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半亜人(ハーフ)と共に行く精霊世界ーエスティールに吹きあがる炎  作者: 水素(仮名)
第5章 裏切られた気持ち
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5-1 囚われのルジェ


 ― ハッ……


 ルジェが目を覚ましたところ、そこは牢屋だった。

 

 石積みの壁を、鉄格子沿いの松明の火だけが薄暗く映し出す。

 

 気が動転する。何が何だかわからない。出口を探すが、どこにもない。

 

「ここは……一体……!!」


 格子状になった牢の扉を見ているうちに、ルジェは一つ、確認しなけらばならないことを思い出した。

 

「……カーラ、カーラは……!」


 牢屋の中を見回し、彼女の姿を探す……すると、すぐそばに寝息を立てている彼女を発見した。

 

「…………」


 安心したルジェは、自分の手首を見る……鉄製の手枷が、嵌められていた。

 

「……そうか、俺は……」


 ……状況は、考えるまでもない。大ハーン暗殺の企てが、官憲に漏れたのだ。

 

「でも」


 少し妙だ。官憲ならば、スリープクラウドの魔法など使わずとも、正面から正々堂々と自分たちを逮捕すればいいはず。

 

「……チェザレアさん」


 最後に顔を出したのは、あの子だった。

 

「なんでだよ……」


 暗殺の企てが自分達を狙う者に漏れたとすれば、一番考えられるのは彼女だった。

 

 足音が、聞こえる。

 

 ルジェとカーラが入った牢の前に、大柄な2体の爬虫人リザードマンが現れた。

 

「出ロ」


 ……うち1体はビビッティだった。

 

「……」


 鉄格子が嫌な金属音を響かせて開く。ルジェと、この音で起きたらしいカーラは、そのまま2体の爬虫人リザードマンに護送された。

 

 

 連れてこられたのは、煌びやかな調度品のそろった部屋。玉座のような豪勢な椅子に、翡翠色の髪の少女が座っていた。その左右には、色黒の銀髪とビキニアーマーの戦士……セトとアナーリが立っている。

 

「……どういう、つもりだ」


「どうもこうもないわ。この場は、あなた方が大ハーン暗殺の企てを行ったことに対する申し開きの場として設けました」

  

 チェザレアの美しい唇が、冷酷な言葉を放つ。

  

「言いがかりだ!なんの証拠や根拠があって」


 流石に激昂するルジェ。

  

「証拠の仕込み刀なら処分しましたね、ルジェ君。……私の依頼を利用して」

  

「利用などしてない、あれしか武器が無かったんだ……」

  

「あの『杖』をあの日あなたが持っていたことは、ほかならぬ私の眼で確認しました。そして、昨日の二人の会話、一字一句ばっちりセトが聞いています。『大勢死人が出るような』計画を、あの場で実行しようとしたことを、ほかならぬあなた方の口から聞いたのです」

 

 セトが頷く。

  

「言い逃れは不可能だよ」

  

「そ、それが何だってんだ、俺は、俺は……」


 ルジェは思い出した。チェザレアは、果樹園の依頼の時点で自分を疑っていたことを。

 

「俺は……」


 顔を下げる。

 

「頼む、俺はどうなってもいい!カーラと、その家族だけは……!!」


「……どうしようかしらね」


 クスクスと微笑みを浮かべる翡翠色の髪の少女。

 

「認めるのかしら、『大ハーン暗殺を企てた』って」


 ルジェは考える……果たして、チェザレアはなんの権限でこんなことをしているのか。彼女は政府から依頼なりなんなり受けているのか。

 

「認める……と言ったら」


「普通はあなた達を政府のお役人に突き出すでしょうね。大逆罪の嫌疑ともなれば、共犯者を聞き出すためにたーっぷり拷問された上で族滅よ」


 ルジェは唇を振るわせる。自分が何をしようとしたか、何を企てたか、彼は初めて肌で理解した。


 一方で、チェザレアの言い回しに少し疑問点が湧く。


「…………ってことは、政府……いや、総督府は今のところ」


「……あなた達がその企てを行っていたことを、知らないわ」


 チェザレアは、重要な言葉を紡ぎだした。

 

「……今私があなた達に疑いをかけている事を知っているのは、お父様と、サンドラ議長を含む市民公会の穏健派議員の方々だけよ」


「……申し開きの場なんて嘘だろ。何が、狙いだ」


 彼女は、この事実をダシにして自分達に何かを強要している。ルジェはそう理解した。


「察しがいいのね。私が要求するのは、あなた達の私と市民公会に対する忠誠と服従」


「忠誠と服従、だと?」


 ルジェの頭に、疑問符がわく。

 

「俺達ごときの忠誠を得るために、あんたは危ない橋をわたるのか?大逆未遂犯を懐に抱えるっていう」


「そうよ」


「事が露見したとき、あんたらも道連れになるかもしれないんだぞ」


「覚悟の上よ」

 

「……あんたら、馬鹿か」


「馬鹿かもね」


 チェザレアは再び微笑んだ、少しだけ、頬を朱ではなく、緑に染めて。……その微笑みに、自嘲の成分が含まれていることをルジェは察した。

 

「……あなた達が私たちの敵に雇われた存在ではない、という考えに私が至るまで、セトにあなた達を監視させてもらいました」

 

「敵、とは誰のことだ」

 

 妙な言い回しだった。


「……過激派よ。今のバイハラ自治区を崩壊させ、休戦状態のドゥネ=ケイス戦役を再開させようとしている」


 チェザレアは語り始めた。バイハラ自治区の今の状況を。

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