一章 六話
遅くなって申し訳ありません
今回は二話続けての投稿です。
ゆっくりしていってくださいね!
「では僕は明日の準備があるのでもう戻ります。
念のためギルドの客間を借りてそこで寝ますので
何かあったら職員の人を使って呼んでください。」
そう言って俺は席を立ち部屋からでようとしたとき
「ノウス.....。」
「はい? 何ですか姉さん?」
「あ、その、なんでもない。」
「? では失礼します。」
俺は今度こそ部屋から出た。
「ミーナ一体何を思い詰めてるんだい?」
「いや、それは。」
「家族の私たちにも言えないことなのかい?」
「・・・」
「ミーナが何を思い詰めているかは
分からないけど、そういう顔をして思い悩んでいる
時は誰かに話した方が楽になれることだって
あるんだよ。」
「そうなのかな。それがどんな内容でも?」
「そうだよ。それに私はあんたの母親なんだよ
娘の悩みくらい聞けなくてどうすんのさ。」
「お母さん....。」
「ほら話してごらん。場合によっちゃ力になれるからさ。」
ミーナはそれでもなお考える素振りを
見せたが観念したように話始めた。
「実は私ねアルゴースさんの事が
好きだったの。」
「っ! それは本当かい?」
「うん。小さい時に見たルワンダさんとの決闘を
見て凄くあこがれたの。ああ、私もあんなに強く
なれたらいいなって、そしてあの後も色々活躍している
姿を見ていたら憧れがその恋に変わっていたの。
それで今日アルゴースさんが目の前に現れて
びっくりしたけどそれでもかっこいいな思っちゃったの
自分のすぐ近くでお母さんが苦しんでるのに。」
「それでその時の罪悪感で悩んでいるのかい?」
ミーナはその質問に対して首を横に振って否定した。
「違うのその後お母さんをこんな目に会わせたのが
アルゴースさんだって知ってものすごく怒ったの
なんでこんなひどいことするのって、でもその後
アルゴースさんがお母さんと私とノウスを手に
入れるって言った時私少しうれしいって思って
しまったの。奴隷みたいに扱われるのを分かって
いながらだよ。そう考えたら自分がとても汚く見えて
きてどうしようもなくて、そしてさっきノウスが
怒ってるって言った時なおさら自分に嫌になってしまったの
ノウスは家族が汚い手を使われて傷つけられて
真剣に怒っているのに私って自分の事しか考えられない
醜い奴だなって。」
「なるほどな。」
「そしてさっきノウスにあまり無理しないでね
って言おうとしてしまったの。」
「それってもしかして。」
「うん。ノウスの心配をするふりをして遠回しに勝たなくて
いいって言おうとしちゃったの。ひどいよねこんな考え方
自分勝手で周りの事を一切考えてない最低だよね。」
「・・・・・。」
「お母さん私どうすればいいのかな?
今後この決闘でノウスが勝っても負けても
顔向けできないよ。」
母さんが少し考え込む素振りをとると
ミーナに問いかけた。
「要するにあんたは自分の愚かさが
嫌でそれに対して一番罪悪感を
感じているノウスに何かいってほしかったと。」
「うん。そうなるのかな。」
「なるほどね。」
母さんはそこで一旦会話を区切ると大きく
息を吸い込み口を開いた。
「甘ったれるんじゃないよ!!!!」
「っ!?」
いきなり喝を入れられてミーナは飛び上がりそう
になるほど驚いた。
「あんたはノースのやさしさに付け込んで自分があまり
傷つかないように断罪して貰おうと思っているだけじゃないかい?」
「そ、そんなことは....。」
「違うって言うのかい? ならなぜあの時すぐに言い出さなかったんだい?
それは今はノースが怒っていて機嫌がよくないから今このことがばれたら
断罪がきついものになってしまうと考えたからじゃないのかい?」
「そ、それは。」
ミーナは今にも泣きだしそうな顔をして俯いた。
「図星だね。何がどうしたらいいのかなだよ。
そんなの決まってるじゃないか、自分の考えたこと
感じたものが許せなくてどうしようもなくて
それがわかっているならそれを話すべき相手に
話して許しをこうしかないじゃないか。」
「で、でも。」
「ミーナこんな時だが、いやこんな時だから
言わせてもらうよ。」
「な、なに?」
「あんたとノウスは実の姉弟じゃない。」
「! いったいなにを言ってるの。」
母さんはノウスを育てることに決めた経緯を話した。
「驚いたよな。いきなりノウスが血のつながりが
無い姉弟だって聞かされて。」
「あ、当たり前だよ。
それでそれが今の話とどう関係があるの?」
「あいつはな知ってるんだよ。私たちと血がつながって
無いことをしかもその事を知ったのは7歳の時だったんだぜ。」
「だから! それが何の関係があるの!?」
ミーナは話の流れがあまりに見えてこず
思わず叫んでいた。
「ノウスが私たちと血がつながらないとして
その事実をかなり前から知っていたっていう
ことが今となんの関係があるっていうの!?」
「分からないかい? あいつはそんな血の繋がりのない
私たちの為に今まで感じた事が無いような怒りを
抱いて、英雄なんて化け物じみたスキルの持ち主と
命がけで戦おうとしてるんだよ。」
「命がけってそんな....。」
「当たり前だろ。相手は英雄のスキル持ちだ
そんな相手と戦うんだ、相手の気分次第で
殺される事だってある。ましては相手はこの
土地の領主様だ、決闘で死人を出してしまった
程度ではどうとでもなる。相手が死を恐れず
特攻してきて咄嗟に反撃したら殺してしまった
っていう風になったら罰は軽い物になってしまう
だろうね。しかもそれを判断できるのは
本人たちだけだしね。」
ミーナはその話を聞いていく内に
段々と顔を青くしていった。
決闘で死者が出ることは決してゼロではない。
あまりにも実力が違いすぎて実力者が対戦相手に
怒りを覚えて殺してしまうという事が多少なりとも
ある。その場合殺してしまった側の物は慰謝料を払い
牢屋にて何年か過ごすことになる。しかし、相手が死んで
しまった場合その者の負けという扱いになって
賭けていた物はその殺した側の物になるのだ。
「なんで命をかけてまでそんな事をするの?
だって知ってるんでしょ血が繋がって無いって
ならここまでせず逃げればいいじゃない。
私たちの事を放っておいて。なのになんで?」
「あいつにその事実を知った時聞いたんだ。
あんたはどうしたいって、そしたらなんて
言ったと思う?
”確かに血は繋がって無いけど、それでも
僕はノウスなんです。大好きなお母さんの息子で
大好きな姉さんの弟のノウスなんです。
何が起ころうとなんと言われようと僕がお母さんと
姉さんを一生守ります。だからこれからも一緒にいさせて
ください。お願いします!”
って頭下げてきたんだよ、自分が弱いことを自覚しながらもね。
そんな奴が私たちのピンチの時に逃げ出すと思っているのかい?」
「思わない...。」
「なら自分がしなきゃいけないことはわかるね?」
「うん....。私ノウスに話す私が思ったこと
赦してもらえないかもしれなけどそれでも
一生懸命話すして謝るよ。」
「うん。それが一番だね。
それよりも私が痛い思いしている時に
そんな事を考えていたとは悲しいね~。」
母さんはわざとらしくそういうと、いかにも
私悲しんでまーす見たいなポーズをとって
場の空気を和ませた。
「うう、自分勝手な娘で本当にごめんなさい。」
ミーナはわざとだと分かっていても
見るからに落ち込んで謝罪した。
「ははは。冗談だよ。
ほらさっさと行ってきな、歩くことくらい
できるんだろ。なら自分の足でちゃんと
ノウスの所に向かいな。」
「うん大丈夫わかってるよ。」
そう言うとミーナはベットから降りて
準備を始めた。
「そんなに固くならずにしっかり話すんだよ。
ノウスなら分かってくれるからね。」
準備を整えていった。
「うん。分かってる。
それじゃあ行ってきます。」
「ああ、行っておいで。」
そう言ってミーナは部屋を後にした。
その顔には怯えの表情はあったが迷いの
表情はなかった。