみたいな女子高校生が、やばいやつが来ることで有名な雀荘に来るなんて、なんか事情があるんだろ?」


 この人のことをどこまで信用していいか分からない。

 どこまで正直に話すべきか……。

 助けて貰った恩はあるが、「初対面」の人にどの程度話せるのか……。


「……人を探しているんです」

「……人を探してる? 確かに裏世界の方が情報は集めやすいが、間違ってる情報の方がほとんどだぞ? なぁっ! おっさんよ!!」


 白夜さんの声に振り替えると、さっきの雀荘のおじさんがビール瓶を片手に立っている。


「てめぇみたいな小僧とメスガキに馬鹿にされたままじゃ、帰れねぇんだよ! 金を返せっ!!」


 ギャンブルの負け金は警察を通さなくていい金額。そして、税金としても獲得した金額の10%を払えばよいとされている。

 とはいっても、ごまかしている人がほとんどらしいけど。


「……はぁ、くだらねぇ。一色のとこの下っ端はこんなゴミか」

「うるせぇ!うるせぇ!うるせぇわっ!」


 ビール瓶を振り下ろしてくるおじさんに対して、一歩踏み込んでその腕を腕で受け止めつつ腹パンをする。

 ひるんだ隙に足払い。転んだおじさんの腕を踏みつけ、落とした瓶を遠くに蹴り飛ばす。


「……走れっ!!」


 その声に反応して、私は走り出す。

 どこかで、その白夜さんという人と会ったような気がしながら……。

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