追憶
ショートホープ
缶のビール
冷えた部屋
ボリュームを上げた
ブラック・マジック・ウーマン
ドアを開ければ
そこにいた人
思い出話の延長線上で
日常を営む私は
あなたの好きな
音楽を聞いている
久方ぶりの
手紙を読むように
ジョプリンの
泣き出しそうな
サマータイム
下手くそな
あなたの高音はもう聞こえない
目を覚まさないスリープ画面
キャスター付きの椅子を
くるりと回しても
時間は止まらず
巻き戻らず
切り取られ
そこにある
鍵も掛けずに
去って行ったから
そのドアを開け
その椅子に座り
私は何度も
読み返すように
音楽を聞いている
何が書いてあったかなんて
本当は
分からないけれど