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半亜人(ハーフ)と共に行く精霊世界ーエスティールに吹きあがる炎  作者: 水素(仮名)
第14章 国民同盟
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14-8 星たちの再結集



― 天精の年、6月4日 夜 『子羊の戯れ』ルジェの部屋



 ルジェ達3人は、部屋に集まって今後の方策を練る。

 

「ルジェ、どうするの?」


 付いては言ったものの、一言も発しなかったカーラが問う。他の二人と違い、彼女にとってチェザレアに従うことは自明ではない。

 

「……俺は、自分に政治が無理なことくらい理解している。チェザレアはああ言うが、俺がその場でダグと共に逮捕されるのがアイツの望む法治主義なら、俺はそれに従うよ」


「本当にそれでいいの?」


 カーラは問う。彼女の為にルジェが犠牲になるのが、本当に正しいことなのかと。

 

「アイツは俺たちに担ぎ上げられることを望んでいない。……そして俺にアイツの代わりを務めるのは不可能だ。俺にできるのは、明日の演説に憲兵隊を呼び込む、その位だな」


 一方、セトは別の事を考えていた。

 

「所で、そもそも演説そのものが予定通り行われるのかい?僕を人質にとってまで君にやらせる気で、それが失敗したんだろ?」


「俺さえ来ればやるはずだ。……その場にダグが居なければ、俺の権限で演説は中止できるはず」


「ふーむ……」


 集合時間は指定されていないから、一日中会場にダグが来ない可能性もある。

 

「……そもそも、今『国民同盟ナショナレ』が壊滅して喜ぶのは誰なんだい?『新市民派ポプリスタ』じゃないのかい?」


 セトは問う。


「それは、俺も考えにない訳じゃないが……」


「チェザレア様の今日の様子、……悪いけど、君が『国民同盟ナショナレ』に取られたと思って焦っておられるように感じた。恐らく精神的には平静じゃない」


「セト……」


 ルジェはその顔をじっと見つめる。

 

「あの方は指導者である前に一人の人間だ。間違いを犯す事だってある。いま政治のバランスが崩れれば、恐らく『新市民派ポプリスタ』一極集中の体制が出来上がるだろう」


「だけど、……俺は政治指導者にはなれない。自分で言うのもなんだがその能力はゼロだ」


「マイナスよりゼロの方がいい。……『国民同盟ナショナレ』は恐らく、ダグを当て馬にするつもりで奴ら、魔神信仰派が作り上げた組織だ。つまり奴らの手中にあるのはダグ一人。しかし『新市民派ポプリスタ』は……」


 セトの顔がより深刻になる。

 

「魔神信仰派とズブズブって事か」


「このままでは恐らく、『闇の巫女』の即位と共にバイハラはその手中に収められてしまう。僕が思うにそれと戦えるのは『国民同盟ナショナレ』だけだ」


 セトにそういわれても、ルジェは悩む……

 

「かとはいえ、なあ……」


「チェザレア様も言われていたじゃないか、自分でやればいいんだ。……僕とカーラが付いてる」


「そうだよ、やろうよルジェ!」


 ルジェはそのまま、腕を組んでしばらく考える……チェザレアの考える法治主義に真っ向から対立するのが『国民同盟ナショナレ』だ。

 

 行き過ぎて、彼女を完全に否定することにならないだろうか?そもそも、明日ダグが逮捕され自分が逮捕されないという都合のいい状況が発生しうるか?

 

 確かに党の宣伝によって自分の威信と名声が上がっているのは分かる。しかしそれは、果たして党首であるダグを上回るほどか?

 

「……セトはカーラを守ってくれ。俺は一人で現場に行き、その時まで決断を待つ」


「そんな優柔不断じゃだめだよ。皆一緒にやらないと!」


「ダグ自身が魔神だった場合に、君一人で戦えるかい?」


 二人は尚も躊躇するルジェの背中を押す。

 

「……」


 二人を、巻き込むのか。

 

 

 

「分かった、やろう」


 その時ルジェは、自分の声が他人の声に聴こえた。

 

 だけどそれは、彼なりに自分で考えた末の決断でもあった。

 

 『国民同盟ナショナレ』が壊滅し、セトの想定通りの状況となるより、自分が権力の座に就いた方がましと考えたのだ。

 

「ダグに怪しまれないよう、明日二人は南門付近で待機して、中央広場で騒乱が始まってから駆け付けてくれ。それまで俺は何とか自分で切り抜ける。その後、戦力を結集して憲兵隊と戦いつつ南側に逃走、最終的に各地の『同盟突撃隊』への檄文を各地に配布し、決起を促す。法律で『同盟突撃隊』が非合法にされた以上、その存在を認めさせるには戦うしかない」


「了解。それじゃ、そろそろ寝よう。明日は長い一日になるからね」


「うん。……セトさん、今日は一緒の部屋で」


「わかったよ」


 こうして、3人で作戦会議をするのはあの洞窟探索以来だった。ルジェは懐かしさを感じる。

 

「それじゃあ、お休み」



 ドゥネ=ケイス共和国の歴史を左右する一日が、始まろうとしていた……


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