一章 九話
俺は母さんに見送られながら会場に出た。
周りはかなりの数の観客だった。
{さあいよいよノウス選手が入場いたしました!
では両者とも準備をしてください!}
その掛け声と共に会場の脇からポーションを持った
役人らしき人がやってきた。
俺とアルゴースはそのポーションを貰うと
一気に飲みほして空の瓶を役人に渡した。
役人が俺の入ってきた入場口から出て行くと
俺とアルゴースは決められた位置につき抜刀した。
俺の装備は鉄で出来た胸当てと両腕に籠手
脛の部分に脛あて、武器は5年間使い続けている
アイアンソードといたってシンプルな装備だ。
対してアルゴースはいかにも頑丈そうな
金属で出来ている全身鎧(頭は出ている)と
邪龍の素材で作られた長剣といった装備である。
アルゴースの奴大人げなく全力で勝ちにきた
ガチ装備である。微塵も勝たせる気が無いなあいつ。
{両者準備が整いました。さあこれより
片や英雄のスキルを持ちそのスキルに相応しい
行いを行ってきて領内での人気は絶大!!
あの邪龍を倒したまさに英雄の名誉をわがものに
したアルゴース・クラウディア!!
片やこの町でその名を知らない者はいない
圧倒的知名度を誇る絶対的者フィリアギルド長の
息子でいかなる時もクールに物事を解決する
期待の星ノウスーーー!!}
決闘開始の合図がなるまで暇なんで
あのアナウンスのおっちゃんの声に耳を
傾けているとあんな事を言いやがった。
俺はの特徴って母さんの息子ってだけかい! って突っ込んで
やりたかったけど、解説でクールとも言われていたから
黙っといた。...後で逆襲しよう...うん。
そんな事を思っていたら向かい側から
アルゴースが話しかけてきた。
「今回の決闘良く逃げなかったな、そこは褒めてやる。
だけど私は君に失望したよ。君は物事を客観的に見れて
頭のいい立ち回りができる人物だと思っていたのに。
まさか逃げずに決闘に本当に挑んでくるとは、
結局君もあの脳筋の女の息子という事なのだね。」
俺はその物言いに少し腹を立てた。
「僕の事を悪く言うのは構いません。
事実馬鹿な事をやっている自覚も
ありますから。...でも母さんの
事を悪く言うのは許せません。
訂正してください。」
するとアルゴースは心底嫌そうに
俺に悟らせるように言ってきた。
「私は事実を言っているだけです。
それとも違うと言うのですか?
金や領地に目がくらみ自分の
持つ権利を投げ出すような人が
馬鹿と言わずなんというのです?」
「黙れ。」
そうじゃないだろお前が姉ちゃんの秘密を
暴露するといったからだろ。
「おお怖い少し挑発したくらいで口調を
変えてまで怒るその反応まさにあの
脳筋ギルド長の息子といった所ですかね?」
「黙れって言ってんだろ?」
俺は周りに気づかれない程度の
声で威嚇した。
「黙れとしか言えないその単細胞全く本当に
つくづくひどいものですねえ。さてそろそろ
決闘が始まるみたいです。最後に言いたいことは
ありますか?」
「決闘で僕が勝ったら母さんにちゃんと謝罪
することを報酬に追加します。」
俺が怒りを抑えながら言うと
アルゴースは面白そうに笑った。
「この英雄の私に勝つ!? 平凡でなんの特別な
力を持たない君がかい? おいおい決闘前に
私を笑い殺すつもりかいやめてくれよな
はははは。」
そう言ってしばらく腹を抱えて笑っていたら
十分笑ったのか俺を見据えて油断しきって
俺に言った。
「そんな幻想早めに捨てたほうが身のためだよ
だが君に笑わせてくれた褒美として
最初の一撃を入れさせてやるハンデをやろう。
それも私は英雄のスキルを君が私に
打ち込む瞬間使わないと約束してやろう。」
こいつ完全に舐めてるな
だが相手が攻撃させてくれるというなら
させて貰おう。こっちからも言わせてもらうがな。
「なるほどそれはありがたい申し出です。
しかし、それだと僕の気持ちが悪いままです。
そこで僕は今持てる全力であなたの腹を
攻撃します。それを身体強化のスキルを使い
防いでください。」
「貴様本気で言っているのか?
貴様の身体強化のスキルが強かろうと
英雄のスキルがある時点で私の体は
常人のそれとは違っているのだぞ。」
「ええ、それぐらいは心得ています。」
「それならなお悪い。いいだろう貴様の
その申し出受けてやる精々現実というものを
その身で体験するのだな!!」
アルゴースがそういうと腰を落として構えた。
今まで様子をうかがっていた審判が
会話が終わったのを確認して声を上げた。
「これよりアルゴース・クラウディアVSノウスの
決闘を開始する。
...始めーーーーーーー!!」
俺は開始の合図と共にアルゴースにゆっくり
歩いていき構えた。
「見ろよあれアルゴース様はノウスに
一発撃たせてやるみたいだぜ。」
「ああ、それにしても妙だなノウスの
奴武器を構えてないぞ。
あいつもしかして素手で攻撃する
つもりか?」
「あはははは。そんなのあの鎧で
守られて終わりだろう。
ばかだなあいつ。」
「全くだ。ははははははは。」
外野がうるさいが気にしない俺は
アルゴースの前まで来ると構えをとった。
「君もつくづく強情だね。武器ではなく
己が肉体で攻撃するとはさすが
あの脳筋の―――――」
「それ以上喋ると舌を噛みますよ?」
俺はなお喋り続けるアルゴースの腹に
身体強化と魔法で火を纏わせて
強化した蹴りで鎧で守られている腹を
思いっきり蹴とばした。
「むす、ゴッ!?」
アルゴースはそんな奇怪な言葉を
発しながら訓練場の壁まで吹っ飛ばした。
「英雄だからってあまり凡人を舐めるんじゃあねえ。」
俺は唖然としている静まりかえった会場と吹っ飛んだアルゴースに向けて
口調を本来の物に直してそう吐き捨てた。
ノウス(リミッター使用時)
Lv31
スキル一覧
・身体強化Lv7
魔法一覧
・火魔法Lv2