一章 四話
遅くなってすみません
ゆっくりしていってください。
二人の武器はルワンダがレイピア並みに
細い刀身をもつ剣一本で
アルゴースは盾と片手剣という武器のスタイルだ。
開始の合図と共に動いたのはルワンダだった。
20メートルはあった間合いを一気につめ
あっという間に自分の間合いに相手をいれた。
そこから一閃、その一撃をアルゴースは難なく
受け止めた。
「ほう今の一撃を止めるかね。」
「私だって伊達に龍を倒して
いません。それなりには力はあります、よっ!」
アルゴース会話の締めと同時に剣を思いきり振り
ルワンダを吹き飛ばし距離をとった。
「今度はこちらいきます。」
そこからは両者一進一退の攻防が続いた。
一方観客はというと、
「おい今の攻撃見えたか?」
「一応な。だけど身体強化を使って
やっと目で追える程度だ。
アルゴースが邪龍を倒す位だから
化け物だって知ってたけど、
ルワンダさんも大概化け物だな。」
付け加えると俊敏はルワンダの方が
圧倒的に速い。単純な腕力はアルゴースの
方が上。アルゴースはその差を、技術と
センスだけで渡り合っている。
戦闘自体はルワンダが速さを生かし攻撃
しては回避のヒット&アウェイの戦法で
アルゴースは自分からは積極的に攻めず
守ってはカウンターを狙う戦法で戦っている。
え、戦いがそこまではっきり見えてる理由?
勿論身体強化を使ってるからだよ。
リミッターを解除したらもっと鮮明に
見えるかもしれないけど、人が多い今むやみに
リミッターを解除するのはよくないからな。
「そろそろ終わらせることにするかな?
今から我は大技を繰り出す。それを
見事返して見せよ。そうでなくては
勝利はないぞ?」
「なぜそんな助言を私に?
私の事を舐めているのですか?」
「そんなことはない。しかし、このまま
試合が続けば三日三晩やりあうことになり
最後は勝っても負けても泥試合になってしまう。
そんなことになればここにいる観客も、
ここで普段訓練している者にも
そしてなにより主とお嬢様に迷惑をかけてしまう。
だからこそここでお互いに全てを出し切る一撃を
放って攻めきれれば我の勝ち、カウンターで我を
倒せればそなたの勝ち。実に簡単でシンプルであろう。」
「あなたがそれで納得するならいいのですが。」
「決まりだな。
ちなみに決まらなければ何度も続けるぞ。
全力を出し合うのだから決まらなくとも
そう長くは続かんだろうて。」
「わかりました。お受けいたしましょう。」
「変な提案をしてしまってすまないね。
......それでは行くぞ!!」
ルワンダは今までで一番のスピードで
アルゴースに接近した。
「はあああああああ。」
気合の咆哮と共にルワンダは激しい
ラッシュを繰り出した。
「うぐ。」
「どうしたどうした。英雄の力は
そのていどか?」
「!?」
「我らの大切なお嬢様の婿に
なろうとしている者の事を
調べないはずがないであろう?」
「では、それをわかりきった上での。」
「ああその通りだ。」
「ならば見せてあげましょう。私の
本当の力を!!」
「こい!」
「スキル英雄発動!!」
スキルの発動と共に空気が一変
先ほどまでとは明らかに身に纏っている
覇気が違っていた。
「ほう、ここまで変わるか。」
「ええ、ここからが本当に本気の
私です。では行きます!!」
アルゴースは地面を蹴りルワンダに
接近した。先ほどまでとは明らかに
スピードが違う。宣言通り本当に
本気らしい。
ルワンダはアルゴースの急なスピードの
変化に驚きほんの一瞬硬直してしまっていた。
それは決定的な隙だった。
アルゴースはさらに加速、一瞬でルワンダに肉薄し
無防備なその肉体に剣の腹を思いっきり叩きつけ
外周の壁まで吹っ飛ばした。
ルワンダは壁に思いきりぶつかりその場で膝をついた。
「ははははは! スキル一つでこうも変わるか。」
「そうですね。それと謝っておきます。決闘の場なのに
全力で戦わず舐めた行動をとってしまい申し訳ありません。」
「よいよい、主はその力まだ完全には理解しておらんのだろう?」
「そこまでお見通しですか。」
「まあな、それぐらい出来なくて隊長なんてやっておらんよ。
さて終わりにするかな。審判我は敗北を認める。」
「分かりました。それでは勝者アルゴース!」
その宣言と同時に会場は割れんばかりの歓声に包まれた。
アルゴースの勝利宣言がされた後、
結婚式は後日行われることになった。
帰り道ミーナは今日の事を興奮気味に話していた。
「今日の決闘すごかったね!
途中から全然目が追い付かなかったよ!」
「そうですね。
しかし、アルゴースさんがまさか
英雄のスキル所持者だとは驚きです。」
「本当だよねー!
私も剣聖なんてスキル持ってるけど、
なんかレベルが違うって感じだったよ。」
「それは当然かと、アルゴースさんとは生きてる
年数もレベルも違うんですから。」
「そういうんじゃなくて、
んん~? なんて言うのかな。
私の剣聖が5くらいの強さだとすると英雄の
強さは9くらいてかんじかな~?」
伝えたいことは分かる。要は元のスキルの格の
違いだ。剣聖のスキルは確かに協力で本当に珍しい
しかし、この世界で五人は手に入れることのスキルだ。
しかし英雄は、世界でたった一人しか手に入れることの
出来ないスキルだ。そのスキルと格を比べるとなると
どう頑張っても剣聖と英雄では英雄が勝ってしまう。
ちなみにこの知識は調べればすぐわかることなのだが
どうやらミーナは知らないようだ。
「何となく言いたいことは分かりました。
ですが姉さんだってまだ発展途上この先
どうなるかわかりませんよ?」
「まあそうだよね。
別にアルゴースさんと戦うわけじゃ
無いんだから大丈夫だよね。」
「そうですよ、それより早く帰宅して
疲れているお母さんにご飯を作ってあげましょう。
きっと喜んでくれますよ。」
「おっ、いい考えだね。
さすがは私の弟。じゃあお家までかけっこだ!
よーいドン!」
「あ! ずるいですよ自分だけスタートして
待ってくださーい!」
かけっこは結局ミーナの勝利。
俺は料理を作っている最中先ほどの
会話を思い出してなんとも言えない
違和感に襲われていたが結局その違和感の
正体がわからなかったので気のせいという事にした。
補足説明です。
修行や誰かに着けてもらわなくても生まれた時に何かしら
スキルが付与される世界です。
剣聖や英雄のスキルがいい例です。